風致地区の土地を売るとき|建ぺい率と分譲100㎡の決まり
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「この土地は風致地区だから、普通の土地より制限が多いですよ」。不動産会社にそう言われて、何がどう変わるのか分からず、手が止まっていませんか。
風致地区の土地を売るとき、買う人がまず気にするのは「ここに、どんな家が建つのか」です。そして、この制限が「東京都の条例」で決まる地区と「区の条例」で決まる地区に分かれています。ここを混ぜたまま調べると、別の地区の数字を自分の土地に当てはめてしまいます。この記事では、23区の風致地区14か所を、条例ごとに分けて見ていきます。
結論
風致地区の土地は、建てられる家が小さくなり、土地を分けて売りにくくなります。
23区の風致地区14か所のうち、東京都風致地区条例が適用されるのは5か所だけ(2025年4月1日現在)。残る9か所は、1つの区に収まっているため、区の条例が基準になります。
売る前に、自分の土地がどちらの条例か、区の窓口で確かめるのが先です。
風致地区とは?売る人が知っておきたい基本
風致地区は、木々や水辺など、まちの自然の景色を守るために、建物や木の伐採を制限する地域です。都市計画法で指定される「地域地区」の1つで、制度そのものは1919年から続いています。
こと
緑や水辺などの景色(風致)を守るため、建物を建てる、土地の形を変える、木を切るといった行為に、区長の許可が要る地域です。
許可が要る行為は、世田谷区の資料では次のように示されています。
- 宅地造成、土地開墾その他の土地の形を変える工事(盛土、切土など)
- 木や竹の伐採
- 建物その他の工作物の新築、改築、増築、移転
- そのほか
売る側にとって大事なのは、建物を建てる人だけでなく、木を切る人も許可の対象になることです。詳しくは後の節で書きます。
まず「都の条例か、区の条例か」を確かめる
風致地区の制限は、東京都風致地区条例で決まる地区と、区の条例で決まる地区に分かれます。見分け方は、地区の広さと、またがる区の数です。
東京都風致地区条例(1970年4月1日 条例第36号)の第一条には、都の条例が対象にする地区として、面積が10ヘクタール以上で、かつ2つ以上の特別区または市町村の区域にまたがるものに限る、という括弧書きがあります。つまり、10ヘクタール以上で、2つ以上の区市町村にまたがる地区だけが都の条例の対象です。1つの区に収まっている風致地区は、その区の条例で決まります。
東京都都市整備局の「風致地区一覧」(2025年4月1日現在)によると、23区の風致地区は14か所、合計2,674.0ヘクタールです。このうち、都の条例が適用されるのは次の5か所です。
| 地区 | 位置 | 面積 | 種別の内訳 |
|---|---|---|---|
| 明治神宮内外苑付近 | 港区、新宿区、渋谷区の一部 | 274.0ha | 第一種69.80/第二種204.20 |
| 多摩川 | 大田区、世田谷区の一部 | 1,182.6ha | 第一種9.50/第二種1,173.10 |
| 弁慶橋 | 千代田区、港区、新宿区の一部 | 31.0ha | 第二種31.00 |
| 市ヶ谷 | 千代田区、新宿区の一部 | 27.0ha | 第二種27.00 |
| お茶の水 | 千代田区、文京区の一部 | 12.2ha | 第二種12.20 |
残りの9か所は、1つの区に収まっています。この9か所は、都の条例の要件(2つ以上の区市町村にまたがる)に当たりません。
| 地区 | 位置 | 面積 |
|---|---|---|
| 洗足 | 大田区の一部 | 26.4ha |
| 善福寺 | 杉並区の一部 | 29.2ha |
| 和田堀 | 杉並区の一部 | 151.3ha |
| 石神井 | 練馬区の一部 | 96.7ha |
| 大泉 | 練馬区の一部 | 359.6ha |
| 江戸川 | 葛飾区の一部 | 323.3ha |
| 芝 | 港区の一部 | 47.7ha |
| 上野 | 台東区の一部 | 102.0ha |
| 関口台 | 文京区の一部 | 11.0ha |
1つの
後の節で紹介する「建ぺい率20%・40%」などの数値は、東京都風致地区条例が適用される5地区のものです。上の9地区は区の条例で決まります。それぞれの区の条例の中身(数値)は、この記事では確かめていません。「都と同じだろう」と考えず、区の窓口で聞いてください。
この一覧の摘要欄には、「第一種風致地区及び第二種風致地区の種別は、東京都風致地区条例による区分である」と書かれています。ここから、次のことが読み取れます。
- 区部の第一種は79.30ヘクタールだけです。明治神宮内外苑付近の69.80と、多摩川の9.50を足すと、ちょうど79.30になります。区部の第一種は、この2地区の中にしかありません。
- 江戸川風致地区(葛飾区)だけは、第一種でも第二種でもなく「その他」の323.30ヘクタールです。
- 残りは、すべて第二種です。
なお、許可を出す窓口は、どちらの条例でも区です。許可の権限は、2014年4月1日に、都で許可していたものを含めてすべて区市へ移りました(東京都建設局「風致地区」)。「窓口が区であること」と「どちらの条例が適用されるか」は別の話なので、混ぜないでください。
地区ごとの窓口や町名は、区のガイドにまとめています。世田谷区の多摩川風致地区は世田谷区の土地・狭小地の売却ガイドに対象の町名と窓口があります。杉並区の善福寺・和田堀については、区の資料で確かめられた範囲を杉並区で土地を売る前に調べることに書いています。
都の条例が適用される地区の許可の基準
東京都風致地区条例が適用される地区では、種別ごとに次の基準があります。世田谷区が載せている「東京都風致地区条例のあらまし」(2026年4月1日版、確認日2026年10月18日)の数値です。
| 種別 | 建ぺい率 | 建物の高さ | 壁面後退(道路側) | 壁面後退(他の部分) |
|---|---|---|---|---|
| 第一種風致地区 | 20%以下 | 10m以下 | 3m以上 | 1.5m以上 |
| 第二種風致地区 | 40%以下 | 15m以下 | 2m以上 | 1.5m以上 |
都の条例の基準(世田谷区の資料より)
第一種
- 建ぺい率 20%以下
- 高さ 10m以下
- 道路側は3m以上下がる
第二種
- 建ぺい率 40%以下
- 高さ 15m以下
- 道路側は2m以上下がる
この表を読むときの注意点が、同じ資料に書かれています。
- 建物の位置、形、意匠が、周辺の風致と著しく不調和であってはいけません。
- 壁面後退は、建築基準法の外壁後退とは別の決まりです。各境界線から最短の有効寸法で測ります。
- 庇、出窓、バルコニー、屋根付きカーポートなどのうち、建築面積に含まれない部分は壁面後退の対象外です。ただし、隣地境界線から0.5m以上は離します。
- この基準は、緩和されることがあります(区の審査基準による)。数値を動かない上限と思い込まないでください。
- ほかに、地区計画などの制限がかかる地域もあります。
第一種か第二種かは、町名から推測できません。都市計画図で確認するように、資料にも書かれています。数値は変わることがあるので、売り出す前に区の窓口で最新のものを確かめてください。
狭小地で何が起きるか:建てられる家と壁面後退
風致地区の土地は、買う人は「ここに何が建つか」を計算して検討します。売る側も、同じ計算を先にしておくと話が早くなります。
仮の数字で計算してみます。土地が30坪(約99㎡)で、東京都風致地区条例が適用される5地区の中にある場合です。
- 第二種(建ぺい率40%以下):建築面積は約12坪まで
- 第一種(建ぺい率20%以下):建築面積は約6坪まで
ここに壁面後退が重なります。都の条例では、道路側は2m(第一種は3m)、他の部分は1.5mです。狭い土地では、建てられる範囲がさらに削られます。壁面後退は建築基準法の外壁後退とは別の決まりなので、セットバックなど、ほかの制限と合わせて考える必要があります。道路が狭い土地なら、セットバックが必要な土地の売却も読んでおいてください。
なお、金額や相場にどれだけ響くかは、この記事では書きません。数えたデータがないからです。狭い土地の値段の見方は、狭小地の相場の調べ方で説明しています。
土地を分けて売れるか:一区画100平方メートル以上
世田谷区が載せている都条例の資料には、分譲地の造成では、一区画あたりの面積を100平方メートル以上にすると書かれています。100㎡は、約30.25坪です。この基準も、都の条例が適用される5地区の話です。1つの区に収まる9地区は、区の条例を確かめてください。
60坪の
仮に60坪(約198㎡)の土地を2つに割ると、1区画は約99㎡で、100㎡に届きません。2区画に分けるには、約200㎡(約60.5坪)以上が目安です。狭い土地を割って売る形は、風致地区では取りにくくなります。
2区画に分けるだけの場合も「分譲地の造成」に当たるのか、この基準に緩和があるのかは、世田谷区の資料からは分かりません。分ける前に、区の窓口で聞いてください。
この基準は、敷地面積の最低限度とは別の決まりです。敷地面積の最低限度は、区が決めている別のルールなので、混ぜずに両方を確かめます。
木を切る前に区へ聞く
売る前に、庭をきれいにしようと木をまとめて切る方がいます。風致地区では、木や竹の伐採に、区長の許可が必要です。更地にして見せたつもりが、許可のない伐採になるおそれがあります。
切る前に、区の窓口へ「この地番は風致地区か。木を切るのに許可は要るか」と聞いてください。解体や庭の工事を考えているときも、同じ窓口に聞きます。
許可の流れと、かかる時間
世田谷区の資料にある手続きの流れは、次のとおりです。
風致地区での建築の流れ(世田谷区の資料より)
- 事前相談内容により、事前相談書を出す
- 風致地区許可申請標準処理期間は30日(土日・祝祭日を除く)
- 許可書の発行風致の許可が先
- 建築確認申請・確認済証許可のあとに進む
- 完了検査・完了届壁面後退の測定のため、境界を杭などで示す
売る人に効くのは、標準処理期間が30日(土日・祝祭日を除く)で、そのあとに建築確認申請が続くことです。買う人の工程に、1か月以上が乗ります。売る前に伝えておくと、話が進めやすくなります。
緑化も確認が必要です。世田谷区の場合、250㎡未満の敷地でも、許可に緑化の条件がつかない建築では、みどりの基本条例による「みどりの計画書」の提出が必要とされています。
風致地区の土地をどう売るか、区の窓口で何を聞けばいいか分からない場合は、手順を一緒に整理します。
自分の土地が風致地区かを調べる順番
調べる順番は、次の3段階です。
- 風致地区かどうか:区の都市計画図で確かめます。見られる場所や方法は区ごとに違うので、区の窓口で聞いてください。
- 都の条例か、区の条例か:上の2つの表で、地区の名前を確かめます。
- 第一種か第二種か、今の基準はいくつか:地区の担当課に、地番を伝えて聞きます。
区の
- この地番は風致地区に入っているか
- どの条例が適用されるか
- 建ぺい率、高さ、壁面後退の基準は何か
- 基準が緩和される場合はあるか
- 庭木を切るのに許可は要るか
- 2区画に分ける場合の面積の決まりは何か
世田谷区の多摩川風致地区の場合、窓口は玉川総合支所と砧総合支所の街づくり課です。電話番号は変わることがあるので、区の公式サイトで最新のものを確かめてください。
相場の幅をつかむために、複数の会社の査定額を並べてみるのも一つの方法です。風致地区の制限を伝えたうえで、会社ごとの見方を比べてください。
よくある質問
Q. 風致地区だと、土地は売れませんか?
売れます。ただ、建てられる家が小さくなる、分けて売りにくいといった制限があるので、買う人は条件を計算して検討します。売る側が、建ぺい率や許可の流れを先に整理して伝えると、話が進めやすくなります。
Q. 建ぺい率の20%・40%は、どの風致地区でも同じですか?
同じではありません。20%・40%は、東京都風致地区条例が適用される5地区の基準です。1つの区に収まる9地区は区の条例で決まるので、区の窓口で確かめてください。
Q. 第一種か第二種かは、どう調べますか?
町名から推測せず、区の都市計画図や担当課で確認します。区部の第一種は、明治神宮内外苑付近と多摩川の中にだけあります(2025年4月1日現在)。
Q. 基準の数値は、必ず守らないといけませんか?
都の条例の基準は、緩和されることがあります。緩和されるかどうかは区の審査基準によるので、数値を動かない上限と思い込まず、区の窓口で確かめてください。
Q. 売る前に庭木を切ってもよいですか?
風致地区では、木や竹の伐採に許可が必要です。切る前に、区の窓口へ聞いてください。
まとめ
- 風致地区の土地は、建てられる家が小さくなり、土地を分けて売りにくくなります。
- 23区の風致地区14か所のうち、東京都風致地区条例が適用されるのは5か所だけです。残る9か所は区の条例です。
- 都の条例の基準は、第一種が建ぺい率20%以下、第二種が40%以下です。9地区に当てはめず、緩和もあることを忘れないでください。
- 都の条例が適用される地区では、分譲地の一区画は100㎡以上とされています。木を切るのにも許可が要り、世田谷区の標準処理期間は30日です。
- 売る前に、区の窓口で地区と条例を確かめましょう。
風致地区の土地は、制限を先に整理しておくと、買う人に説明しやすくなります。進め方に迷ったら、一緒に考えます。
出典:東京都都市整備局「風致地区一覧」(2025年4月1日現在)、東京都風致地区条例(1970年4月1日 条例第36号)、世田谷区「東京都風致地区条例のあらまし」(2026年4月1日版)、東京都建設局「風致地区」、文京区「風致地区」。確認日はいずれも2026年10月18日。

