古家・空き家・相続

未登記建物を相続したら|売れるのか、先に確かめること

本ページにはプロモーション(広告)が含まれています。

相続した実家を売ろうとしたら、不動産会社から「この建物、登記されていませんね」と言われた。そんな場面に戸惑っている方は少なくありません。登記がないなら、家が存在しないことになるのか。そもそも売れるのか。何から手をつければいいのか。

この記事では、未登記の建物とはどういう状態か、売るときに何が起きるのか、先に何を確かめるのか、誰に相談するのかを、順番に説明します。登記の手続きそのものの解説ではなく、「売る前にどう動くか」に絞った内容です。

結論
未登記でも、建物は現実にあり、固定資産税もかかっていることが多いです。売れないと決まったわけではありませんが、買主がローンを組みにくくなるため、売り方に工夫が要ります。
最初にやることは、登記事項証明書と固定資産税の課税明細を見比べて、「建物全部が未登記」なのか「増築した部分だけ未登記」なのかを見分けることです。そのうえで、登記は土地家屋調査士、相続の名義は司法書士と、相談先を分けます。

未登記建物とは?相続の登記とは別の話

未登記建物とは、法務局の登記簿に、その建物の記録がない状態のことです。建物が存在しないという意味ではありません。家は実際に建っていて、人が住んでいたことも多いはずです。

ここで、よく混ざる2つの話を分けておきます。

「登記」の話は2種類ある

建物の登記そのものが無い(この記事)

  • 登記簿に、その建物が載っていない
  • まず「建物がある」ことを登記簿に載せる話
  • 相談先は主に土地家屋調査士

名義を相続人に移す(相続登記)

  • 登記簿にある名義を、亡くなった方から相続人へ変える話
  • 登記済みの建物・土地が対象
  • 相談先は主に司法書士

相続登記は、2024年4月から義務になっています。こちらは相続登記の義務化と、登記しないと売れない理由で詳しく説明しています。この記事は、それより一段手前の「そもそも建物が登記簿に載っていない」場合を扱います。土地は登記されているのに建物だけ載っていない、というのが典型です。

ことばの解説:表題登記

新しく建てた建物について、所在・種類・構造・床面積などを、初めて登記簿に載せる登記のことです。これがないと、建物は登記簿の上では「無いもの」として扱われます。

なぜ登記されていない建物があるのか

多いのは、古い建物と、増築した部分です。悪意があって登記しなかった、というより、当時は必要性を感じなかったという話がよくあります。

たとえば、住宅ローンを使わず自己資金で建てた家だと、登記をしなくても困る場面がなかった、という経緯があります。また、最初は登記したものの、あとから部屋を増やしたり、庭に離れや物置を建てたりして、その分の登記を変えていない、というケースもあります。

建物を新築した人や、表題登記のない建物の所有権を取得した人には、期限内に表題登記を申請する義務があります。正当な理由なく怠ると、過料(罰金とは別の、行政上の金銭の罰)の対象になります。それでも、登記されないまま何十年も経った建物を、相続で受け取ることがあります。相続で受け取った場合にこの義務がどう当てはまるかは、土地家屋調査士か法務局に確認してください。

固定資産税は、登記とは別の仕組みで課されます。市区町村(東京23区は都)が、家屋を調べて課税の台帳に載せているので、登記がなくても税金の通知は届きます。「税金は払っているのに登記がない」という状態は、珍しくありません。

「建物全部が未登記」と「増築部分だけ未登記」は別の話

同じ「未登記」でも、この2つは対応がまるで違います。まず、自分のケースがどちらかを見分けてください。

建物全部が未登記 増築部分だけ未登記
登記事項証明書 建物の欄に何も出てこない 建物は出るが、床面積などが実際と合わない
固定資産税の通知 家屋が載っている 家屋が載っている(面積は登記と違うことがある)
主な登記の種類 表題登記(そのうえで所有者を載せる登記が要る) 表題部の変更の登記(面積などを直す)
相談先の中心 土地家屋調査士(所有者の登記は司法書士) 土地家屋調査士
売却への影響 大きい(担保にできず、ローンが組みにくい) 中〜小(範囲や金融機関の見方で変わる)

増築部分だけが未登記の場合、登記簿の上には建物が載っているので、相続の名義変更は、その登記済みの部分を対象に進められます。一方、建物全部が未登記だと、名義を移す前に、そもそも登記簿に建物を載せる作業から必要になります。どちらの登記をどの順番で行うかは、個別の事情で変わるため、専門家の見立てが要ります。

気づくきっかけと、先に確かめること

まず、手元の書類を3つ見比べてください。それだけで、未登記かどうかの見当はつきます。

未登記に気づくのは、たいてい次のような場面です。

  • 相続登記をしようとして、法務局で建物が見つからない
  • 売却の相談で、仲介会社が登記事項証明書を取って指摘する
  • 固定資産税の通知には家屋が載っているのに、登記の書類には建物が出てこない

先に確かめる3つの書類

  • 登記事項証明書(法務局。土地と建物の両方を請求して、建物の記録があるか見る)
  • 固定資産税の課税明細書(毎年届く納税通知書に付いている。家屋の欄に、建物の所在・面積があるか見る)
  • 建築確認の書類・図面・検査済証など(家を建てたときの書類。押し入れや仏壇まわりに残っていることがある)

未登記かどうかを確かめる順番

  1. 登記事項証明書を取る土地と建物、両方の記録を確かめる
  2. 課税明細と見比べる建物が載っているか、面積は合っているか
  3. 建築時の書類を探す確認済証・検査済証・図面などが手元にあるか
  4. 全部か一部かを分けて相談する登記は調査士、名義は司法書士

登記事項証明書は、法務局の窓口で、地番(土地の住所にあたる番号)や家屋番号を伝えれば取れます。オンラインでも請求できます。建物の記録が出てこないときは、法務局か土地家屋調査士に、探し方を聞いてください。

手元に課税明細が見当たらないときは、固定資産税を課している自治体(23区では、都や区)に問い合わせます。窓口の名称や、相続人が課税の内容を確認するときの必要書類は、自治体で違います。この記事では書いていませんので、納税通知書にある問い合わせ先に確かめてください。



相続登記の義務化とは?期限・過料と、売る前にやること

未登記のまま売ろうとすると、何が起きるか

いちばん大きな影響は、買主が住宅ローンを使いにくくなることです。金融機関は、ローンの担保として、その建物に抵当権(お金を返せなかったときに、建物を売って回収できる権利)をつけます。登記がない建物には、それをつけにくいのです。

買主がローンを使えないと、現金で買える人に限られます。買い手の幅がせまくなり、売れるまでの時間や、価格の交渉にも響きます。

もうひとつは、「引き渡し」の場面です。売買では、売主は買主に名義を移せる状態にしておくのが基本です。未登記だと、その前に売主側で登記を整えておく必要が出てくることがあります。どこまで整えるかは、買主と契約の内容次第です。整えずに、現状のまま売る形もありえますが、買主や仲介会社の同意が要ります。

だから、売り方の選択肢は、大きく次の3つになります。

  1. 売主が先に登記を整えてから、ふつうの家として売る
  2. 未登記のまま、条件を伝えたうえで、現状のまま売る(買主は現金で買える人、または買取会社が中心)
  3. 建物を解体して、更地の土地として売る

どれが向くかは、建物の状態・売りたい時期・かけられる費用で変わります。買取会社に売る場合の考え方は空き家の買取|仲介で売れない家を業者に買ってもらう方法と価格の目安、古家をそのままにして売るか解体するかの判断は古家付き土地の売却|相場・注意点と解体するかの判断基準が参考になります。

ここに注意

未登記の建物を、「登記がないから関係ない」と考えて、そのまま契約に進まないでください。契約の後に買主から「聞いていない」と言われるおそれがあります。未登記であることは、売却の最初の相談で、仲介会社に必ず伝えてください。

誰に何を相談するか|表題登記は調査士、相続の名義は司法書士

建物を登記簿に載せる作業は土地家屋調査士、名義(所有者)の登記は司法書士が中心です。この2つの専門家は、役割が違います。

やりたいこと 相談先の中心
建物を登記簿に初めて載せたい(表題登記) 土地家屋調査士
増築した部分を登記に反映したい 土地家屋調査士
所有者を載せる登記・相続の名義変更 司法書士
相続人が誰か、遺産をどう分けるかで揉めている 弁護士
売り方(仲介・買取・更地)を比べたい 不動産会社(複数の見立てを聞く)

どの登記をどんな順で進めるか、誰の名義で載せるかは、士業の業務にあたる判断です。この記事では「こう登記すべき」とは書きません。個別のケースは、専門家に確かめてください。総合的な相談先の探し方は名義・登記の相談先を司法書士に振り分ける考え方にまとめています。

表題登記の費用は、何で決まるか

「表題登記の費用はいくらか」は、多くの方が気にするところです。ただ、この記事では金額は書きません。金額が、建物によってかなり変わるうえ、報酬の相場は事務所ごとに違うからです。

費用を左右しやすいのは、次のような点です。

  • 建物の大きさや構造(床面積、階数、木造か鉄骨か)
  • 図面が残っているか(なければ、現地で測って図面を作ることになる)
  • 建物の数(母屋のほかに、離れや物置があるか)
  • 土地の登記との関係(境界や地番の整理が要るか)
  • 依頼先の報酬の決め方

調べ方は、土地家屋調査士の事務所に、建物の所在・種類・おおよその広さと、図面や書類の有無を伝えて、見積もりを取ることです。事務所が近くにない場合は、土地家屋調査士会に問い合わせる方法もあります。ひとつだけに聞くと高いのか安いのか分からないので、複数の事務所で見積もりを並べてください。

登記を整えるかどうかは、仲介会社に、現状のまま売る道もあるのかを聞いてから決めても遅くありません。売却の見通しが立たないうちに進めると、費用が先に出ていくためです。

売却の見通しの立て方や、相談の入り口が分からない場合は、手順を一緒に整理します。

更地にして売る選択肢もある

建物を解体して、更地(建物のない土地)として売る道もあります。買主が建物を使わず、建て替えを前提にしている場合、古い建物の登記の有無は問題になりにくくなります。

ただし、解体には費用がかかり、更地にすると土地の固定資産税が上がることもあります(住宅が建っている土地にある軽減が、外れるため)。解体費用の考え方は木造の解体費用は何で決まる?で説明しています。

もうひとつ、解体のあとの登記に注意が必要です。建物が登記されているときは、解体したあと、「建物が無くなった」ことを登記簿に反映する手続き(滅失登記)が必要になります。一方、元から登記がない建物の場合は、消す対象の登記がありません。そのため、解体後にどんな手続きが要るのかは、ケースで違います。解体を決める前に、法務局か土地家屋調査士に確認してください。



古家付き土地の売却|相場・注意点と解体するかの判断基準

ポイント:解体するかどうかは、売り方を決めてから

登記を整えるか、解体するか、現状のまま売るか。どれを選ぶかで、かかる費用も売れるまでの時間も変わります。先に登記や解体の費用を出すより、売り方を比べてから決めるほうが、無駄が出にくくなります。

未登記の建物がある土地は、売り方によって手取りが変わります。まずは、複数の会社の査定額を並べてみると、相場の幅がつかめます。査定を申し込むときは、建物が未登記であることも伝えてください。

よくある質問

Q. 未登記の建物でも、相続できますか?

相続そのものはできます。登記があるかどうかにかかわらず、建物は亡くなった方の財産で、相続の対象になります。ただし、名義を移す登記の前に、建物を登記簿に載せる作業が必要になることがあります。誰の名義で載せるかは司法書士や土地家屋調査士に相談してください。名義を相続人に移す登記の義務は、相続登記の義務化の記事で説明しています。

Q. 未登記の建物は、そのまま売れますか?

売れる場合はあります。ただ、買主が住宅ローンを組みにくくなるため、買い手が限られます。売る前に、登記を整えるのか、現状のまま売るのか、更地にするのかを比べてください。未登記であることは、仲介会社に最初に伝えます。

Q. 未登記の建物にも、固定資産税はかかりますか?

かかることが多いです。固定資産税は登記とは別に、市区町村(23区は都)が家屋を調べて課税します。毎年届く通知や課税明細に、家屋が載っているか確認してください。載っていなければ、別の理由があるかもしれないため、課税している自治体に聞きます。

Q. 増築した部分だけ登記していないのですが、売れますか?

増築部分だけが未登記なら、建物自体は登記簿にあるため、ふつうの売却に進めることが多いです。ただし、登記の面積と実際の面積が違うと、買主や金融機関から指摘されることがあります。登記を直すか、どう説明して売るかは、仲介会社と土地家屋調査士に相談してください。

Q. 表題登記の費用は、いくらくらいですか?

建物の大きさ・図面の有無・事務所の報酬などで変わるため、この記事では金額を書けません。考え方は、本文の「表題登記の費用は、何で決まるか」を見てください。

まとめ

  • 未登記建物は、登記簿に記録がないだけで、建物は現実にある。固定資産税は課されていることが多い。
  • 「建物の登記そのものが無い話」と、「名義を相続人に移す話(相続登記)」は別。混ぜずに、順番に整理する。
  • 建物全部が未登記か、増築部分だけ未登記かで、必要な対応も売却への影響も違う。
  • 先に、登記事項証明書・固定資産税の課税明細・建築時の書類の3つを見比べる。
  • 建物を登記簿に載せる作業は土地家屋調査士、名義の登記は司法書士。費用は金額でなく、何で決まるかを見て、複数の見積もりを取る。
  • 登記を整える・現状のまま売る・解体する、の3つを比べてから決める。

未登記の建物をどう売るか、何から確かめるか迷っている方は、ご相談ください。

この記事の監修者:十坪とつぼさん(宅地建物取引士)
東京23区で土地の仕入れ営業を担当する宅地建物取引士。狭小地・旗竿地・古家付き土地など、小さくて売りにくい土地を日々見ている。

LINEで相談 PR今すぐ査定