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町工場の跡地を売る|土壌汚染の調査が要る場合と、東京都の無料相談

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親が長年やってきた町工場を閉めた。作業場はがらんとして、土地だけが残っている。売ろうと思ったとき、「工場の跡地は土壌汚染を調べないといけないらしい」と聞いて、何をどこへ出せばいいのか分からなくなっていませんか。

この記事では、東京23区で町工場やクリーニング店などをやめたあとの土地を売るときの順番を、調べる義務があるか → 義務なら売る前の調査と報告 → 義務でなくても買い手に求められたとき → 汚染が見つかったときの売り方の順に整理します。東京都の無料の相談窓口と、補助金を使えるのが誰なのかも書きました。

結論
土壌汚染の調査が法律で義務になるのは、有害物質を使う施設をやめたときです。普通の住宅や、有害物質を使っていない作業場は、この義務の対象ではありません。工場だったというだけで、全部の跡地が調査の対象になるわけではないのです。
売主が無料で使えるのは、東京都の「土地利用転換アドバイザー派遣」です。被覆盛土(汚染を残して舗装や盛土で覆う工事)の補助金は土地を買う側のもので、売主は対象外です。地下水の汚染を広げない技術の補助は所有者も対象に含まれますが、一定の濃度を超える汚染があるときに限られます。まず自分の土地が義務に当たるかを確かめてから、売り方を決めます。

調べる義務が出るのは「有害物質を使う施設」をやめたとき

先に答えを言います。土壌汚染対策法(土対法)が、跡地の調査を義務にしているのは、有害物質を使っていた施設の使用をやめたときです。「工場だった」「古い作業場だった」というだけでは、この義務は生まれません。

法律の言い方は、少し堅いので言い換えます。工場の敷地だった土地の所有者などは、使用が廃止された「有害物質使用特定施設」があった場合に、国や都道府県が指定した調査会社(指定調査機関)に土壌を調べさせて、その結果を都道府県知事(東京都では東京都知事)に報告しなければならない、と決められています。

ことばの解説:有害物質使用特定施設

水質汚濁防止法で「特定施設」とされた設備のうち、鉛・六価クロム・トリクロロエチレンなどの特定有害物質を、その設備で作ったり、使ったり、処理したりしていたものです。設備の名前だけでなく、何の物質を使っていたかで決まります。

どんな設備が「特定施設」の候補になるのかは、水質汚濁防止法の政令に一覧があります。町工場や店に関わるものを拾うと、次のような設備が載っています。

  • 電気めっき施設
  • 酸やアルカリによる表面処理施設
  • 金属製品や機械器具をつくる工場の、焼入れ施設・電解式の洗浄施設
  • 印刷や製版で使う、自動式のフィルム現像洗浄施設
  • 洗濯業の洗浄施設
  • トリクロロエチレン・テトラクロロエチレン・ジクロロメタンによる洗浄施設

ここで気をつけたいのは、一覧に載っている設備を持っていたことと、調査が義務になることは別という点です。その設備で特定有害物質を使っていたかどうかで、義務の有無が分かれます。逆に、「塗装」のように、この一覧に語が出てこない作業もあります。「塗装をやっていたから対象」「やっていないから対象外」と、業種だけで決められないのは、そのためです。

ただし、これは法の側の一覧の話です。東京都の条例は、工場と指定作業場を別の一覧で決めていて(東京都環境局「工場・指定作業場一覧表」)、塗料の吹付けやドライクリーニングも載っています。入口が法とは違うので、塗装やクリーニングをしていた場合は、区の環境担当にも聞いてください。

調査の義務が出るか(土壌汚染対策法の調査の場合)

義務の対象になる

  • 特定施設の一覧にある設備があった
  • その設備で、特定有害物質を使っていた
  • その使用をやめた(廃止した)

この義務の対象ではない

  • 普通の住宅
  • 一覧にある設備が無かった作業場
  • 設備はあったが、特定有害物質を使っていなかった

調べる必要が出る人は、設備を置いて使っていた本人だけではありません。法律には、設備を置いていた人以外に土地の所有者などがいるとき、都道府県知事がその所有者に「施設が廃止されました」と通知する仕組みがあります。通知を受けた所有者などは、調べて報告する側に入ります。相続で土地の持ち主になった人も「所有者など」に入るので、通知が届く側になりえます。通知が届いたら、そのままにしないでください。設備を置いていた親が亡くなっているとき、相続人がどの立場で義務を負うのかは、条文だけでは言い切れません。東京都環境局の土壌地下水汚染対策担当に、事情を伝えて確かめてください。

昔にやめた工場については、こういう決まりもあります。土対法の附則には、この法律ができる前に使用が廃止された設備の跡地には、この調査の義務を当てはめない、と書かれています。法律が動き出したのは、2003年(平成15年)2月です。ただし、これは「法律上の義務が無い」という意味にすぎません。義務が無いことと、土が汚れていないことは別で、買い手や買取会社が確かめたがる点は変わりません。

調査の義務の条文に、敷地の広さの条件は書かれていません。小さな町工場だから対象外、とはならないので注意してください。

義務に当たるなら、売る前に「調べて報告」から始める

義務に当たる場合は、売り出す前に、指定調査機関に調べてもらい、結果を東京都(または区)に報告するのが先になります。この手順を飛ばして売り出しても、買い手側の確認で止まるだけです。

工場をやめてから売るまでの順番(義務に当たる場合)

  1. 施設の履歴を確かめるどんな設備があり、何の薬品を使っていたか。親の書類や、役所への届出の控えで調べる
  2. 自分の土地が対象か、区と都に聞く法と条例では、入口の言い方も窓口も違う
  3. 指定調査機関に調べてもらうまず工場の履歴を調べ、必要なら土や地下水を採って分析する
  4. 結果を報告する基準を超えていれば、区域の指定を受けることがある
  5. 売り方を決める仲介・買取・都の相談窓口を比べる

どこへ出すか|法は東京都、条例の廃止時の調査は区(リーフレットによる)

東京都には、土対法のほかに、東京都環境確保条例という独自の決まりがあります。工場や、条例で「指定作業場」と呼ぶ作業場を、特定有害物質を取り扱っていた事業者がやめたとき、または建物などの主要な部分を壊そうとするときに、調査を求める仕組みです(東京都環境局の条例の条文の抜粋、令和6年4月1日施行)。特定有害物質を取り扱っていなければ、条例の調査の対象にもなりません。

窓口については、東京都環境局のリーフレット「土壌汚染の調査及び対策について」(令和7年4月版)に表があります。それによると、23区内の場合は次のように分かれています。

手続き 窓口(リーフレットの記載)
土対法の調査・報告 東京都環境局 化学物質対策課の土壌地下水汚染対策担当
条例の、工場や指定作業場をやめたときの調査 各区の環境担当
条例の、土地の改変・健康被害のおそれ・周辺の地下水汚染をきっかけにした調査 東京都環境局 化学物質対策課の土壌地下水汚染対策担当

同じ土地について、法と条例の両方が関わって見えることがあります。どちらに、いつ、何を出すのかは、土地の状況で変わります。リーフレットには、一般的な相談を受ける「土壌汚染対策総合相談窓口」(東京都が事業者に委託)も載っています。迷ったら、書類を揃えて区の環境担当に電話し、法の側は都の窓口へ、と順に確かめてください。窓口へは、事前に電話で予約するよう、リーフレットにあります。担当部署の表記は変わることがあるので、東京都環境局の土壌汚染対策のページでも見直してください。

ここに注意:工場の建物を壊す前に区へ

条例は、事業をやめるときだけでなく、建物の主要な部分を壊そうとするときも調査のきっかけにしています。「売りやすくなるから先に更地にしよう」と解体を先に進める前に、区の環境担当に、調査の対象かどうかを聞いてください。壊したあとでは、順番を戻せません。

調査費は金額を書きません|見積もりの取り方

この記事では調査費の金額を書いていません。敷地の広さ、調べる物質、調べる深さで変わり、汚染の疑いが出ると追加で調べることもあるため、目安の数字が実際の見積もりとかけ離れてしまうからです。

やることは、指定調査機関に連絡して、工場の履歴(使っていた設備と薬品)を伝え、調べる範囲と費用の内訳が分かる見積もりを出してもらうことです。1社だけでなく、複数の会社から取ると、調査の範囲の考え方の違いが見えます。

調査の「猶予」は、売るときには使いにくい

法律には、調査をしなくてよくなる例外もあります。土対法の「ただし書き」で、その土地のこれからの使い方から見て、人の健康に被害が出るおそれがないと知事が確認したときは、調査の義務が外れます。いわゆる調査の猶予です。

ただ、確認が出る場面は限られています。施行規則は、確認を出すのを、次のいずれかになることが確実と認められる場合に限るとしています。

  • 関係者以外が立ち入れない工場や事業場の敷地として、引き続き使われる
  • 小さな工場で、仕事場と設置者の自宅が同じ建物か近くにあり、その自宅の敷地として、引き続き設置者が住み続ける
  • 鉱山関係の土地

売って買い手が住宅やアパートを建てる場合は、これらに当てはまりにくいことが、条文の形から読み取れます。買い手が引き続き関係者以外の立ち入れない工場として使う場合は、当てはまる余地があります。ただ、猶予は基本的に「そのまま工場や自宅として使い続ける」ための仕組みだと考えてください。確認を受けた土地を売ったり相続したりすると、権利を引き継いだ人が確認を受けた者の立場も引き継ぎます。使い方を変えるときは知事への届出が必要で、変更後の使い方では被害のおそれがないと言えなければ、確認は取り消されます。

東京都の条例にも、調査を猶予する仕組みがあります。条文の抜粋には、次の2つを両方とも満たす場合に、知事が確認するとあります。

  • 土地の使い方が、次のいずれかに当たる。①引き続き工場をやめた人が、関係者以外の立ち入れない事業場として使う ②小さな工場で、仕事場と自宅が同じか近くにあり、引き続きその人が住む ③やめた人以外の人の事業や居住の敷地として使われていて、舗装などで土に人が直接触れない
  • 土や地下水を採るのに、今使っている建物を壊す必要があり、事業や暮らしに大きな支障が出る

法と違って、やめた人以外が使っている土地も入る点が目立ちます。こちらも、要件を満たさなくなれば調査に戻る流れです。当てはまるかは、土地の状況で変わるので、区の環境担当に確かめてください。

義務でなくても、買い手や買取会社が調べを求めたとき

法律の義務に当たらない土地でも、買う側が「工場だったなら、土の状態を確かめたい」と考えるのは自然なことです。このとき、調べるかどうか、費用を誰が持つかは、法律ではなく売買契約で決める話になります。

売主がまず守るのは、調査の前の、もっと手前のことです。民法は、売主が「契約の内容と違っていても責任を負わない」という特約を付けたとしても、知っていながら告げなかった事実については責任を免れられないと決めています。工場で何を使っていたかを知っているのに伝えずに売ると、免責の特約があっても守ってもらえないおそれがあります。免責の考え方は、契約不適合責任の免責とはで整理しています。

費用の持ち方は、3つの決め方がある

調べる場面での決め方は、大きく3つに分けられます。どれが正しい、という話ではありません。土地の状況と、売主の事情で選びます。

調査の費用と責任の決め方(3つの例)

売主が先に調べる

  • 費用は売主が先に出す
  • 結果を示して売り出せる
  • 基準を超えていたら、次の対応も売主が考える

買主が調べ、結果で条件を決める

  • 売主の最初の費用が少ない
  • 結果しだいで、減額・解除の特約を付けることがある
  • 契約が白紙になる可能性が残る

調べずに現況で売る

  • 手間と費用が少ない
  • 買い手の不安が、価格に表れることがある
  • 免責の範囲は契約で決める

3つ目の「調べずに現況で売る」を選ぶ場合も、知っている工場の履歴は契約の前に書面で伝えてください。伝えたうえで責任の範囲を決めるのが、後のもめごとを防ぐ形です。買取会社に売るときも同じです。

どの形を選ぶにしても、契約書には次の点を決めて書いておきます。

契約書で決めておくこと

  • 調査を誰が頼み、費用を誰が持つか
  • 調べる範囲と、いつまでに結果を出すか
  • 調査のために土を掘ることを、売主が認めるか
  • 基準を超えた結果が出たとき、減額・解除・売主が直す、のどれにするか
  • 調査の結果を、売主と買主のどちらが受け取れるか

解除や手付金の扱いの基本は、売買契約のあとに買主が解除を言ってきたときにまとめています。

親の工場の記録を、先に集めておく

調査でも、売り出しの説明でも、一番役に立つのは工場で何をしていたかの記録です。調査会社は、まず工場の履歴を調べるところから始めます。次のものを探してみてください。

  • 設備の配置が分かる図面や、機械の一覧
  • 使っていた薬品や溶剤の名前が分かる、請求書・納品書・購入記録
  • 区や都に出した届出の控え(工場の設置や廃止の書類)
  • 近所で長く商売をしていた人や、取引先から聞いた話(書いて残しておく)

記録が見つからなくても、そのまま売れなくなるわけではありません。見つからなかったという事実も、買い手には伝える材料です。

1階が工場で2階が住まいだった建物なら、土壌とは別に、税金の特例が使える範囲も確認が必要です。店舗併用住宅の3,000万円控除の記事で、居住部分だけが対象になる理由を説明しています。

汚染が見つかったときの売り方|直す・残して買取に出す・都の支援を使う

調査で基準を超える汚染が出ても、そこで売れなくなるわけではありません。売り方の道は3つあります。先に、基準を超えると何が起きるのかを知っておくと、選びやすくなります。

調査の結果、土の汚れが基準を超えていると、知事はその土地の区域を指定します。指定には2種類あります。

ことばの解説:要措置区域と形質変更時要届出区域

要措置区域は、汚染によって人の健康に被害が出るおそれがあり、汚染の除去などの措置が必要な区域です。所有者などには、措置の計画を作って提出するよう指示が出ます(汚染が別の人の行為で生じたことが明らかなときは、その人に出ることもあります)。形質変更時要届出区域は、被害のおそれはないものの、土地を掘るなどの工事をするときに、事前の届出が必要な区域です。

どちらの区域も、知事が台帳を作って保管し、閲覧を求められたときは正当な理由がなければ断れません。つまり、指定された事実は、買い手や買取会社が自分で調べられます。黙って売る、という選択肢は最初から取れないと考えてください。

そのうえで、売り方の道は次の3つです。

汚染が見つかったときの3つの道

直してから売る

  • 汚染を取り除くなどして、区域の指定が外れる状態を目指す
  • 売主が費用を出す
  • 工事の期間を、売る時期に見込む

汚染を残したまま、買取に出す

  • 区域に指定された状態で買ってくれる会社を探す
  • 対象にする土地・地域は会社ごとに違う
  • 価格は、仲介で売る場合より下がりやすい

都の支援を使いながら進める

  • 売主は、アドバイザーに無料で相談できる
  • 補助金は買う側のもの
  • 使える条件があり、年度で変わる

直してから売る

汚染を取り除く、封じ込めるなどの措置をして、区域の指定が外れれば、買い手の不安は小さくなります。ただ、費用がかかり、工事の期間も要ります。しかも、費用を出してから売れる保証があるわけではありません。措置をする前に、そのあと売る価格がどうなるかを、不動産の専門家に見てもらうのが先です。東京都の土地利用転換アドバイザーが、その相談に向いています(次の節で説明します)。

汚染を残したまま、買取に出す

汚染を取り除かずに、区域に指定された状態のまま売る道もあります。仲介で買い手が見つかりにくいときは、訳ありの土地を専門に扱う買取会社に、今の状態のまま見てもらうことができます。汚染を残したまま土地を使う方法には、舗装や盛土で土の表面を覆うやり方があります。

ただし、買取は仲介より価格が低くなりやすいことと、対象の土地や地域が会社ごとに違うことは、あらかじめ知っておいてください。申し込むと、会社から電話やメールが来ます。選び方は土地の買取業者の選び方にまとめています。訳あり不動産の種類ごとの売り方は、訳あり不動産・訳あり土地の売り方で比べられます。



種類別の売り方と買取の使いどころ|訳あり不動産・訳あり土地とは

工場跡地の売り方で迷ったときは、手順を一緒に整理します。

東京都の支援|売主が無料で使えるのは「アドバイザー派遣」

東京都は、工場の跡地を対象にした支援事業を持っています。売主が無料で使えるのは、専門家を呼べる「土地利用転換アドバイザー派遣」です。補助金は2種類ありますが、売主が使えるのは限られた場合だけです。

東京都環境局の案内(令和8年4月版)では、支援は3つに分かれています。

支援の名前 売主は使えるか 中身
土地利用転換アドバイザー派遣 使える(無料) 土壌汚染対策の専門家や不動産鑑定士が現地を訪ねて助言する
被覆盛土支援(補助金) 使えない 汚染を残したまま、舗装や盛土で覆う工事の費用を補助する。対象は土地を購入した人・返還を受けた人で、事業を行っていた人は対象外と書かれている
地下水汚染拡大防止技術支援(補助金) 場合による 一定の濃度を超える汚染があり、認定された技術で対策を試すときの費用を補助する。所有者などや、事業を行っていた人も対象に含まれる
無料土地利用転換アドバイザーの派遣の費用(東京都環境局の案内による。売主も依頼できる)

アドバイザーに聞けること

案内には、アドバイザーに相談できる内容として、次のようなものが挙がっています。

  • 法律で求められる対策
  • 掘削して土を除去する以外の、土壌汚染対策
  • 狭い土地でも使える対策の技術
  • 汚染土壌を管理しながらの土地活用
  • 土壌汚染がある土地の、不動産評価の考え方

売主にとって一番役に立つのは、最後の「不動産評価の考え方」でしょう。汚染があるとき、土地の価格がどう見られるのかを、売る前に専門家から聞けます。環境局のページによると、依頼できるのは、工場などを廃止した人(廃止する予定の人も)、土地の所有者など、そして買う人(買う予定の人も)です。対象の土地は、中小企業の工場や事業場で、土壌汚染状況調査を実施した、またはこれから実施する予定の土地とされています。調査の前に窓口に連絡して、使えるかを聞いておくと安心です。

申込みは、環境局のページにある依頼書に書いて、東京都の担当へ郵送するか持参します。派遣が決まると、東京都から通知が届き、その後にアドバイザーから日程の連絡が来る流れです。窓口は、東京都環境局の土壌地下水汚染対策担当です。電話で聞くときは、案内に沿って「土地利用転換アドバイザーについて」と伝えてください。

被覆盛土の補助金は買う側のもの|売主にとっての意味

被覆盛土の補助金は、売主は使えません。けれど、買う側が使える補助があること自体は、売りやすさの材料になります。買い手や買取会社が、汚染を取り除く以外の方法で土地を活用できるなら、検討の幅が広がるからです。

ただし、売主が「補助が出るから大丈夫」と約束することはできません。補助を受けるには、買い手がアドバイザーを使っていることや、調査の報告書を都などに出していること、土地の区域の種類や広さなどの条件があります。受けられるかは、買い手の側が都に確かめるものです。

ここに注意:補助の金額は、この記事に書いていません

同じ支援事業の案内でも、以前の案内と令和8年4月の案内とで、被覆盛土の補助額の書き方が違っていました。年度で変わるため、金額と広さの上限は、東京都環境局のページで、売る時点の最新の案内を確かめてください。この記事の説明は、令和8年4月版の案内と、環境局のページ(最終更新2025年12月)をもとにしています。

売り出す前に、誰に何を聞くか

ここまでの話を、聞く先ごとにまとめます。全部を一度に調べようとせず、上から順に1か所ずつ電話するのが、遠回りに見えて早く進みます。

聞く先 聞くこと
工場があった区の環境担当 条例の「工場」「指定作業場」に当たるか/廃止の届出が出ているか/建物を壊す前に必要な手続き
東京都環境局 土壌地下水汚染対策担当 土対法の調査の対象か/区域の指定が既にあるか/土地利用転換アドバイザーの申込み
指定調査機関 工場の履歴をもとにした調査の範囲と、見積もりの内訳
不動産会社・買取会社 区域に指定された土地や、汚染の疑いがある土地を扱うか。仲介と買取で、価格の考え方がどう違うか
税理士 売ったあとの税金(譲渡所得の申告の仕方)

税金は、土地を売ったときの一般的な仕組みまでが、この記事の範囲です。調査や工事の費用を売却の費用として扱えるかなど、個別の判断は税理士に確認してください。



契約不適合責任の免責とは?土地を現状のまま売るときの注意点

売る土地の状況は、工場の業種、使っていた物質、敷地の広さで変わります。ふつうの仲介では買い手が見つかりにくいことがあります。訳ありの不動産を専門に買い取る会社なら、今の状態のまま買取価格を出してもらえることがあります。

よくある質問

Q. 何十年も前に閉めた工場でも、調査は必要ですか?

土対法の廃止時の調査は、この法律ができた2003年2月より前に使用をやめた設備の跡地には当てはめない、と法律の附則にあります。ただ、義務が無いことと、土が汚れていないことは別です。東京都の条例には別の入口もあります。使っていた時期と設備の記録を集めて、区の環境担当に相談してください。

Q. クリーニング店をやめました。調査の対象になりますか?

洗濯業の洗浄施設は、特定施設の一覧に載っています。ただ、その施設で特定有害物質を使っていたかどうかで、義務の有無が決まります。使っていた溶剤の名前を確かめたうえで、区の環境担当に聞いてください。業種の名前だけでは、対象かどうかは決められません。

Q. 調査で汚染が見つかったら、必ず直さないといけませんか?

必ずではありません。要措置区域に指定されると、所有者などに措置の計画を出すよう指示が出ます。形質変更時要届出区域は、掘るなどの工事の前に届出が要る区域です。区域に指定されたというだけで、売ること自体が禁じられるわけではありません。ただし、区域の指定は台帳で誰でも調べられるので、買い手には隠さず伝える前提で進めてください。

Q. 売主でも、東京都の補助金をもらえますか?

被覆盛土の補助金は、土地を買った人・返還を受けた人が対象で、事業を行っていた人は対象外です。地下水汚染拡大防止技術の補助金は、所有者なども対象に含まれますが、一定の濃度を超える汚染などの条件があり、当てはまる場面は限られます。売主が確実に使えるのは、無料のアドバイザー派遣です。

まとめ

  • 土壌汚染の調査が義務になるのは、有害物質を使う施設をやめたとき。工場や古い作業場だったというだけでは決まらない
  • 義務に当たるなら、売り出す前に指定調査機関で調べ、結果を報告する。窓口は、法は東京都、条例の廃止時の調査は区(環境局のリーフレットによる)
  • 義務でなくても、買い手が求めたときの費用の持ち方は契約で決める。知っている工場の履歴は、契約の前に伝える
  • 汚染が見つかったら、直して売る・残して買取に出す・都の支援を使う、の3つの道がある
  • 売主が無料で使えるのはアドバイザー派遣。補助金(被覆盛土)は買う側のもの。金額は年度で変わるので、都のページで確かめる

出典:土壌汚染対策法・土壌汚染対策法施行規則・土壌汚染対策法施行令(e-Gov 法令検索。法は版 414AC0000000053_20260701_508AC0000000022、施行日 2026年7月1日。施行規則は版 414M60001000029_20260701_508M60001000019、施行日 2026年7月1日。施行令は版 414CO0000000336_20240401_505CO0000000304、施行日 2024年4月1日)、水質汚濁防止法・同施行令(同、法は版 345AC0000000138_20260701_508AC0000000022、施行日 2026年7月1日。施行令は版 346CO0000000188_20250401_506CO0000000001、施行日 2025年4月1日)、民法(同、版 129AC0000000089_20260624_508AC0000000045、施行日 2026年6月24日。担保責任を負わない旨の特約)、東京都環境局「土壌汚染の調査及び対策について」(リーフレット、令和7年4月版)、同「環境確保条例及び施行規則(抜粋)(令和6年4月1日施行)」、同「工場・指定作業場一覧表」(環境確保条例施行規則別表第1・第2)、同「工場跡地等における持続可能な土壌汚染対策支援事業実施要綱」(令和8年4月1日改定)、同「環境確保条例(土壌・地下水汚染対策関連)の概要」、同「工場跡地等における持続可能な土壌汚染対策支援事業のご案内」(令和8年4月)、同「土地利用転換アドバイザー派遣について」(ページの最終更新 2025年12月18日)。

この記事の監修者:十坪とつぼさん(宅地建物取引士)
東京23区で土地の仕入れ営業を担当する宅地建物取引士。狭小地・旗竿地・古家付き土地など、小さくて売りにくい土地を日々見ている。

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