連棟式住宅(長屋)の一戸だけを売る|切り離しの可否・隣家の同意・買い手の探し方
本ページにはプロモーション(広告)が含まれています。
隣の家と壁がつながった建物を相続した。自分の分だけ売りたいけれど、隣に何と言えばいいのか分からない。そんな悩みを持つ方に向けて書きました。
結論から言うと、一戸だけを売る道はあります。ただ、切り離せるかどうか、隣家とどう話すかで、選べる売り方が変わります。この記事では、連棟式住宅(長屋)の一戸を売るときに、先に確かめることと、3つの出口を順に説明します。
結論
連棟式住宅の一戸は、「切り離せる建物か」「隣家と話ができるか」の2点で、売り方が決まります。出口は、①つながったまま売る、②隣と売り買いや相談をする、③全戸まとめて売る、の3つです。
買い手は、住宅ローンの扱いが金融機関によって違うことなどから、現金で買える人が中心になることがあります。売る前に、建物の図面・登記・敷地の持ち方の3つを、自分の建物で確かめてください。
連棟式住宅(長屋)とは|1つの建物を、何戸かで分けて持っている形
答えを先に言うと、連棟式住宅は「1棟の建物を、壁で区切って何戸かに分けた家」です。見た目は2軒、3軒と並んでいても、建物としては1つ。そのうちの1戸を持っているのが、あなたの立場です。
こと
長屋(連棟式住宅、テラスハウスと呼ばれることもあります)は、壁を共有して横に連なった住宅です。戸と戸を仕切る壁を界壁(かいへき)といいます。建築基準法には、長屋の界壁について、音を伝えにくくする構造などを求める決まりがあります。
「連棟」「長屋」「テラスハウス」は、日常ではほぼ同じ意味で使われます。ただ、法令の側では呼び方がそろっていません。建築基準法とその施行令には、「長屋」ということばは出てきます。しかし、長屋の意味を決めた条文や、「連棟」ということばは見当たりませんでした(e-Gov 法令検索で確認)。
東京都には、長屋の各戸の出入口を道路に面して設けることなどを求める条例があります(東京都建築安全条例)。自分の建物が法律の上でどう扱われているかは、建物ごとの書類と、区の窓口で確かめます。
自分の建物がどのタイプかは、次の3つで見分けます。
| 確かめること | どこで | 何を見るか |
|---|---|---|
| 建物の登記 | 法務局で登記事項証明書を取る | 戸ごとに別の登記になっているか、全体で1つの登記か |
| 土地の持ち方 | 同じく法務局で登記事項証明書を取る | 戸ごとに土地が分かれているか、全員の共有か |
| 建物の図面 | 手元の資料、または区の建築指導課 | 建築確認の書類(確認済証・検査済証)や設計図があるか |
建物と土地のどちらも「戸ごとに分かれている」建物は、売るときの話がかなり単純になります。逆に、土地が全員の共有だったり、建物が1つの登記だったりすると、一戸だけ売る前に整理することが増えます。共有の土地を売る場合の考え方は、共有名義の土地を売るにはも参考になります。
切り離せるのか|切り離すと何が起きるか
結論は、切り離せるかどうかは、壁と柱の造りで決まります。壁ひとつ隔てて、それぞれの家が自分の柱で立っているのか。それとも、1枚の壁が両方の家を支えているのか。この違いで、工事の重さが変わります。
切り離したあとに、あなたの家と隣の家で変わること
切り離すと、これまで「室内の壁」だった面が、外に面する壁になります。そこで起きやすい変化は、次のとおりです。
- 外壁として、雨や風を受けるようになる
- 隣との距離が変わるので、防火の面の扱いが変わる可能性がある
- 柱や梁を共用していた場合は、補強が必要になる
- 隣の家の側にも、同じ工事の影響が出る
どの工事が必要かは、建物ごとに違います。金額も建物の造りで大きく変わるため、この記事では工事費の金額を扱いません。
切り離しは「建築の手続き」が要るのか
切り離す工事は、建築確認(工事の前に、計画が建築のルールに合っているかを、役所や検査機関に確かめてもらう手続き)が必要になる場合があります。建築基準法は、新築・増築・改築・移転や、大規模な修繕・模様替えについて、規模や地域に応じて確認を求めています。切り離し工事がこのどれにあたるかは、工事の中身で決まります。ここでは決められないので、区の窓口か建築士に聞いてください。
もう一つ、切り離す前の建物が、いまの基準に合っていないことがあります。建てた当時は合っていて、その後の法改正で合わなくなった建物は、そのまま使い続けられます(既存不適格といいます)。ただ、増築や改築などの工事をするときは、いまの基準に合わせることを求められる場合があります。緩和される範囲も法令に決まりがあるので、工事の前に確かめます。
特に気になるのが、敷地が分かれたときの扱いです。戸ごとに土地を分けると、建物を建てる土地(敷地)の単位が変わります。道路に2m以上接していること、建ぺい率(敷地に対する建物の広さの割合)、容積率(敷地に対する延べ床面積の割合)は、敷地ごとに判定します。分ける前は満たしていても、分けたあとに満たさなくなることがあります。たとえば、1戸分の敷地が道路に2m以上接していなければ、切り離したあとに建て替えができないこともあります。接道の考え方は接道義務とはで整理しています。
売る前に、自分の建物で確かめる手順
切り離せるかどうかは、インターネットの情報では決められません。次の順で調べます。
切り離しの可否を確かめる順番
- 書類を集める登記事項証明書(建物・土地)、建築確認の書類、古い図面。手元に無ければ、区の建築指導課で、建築確認の記録があるかを聞く
- 建築士に現地を見てもらう壁や柱がどう分かれているか、切り離すと何が必要か。意見書をもらう
- 区の建築指導課で相談する地番と図面を見せ、切り離したあとの建て替えの可否を聞く
建築指導の窓口は、区によって課の名前が違います。墨田区では、都市計画部の建築指導課が、建築確認の記録(建築計画概要書)の閲覧と、建築確認台帳記載事項証明書(確認を受けた建物の内容を証明する書類)の発行を受け付けています(墨田区の公式サイトで確認、2026年10月)。ほかの区は、区のサイトで「建築指導」「建築審査」「建築計画概要書」などの語を探してください。他の区の窓口名は、ここには書きません。
墨田区の案内では、記録を探すのに建物を特定する情報(住所、建築確認の番号・年月日、建築主の名前など)が要ります。閲覧できるのは平成10年度以降の確認分で、それより前は保管していないと書かれています。古い長屋は、記録が残っていないことがあります。保管の扱いは区で違うことがあるので、自分の区に聞いてください。
切り離せると決めつける必要はありません。大切なのは、切り離せるかどうか、分からない状態のまま買い手に伝えないことです。調べた結果をそのまま伝えれば足ります。
隣家の同意は、誰が、いつ取るのか
答えを先に言うと、隣家の同意が要るかどうかは、売り方で変わります。切り離したり、壁や設備に手を入れたりするなら、隣家と話をしなければ進みません。つながったまま売るだけの場合に、同意が法律で要るかどうかは、この記事では言い切りません。
| 売り方 | 隣家との関係 |
|---|---|
| つながったまま売る | 同意が要るかは、登記と約束事を見て弁護士に確かめる。隣に知らせておくと、買主への説明がしやすい |
| 切り離して売る | 工事で隣の家にも影響が出る。事前に話をして、書面で合意を残す |
| 隣に売る・隣から買う | 隣家と直接の交渉になる |
| 全戸まとめて売る | 全員の同意が必要 |
ここは
自分の持つ建物を売ることは、所有権の内容として民法に定められています。ただ、登記が建物全体で一つになっている、隣と共有になっている、壁や費用について約束事がある、といった場合は話が変わります。弁護士に聞くことは、次の3つです。
- 登記の形から見て、自分の分だけを売れる権利関係か
- 隣家との約束事(書面でも口約束でも)が、買主に引き継がれるか
- 隣家に知らせずに売ったとき、あとで隣家から何を言われる可能性があるか
相談には、建物と土地の登記事項証明書、約束事の書面、隣家とのやりとりのメモを持っていきます。
誰が、いつ取るか
同意を取るのは、売る人(あなた)が、買い手を探し始める前がよい順番です。理由は、買い手に切り離しの可否を説明するには、隣の考えが分からないと答えられないからです。
話を持ちかけるときは、次の流れが無理がありません。
- 売りたいと考えていることを、最初に伝える(買い手が決まる前に知らせる)
- 切り離すかどうかは、まだ決めていないと伝える
- 隣の希望(売る気があるか、買う気があるか、今の関係を続けたいか)を聞く
- 工事の話が出たら、工事の内容と費用の分担を書面にまとめる
隣の家との話し合いがうまくいかないとき、境界や壁の位置が問題になることもあります。その場合は境界が決まっていない土地を売るときの進め方が参考になります。
ここに
隣の戸に借りている人がいると、工事の話は、持ち主だけでなく入居者にも影響します。工事の音や立ち入りが必要な場合の扱いは、法的な判断が絡みます。争いになりそうなときは、売主だけで進めず、弁護士に相談してください。
買い手が気にする点|ローンの扱いなどで、買う人が限られる場合がある
先に答えを言います。連棟式住宅の一戸は、買う人が限られることがあります。買い手が気にする点が、ふつうの戸建てより増えるためです。
買い手の側から見ると、次のような点が気になります。
- 住宅ローンの扱い:長屋の一戸を融資の対象にするかは、買主が申し込む金融機関によって扱いが違う
- 建て替えのしやすさ:切り離せなければ、建て替えは隣との相談が要る
- 隣との関係:壁の音、雨漏り、修繕の費用分担
- 将来の売りやすさ:次に売るときも同じ悩みが続く
なぜ評価が下がるのか、どの金融機関がどう扱うのかは、公式の資料で確かめられなかったので書いていません。割合や社数も数えていないので、「多い」「少ない」とは言えません。買い手の金融機関に聞くのが確実です。
ローンが使えない買い手がいる場合は、現金で買える人が中心になります。現金で買う人が限られるぶん、価格や、売れるまでの期間に影響が出ることがあります。ただ、どれだけ下がるか、どれだけ延びるかは、建物と地域で違うため、この記事では数字を書いていません。
では売主は何をすればいいか。買い手が気にする点を、先に書類にまとめて見せます。具体的には、次の4つです。
売り
- 登記事項証明書(建物と土地。法務局で取れる)
- 切り離しの可否について、建築士の意見書か、区の建築指導課で聞いた内容のメモ
- 隣家の考え(売る気・買う気・工事の可否)を聞いた記録
- 雨漏り・傾き・修繕の履歴
古い家に傾きや雨漏りがあるときの伝え方は、直さずに売れる?告知と直す判断の基準に整理しています。
出口は3つ|そのまま売る/隣と話す/一棟まとめて売る
ここまでを踏まえると、売り方は3つに分けて考えられます。どれがよいかは、建物の造りと、隣家の考えで変わります。
連棟式住宅の一戸を売る3つの出口
①そのまま売る
- 隣家との調整が少ない
- 買い手が限られることがある
- つながった建物であることを伝える
②隣と売り買いする
- 隣が買う、または自分が買う
- 隣家の意思が必要
- 売買の条件を書面にする
③一棟まとめて売る
- 全戸の同意が必要
- 土地としてまとまる
- 調整に時間がかかる
①つながったまま、一戸を売る
もっとも手間が少ない売り方です。切り離しの工事をせず、現状のまま売りに出します。ただし、買い手には「壁を共有していること」「切り離せるかどうかの調査結果」を、正直に伝える必要があります。建物の状態を伝える範囲は、契約不適合責任の免責とはでも整理しています。
この売り方は、買取を行う会社に、今の状態のまま見てもらうこともできます。会社を選ぶときの見方は、土地の買取業者の選び方にまとめました。買取は仲介より価格が低くなりやすいこと、申し込むと連絡が来ることを、前提に比べてください。
②隣家と売り買いする
隣の家に買ってもらう、あるいは隣の家を買って一つの建物として整える方法です。売る側にとっては、買い手を探す手間がなく、切り離しの問題も消えます。ただ、隣に買う気や資金があるかは、聞いてみないと分かりません。
話を持ちかけるときは、「売りたい」とだけ伝えるのではなく、「隣さんも手放す予定があれば、一緒に考えられるか」と聞くと、角が立ちにくいでしょう。条件が決まったら、口約束で終わらせず、書面にします。通路をふさがれた土地など、隣地との関係が売却を左右する例は、袋地・無道路地の売却でも扱っています。
③全戸まとめて、一棟として売る
すべての持ち主が同意して、建物全体を一つとして売る方法です。土地としてまとまるので、買い手の幅が広がる可能性があります。ただ、全員の同意と足並みが必要で、持ち主の1人でも反対すると進みません。
持ち主が亡くなっていて相続人が増えている戸があると、さらに時間がかかります。相続人が多い場合の確かめ方は、土地の名義が亡くなった祖父のままだったらで扱っています。
ポイント
3つの出口は、どれか1つが正解というものではありません。切り離しの可否と隣家の考えを調べた結果で、選べる売り方が決まります。調べる順番は、書類・建築士・区の窓口・隣家の順です。
区ごとの売却の進め方は、墨田区・荒川区・足立区・葛飾区のガイドで扱っています。
再建築ができない土地や、建て替えが難しい家の売り方は、再建築不可の土地を売る方法と、再建築不可の家をリフォームして売るかで比べています。
連棟の一戸は、ふつうの仲介では買い手が見つかりにくいことがあります。訳ありの不動産を専門に買い取る会社なら、今の状態のまま買取価格を出してもらえることがあります。対象の建物や地域は会社ごとに違います。買取は仲介より価格が下がりやすく、申し込むと電話やメールが来ることも前提に、複数の会社で比べてみてください。
よくある質問
Q. 連棟式住宅の一戸だけを売ることはできますか?
一戸だけを売る道はあります。ただ、切り離せるか、隣家とどう話すかで、選べる売り方が変わります。まず建物と土地の登記事項証明書を法務局で取り、戸ごとに分かれているかを確かめてください。
Q. 切り離さないと売れませんか?
切り離さずに売る方法もあります。その場合は、壁を共有していること、切り離せるかの調査結果を、買い手に正直に伝えます。切り離せるかどうかは、建築士の現地確認と、区の建築指導課への相談で確かめます。
Q. 隣家に同意をもらえなかったらどうなりますか?
つながったまま売れるかどうかは、登記のしかたや隣家との約束事で変わるため、ここでは「売れる」とも「売れない」とも言い切れません。切り離しの工事は、隣の家の壁や柱に手を入れることが多く、隣家の協力なしには進めにくい場面があります。
民法には、境界の近くで建物を直すために隣の土地を使える決まりがあります。ただし、隣が住まいとして使われているときは、住んでいる人の承諾がないと立ち入れません。この決まりが切り離しの工事に使えるかは、事案によります。
ここは弁護士に相談する論点です。相談では、次の3つを聞きます。
- 隣家の同意がなくても、自分の分を売れるか
- 切り離しの工事をするとき、隣家への影響の責任と費用を誰が負うか
- 同意が得られないことを、買い手にどう説明するか
建物と土地の登記事項証明書、建築士の意見書、隣家に伝えた内容と返事のメモを持っていくと、話が早く進みます。
Q. 住宅ローンは使えますか?
長屋の一戸を融資の対象にするかは、金融機関によって扱いが違います。個別の基準は公式の資料で確かめられていないので、買い手が申し込む金融機関に聞くしかありません。売主は、買い手に「事前審査はどこで、どうだったか」を、不動産会社を通じて聞いてもらうと、契約後の解除を避けやすくなります。契約後の解除については売買契約のあとに買主が解除を言ってきたらを読んでください。
Q. 隣に買ってもらうときの価格はどう決めますか?
価格は、売る人と買う人の話し合いで決まります。第三者の意見がほしいときは、不動産会社の査定や、不動産鑑定士の評価を参考にします。金額の目安は、建物と地域で違うため、この記事では書いていません。
まとめ
- 連棟式住宅は、1棟の建物の一部を持っている形。一戸だけを売る道はあるが、売り方は切り離しの可否と隣家の考えで決まる
- 先に、建物の登記・土地の持ち方・図面の3つを、法務局と区の建築指導課で確かめる
- 切り離しの可否は、建築士の現地確認と、区の窓口への相談で調べる。分からないまま買い手に伝えない
- 隣家には、買い手を探し始める前に、売ることと、切り離しは未定であることを伝える。工事の話は書面に残す
- 出口は、そのまま売る・隣と売り買いする・一棟まとめて売るの3つ。買い手が限られることがあるので、買い手向けの資料を先に用意する
出典:e-Gov 法令検索 API v2「建築基準法」(建築確認、既存の建築物の扱い、長屋の界壁、敷地と道路の関係。版ID 325AC0000000201_20260527_508AC0000000023(施行 2026-05-27))、「建築基準法施行令」(敷地の定義、長屋の界壁。版ID 325CO0000000338_20251201_507CO0000000377(施行 2025-12-01))、「民法」(所有権の内容、隣地の使用。版ID 129AC0000000089_20260624_508AC0000000045(施行 2026-06-24))。東京都例規集「東京都建築安全条例」(長屋の出入口と道路)。墨田区公式サイト「建築計画概要書の閲覧・コピー」「建築確認台帳記載事項証明書の発行」(2026年10月確認)。連棟の切り離しの可否、住宅ローンの扱い、隣家の同意の法的な位置づけは、一次資料で確かめられなかったため、本文では断定していません。


