敷地の前に水路・里道があるときの売り方|道路との間に水路、敷地内に赤道
本ページにはプロモーション(広告)が含まれています。
家の前に、ふたをした細い溝のような場所がある。あるいは、不動産会社に「公図に赤道(あかみち)が出ていますね」と言われたけれど、何のことか分からない。そんな戸惑いから、この記事を開いた方に向けて書きました。
道路に面しているつもりだった土地が、実は水路や里道をはさんでいることがあります。この記事では、それが何なのか、自分の土地が当てはまるかどうかの調べ方、当てはまったときに売却で起きることを順に説明します。
結論
敷地と道のあいだに何があるかは、法務局で取れる公図を見れば、まず見当がつきます。「水」や「道」と書かれた細長い土地は、国や区が持つ公有地(法定外公共物)の可能性があります。
水路をはさむと、建築のルール上は道路に接していないことになる場合があります。橋の占用許可、払下げ(買い取り)、官民の境界確認は、すべて区などの窓口の確認が先です。売る前に調べて、結果を買い手に見せられる形にしておくと、話が進みやすくなります。
水路・里道(赤道・青道)とは|国の土地だったものが区に移った
答えを先に言うと、水路や里道は個人の土地ではなく、役所が持つ土地です。昔からある農道やあぜ道、小さな用水路のうち、道路法や河川法の対象になっていないものなので、「法定外公共物(ほうていがいこうきょうぶつ)」と呼ばれます。
こと
里道は、昔から人が通ってきた細い道のことです。公図で赤く塗られていたことから「赤道(あかみち)」とも呼ばれます。水路は、用水路や排水の溝で、青く塗られていたことから「青道(あおみち)」と呼ばれることがあります。この2つのように、道路法や河川法の適用を受けない公共の土地や設備をまとめて「法定外公共物」といいます。暗渠(あんきょ)は、水路にふたをしたり、地下に管を通したりして、地上から見えなくなったものです。
もとは国の持ち物(国有財産)でした。それが、平成12年(2000年)4月1日に施行された地方分権一括法で、国土交通省(旧建設省)が所管していた赤道・青水路は、無償で市町村へ譲られることになりました。譲る期間は平成17年(2005年)3月31日まででした。譲られたあとは、市町村が持ち主として、土地の管理も、道や水路としての管理も行っています(国土交通省「道の相談室」)。
譲られる対象になったのは、国が用途廃止(公共の土地としての役目を終えること)をしたうえで、市町村が引き続き道や水路として使うものです(国有財産特別措置法)。
つまり、区が譲り受けて管理している水路・里道の窓口は、国ではなく区役所です。
一方、国や都が持ったままの土地もあります。世田谷区の案内には、区有地のほかに、都有地、国土交通省所管の国有地、財務省所管の国有地それぞれの窓口が並んでいます。使われなくなった水路や里道が、いまどこの持ち物になっているかは、土地ごとに違います。この点は、編集部が確かめられた国の資料では分かりませんでした。区の窓口で聞くのが確実です。
自分の土地が当てはまるか|公図・現地・区の窓口の順に確かめる
結論は、公図で見つけて、現地で見て、区の窓口で聞くの3ステップです。公図だけでは「何が起きているか」まで分からず、現地だけでは「誰の土地か」が分からないので、順番に重ねます。
水路・里道を確かめる順番
- 公図を取る法務局で、自分の土地の公図の写しを取る。敷地のまわりに「道」「水」と書かれた細い土地がないか見る
- 現地で見比べる公図の位置にある場所が、いま道・溝・ふた付きの通路・空き地のどれになっているか歩いて確かめる
- 区の窓口で聞く地番を伝えて、その土地が区・都・国のどこの持ち物か、役目が続いているか、橋やふたの許可が出ているかを聞く
①公図で見る|「道」「水」「無番地」の細長い線
公図は、土地の位置と形をおおまかに示した図です。法務局で、地番を伝えて写しを取れます。見るところは3つです。
- 自分の土地と前の道のあいだに、細長い線の土地がはさまっていないか
- その線の中に「道」「水」と書かれていないか
- 地番がついていない(無番地の)細長い土地がないか
無番地は、地番のない土地です。世田谷区の案内でも、無番地での申請のときは、区有地かどうかを道路管理課で先に確かめるよう書かれています(世田谷区公式サイト、2026年10月確認)。公図は昔の測量にもとづいているので、位置や幅が実際とずれていることもあります。それでも、「何かある」と気づくきっかけには十分です。
②現地で見る|暗渠は「ただの通路」に見える
現地では、公図の位置にあたる場所を見ます。水が流れているとは限りません。ふたがされて通路や駐車スペースのようになっていたり、ブロックの塀で隠れていたりします。暗渠は、地上から見ると、ただの細い道に見えることもあります。
ポイント
「敷地の前の細い通路」は、登記上の地番がついた私有地なのか、公図で『水』や『道』の公有地なのかで、売るときの扱いがまったく違います。見た目だけでは区別できないので、公図が最初の手がかりになります。
③区の窓口で聞く|区によって名前が違う
公図と現地で気になる場所が見つかったら、区役所に聞きます。ただ、担当の課の名前は区ごとに違います。こちらで区のサイトを調べたところ、状況は次のとおりでした。
- 世田谷区:区有地(道路・水路敷)との境界確定は、道路・交通計画部の道路管理課が担当と案内されています。都有地は東京都の建設事務所、国有地は国土交通省の事務所や財務省の財務事務所が窓口だとも書かれています(世田谷区公式サイト、2026年10月確認)
- 墨田区:区が管理する道として、区道、区有通路、特定法定外公共物のうち区有地にある道が案内されています。法定外公共物の問い合わせ先は土木管理課の土木管理担当です。土地の払下げ(買い取り)・交換・境界確定の相談は同じ課の用地調査担当、占用の申請は占用・監察担当、建築基準法上の道路かどうかは建築指導課(区役所9階)の窓口と、分かれています(墨田区公式サイト、2026年10月確認)
ここで窓口を紹介できたのは、編集部が公式サイトを確かめられた2区だけです。ほかの区の窓口名は、確かめていないので書きません。自分の区のサイトで「法定外公共物」か「水路 占用」という語を検索すると、案内ページが見つかります。電話で聞くなら、代表番号に「法定外公共物(里道・水路)の担当課はどこですか」と伝えて、つないでもらってください。
窓口で聞くことは、次の3つに絞ると話が早く済みます。
区の
- 公図の『道』『水』の部分は、区・都・国のどこの持ち物か。道や水路としての役目は、いまも続いているか
- 水路や里道を渡って出入りするための橋・ふた・通路に、占用の許可は出ているか。出ているなら、名義は誰か
- 敷地との境界について、区との確認(官民境界の確認)は済んでいるか
当てはまるとき何が起きるか|接道・占用許可・買い取りの3点
先に答えを言います。水路や里道が絡むと、売却では「接道」「占用許可」「買い取り」の3つが論点になります。
接道|水路をはさむと、道路に接していないことがある
家を建てるには、敷地が道路に2m以上接していなければなりません(建築基準法の接道義務。e-Gov 法令検索で確認)。建築基準法が「道路」として挙げているのは、道路法の道路や、位置指定を受けた道などで、水路は入っていません。そのため、敷地と道路のあいだに水路があると、敷地は道路に接していないことになりうるのです。
では、橋やふたで水路を渡って出入りしている場合はどうか。ここは、条文には書かれていません。その橋やふたの部分を「道路に接している」と扱うかどうかは、特定行政庁(区の場合は区長。実際の窓口は建築指導の課)の運用で決まります。編集部が公式サイトを確かめた世田谷区と墨田区では、この扱いを書いたページは見つけられませんでした。区によって違う可能性があるので、答えを決めつけず、自分の土地について区に聞きます。
窓口には、次のものを持って行きます。
建築指導の
- 持って行くもの:地番が分かる書類、公図の写し、現地の写真(橋やふたの幅と長さ、水路の幅が分かるもの)、橋やふたの占用許可の書類(なければ、ないと伝える)
- 聞くこと1:敷地の前の道は、建築基準法の道路か。道路なら何という種類か
- 聞くこと2:道とのあいだに水路があって、橋やふたで出入りしている敷地は、道路に接している扱いになるか。なるなら、橋の幅や占用許可など、満たすべき条件は何か
- 聞くこと3:接している扱いにならないとき、43条2項の許可(特例)の道はあるか。あるなら、何を出し、どのくらいの期間がかかるか
窓口で聞いた内容は、日付・課・担当者の名前と一緒にメモします。接している扱いになるなら、その条件をメモのまま買い手に見せられます。ならないなら、43条2項の許可を受けられるかが次の論点です。この許可は、特定行政庁が支障がないと認めたうえで、建築審査会の同意を得て出します(建築基準法)。受けられるか、期間がどのくらいかは、土地ごとに違います。売り方は43条2項とはや再建築不可の土地の売り方で整理しています。
里道についても、同じ見方が必要です。里道が前にあるからといって、自動的に建築基準法の道路になるわけではありません。里道に面した土地が建て替えできるかは、その道が建築基準法の道路として扱われているか、あるいは特例の許可を受けられるかで決まります。前の道の調べ方は位置指定道路か二項道路かに、接道が足りない土地の売り方は接道義務とはにまとめています。
占用許可|橋やふたは、区の土地を借りて置いているもの
水路に橋をかけたり、ふたをして通路にしたりしているのは、役所の土地に、人が作ったもの(工作物)を置いて使っている状態です。こうした使い方には、管理者の許可や承認が要るのが基本です。ただ、呼び名も手続きも、区によって違う可能性があります。水路への橋やふたが、どの許可にあたるかは、編集部では確かめられていません。墨田区の例では、占用の申請は土木管理課の占用・監察担当が受け付ける、と案内されています。
売主にとって大事なのは、橋やふたについて、許可が出ているかどうかと、その名義が誰かです。親の名前のままのこともあれば、書類が見つからないこともあります。名義や条件が、土地を売るときに買い手へ引き継げるかも、区の窓口で聞きます。占用料などの金額も区で違うので、この記事では書きません。
ここに
橋やふたに許可や承認が出ているか分からないまま売り出すと、買い手や不動産会社に聞かれたときに答えられません。売り出す前に、区の窓口で有無を確かめておくと、あとから契約の話が止まる心配を減らせます。
買い取り(払下げ)|役目を終えた水路・里道は、買える場合がある
敷地内を通る里道や、敷地と一体で使われてきた旧水路は、道や水路としての役目を終えたもの(用途廃止されたもの)なら、買い取れる場合があると考えられます。これが払下げ(はらいさげ)、あるいは売り払いです。
役目を終えていることが前提になるのは、法律にもとづきます。国の公共用の財産は、原則として売り払えません(国有財産法)。区の公共用の財産も同じです(地方自治法)。売るには、先に用途廃止をして、売れる財産に切り替える必要があります。世田谷区の案内には、道路管理課が「道路・水路の用途廃止」と「道路・水路の境界確定」を扱うと書かれています。墨田区では、用地調査担当が「土地の寄付・払下げ・交換」と境界確定の相談を受けています。
申請の順番、必要な書類、価格、かかる期間は、管理しているのが区か、都か、国かで変わります。国の窓口の手続きは、国の案内ページを開けず、編集部では確かめられていません。区が管理するものは、払下げに応じるか、どんな条件かも区ごとに違います。
そのため、動く順番は次のとおりにします。
- 区の窓口で、その土地の持ち主が区か、都か、国かを聞く
- 道や水路としての役目を終えているかを聞く
- 買い取りを考えるなら、その持ち主の窓口で、手続きの順番と費用を聞く
水路・里道があるときの扱いの違い(概要)
水路をはさんで道路
- 接道を満たすか、建築指導の窓口で確認
- 橋・ふたの占用許可を確認
敷地内を通る里道・旧水路
- その部分は公有地のことがある
- 役目を終えていれば、買い取れる場合がある
境界がはっきりしない
- 官民の境界確認が要ることがある
- 確定測量の進め方に関わる
官民の境界確認は、確定測量とセットで進めるのが基本です。測量にかかる期間や費用の考え方は、官民の境界確認も含めた確定測量の費用に整理しています。民間どうしの境界が決まっていない場合は、境界が決まっていない土地の売り方も合わせて読めます。
売る前に売主ができること|調べた結果を、紙にして残す
結論として、売主ができることは「調べた結果を、買い手に見せられる形にする」に尽きます。水路や里道は、契約の直前や後に見つかると、話が止まるおそれがあります。売り出す前に、分かっていることを増やしておきます。
売り出す前の資料として、次の4つを揃えます。
売り
- 公図の写し(水路・里道の位置に印をつけたもの)
- 区の窓口で聞いた内容のメモ(日付・課・担当者の名前)
- 橋・ふたの占用許可の書類(無ければ「許可の有無を確認中」と分かるメモ)
- 官民の境界確認の資料(あれば)。なければ、確定測量でやるかどうかの判断
建築指導の窓口で聞く内容は、前の節の「持って行くもの・聞くこと」にまとめました。その答えも、メモに加えます。
水路や里道がからむ土地は、買い手に伝えることが増えます。それでも、調べた事実が書類で残っていれば、買い手の側も判断しやすくなります。逆に、調べずに売り出して、契約の直前や後に見つかると、価格の見直しや解除の話につながりかねません。契約書の書き方は契約不適合責任の免責とはで整理しています。
買い手への伝え方|「公図ではこう、区の窓口ではこうだった」と順に話す
買い手には、事実を順番に並べて伝えるのが、いちばん誤解が少ない伝え方です。「水路がある」とだけ言わず、確認できたことと、確認できていないことを分けて話します。
伝える順番は、次のとおりです。
- 公図に水路・里道が出ていること(写しを見せる)
- 現地の状態(水路が開いているか、ふたがあるか、橋があるか)
- 区の窓口で聞いた内容(管理者、占用許可の有無)
- 建築指導の窓口で聞いた、建て替えの可否
- 確認できていないこと(許可の名義変更の扱い、払下げの可否など)
買い手が知りたいのは、建て替えできるか、橋や通路を使い続けられるか、将来売るときに困らないか、の3つでしょう。調べきれない点があるときは、「分かりません」で終わらせず、「ここまで確認して、ここから先は区に聞いている途中」と伝えます。
通行の権利が主題になる土地の売り方は、袋地・無道路地の売却で扱っています。水路や里道の先に道がない場合は、こちらも参考になります。
この土地がいくらくらいで売れそうか、まずは複数の会社の査定額を並べてみると、相場の幅がつかめます。水路や里道の扱いは会社によって見方が違うことがあるので、調べた資料を渡して比べてください。
よくある質問
Q. 公図に「水」と書かれた線が敷地に接しています。自分の土地ですか?
公図に「水」と書かれた部分は、自分の土地とは別の土地として線が引かれています。持ち主が誰かは、法務局の登記事項証明書か、区の窓口で確かめます。区の土地、都の土地、国の土地のどれかであることが考えられます。ほかに、すでに誰かの名義の土地になっている場合もあります。
Q. 水路に橋をかけて出入りしています。このまま売れますか?
売ること自体はできます。ただ、橋の許可が出ているか、許可は誰の名前か、建て替えのときに橋の部分を道路に接している扱いにしてもらえるか、の3点が買い手の気になるところでしょう。区の窓口で、地番を伝えて確かめてください。
Q. 敷地の中を赤道(里道)が通っています。建物は建てられますか?
その部分は公有地のことがあり、そこを使って建てるには、使用の許可や、買い取り、用途廃止などの手続きが先に必要になる場合があります。どの手続きになるかは、里道の役目がいまも続いているか、区・都・国のどこの持ち物かで変わります。区の窓口で聞いてから、建築の計画を進めます。
Q. 払下げ(買い取り)は、必ず受けられますか?
受けられるとは限りません。役目を終えているかどうかのほか、境界の確定などが関わります。区が管理するものは、払下げに応じるかどうかも区の判断です。価格や期間は個別に違うため、ここでは書いていません。
Q. 売ったあと、橋の占用許可はどうなりますか?
許可の名義や条件を、買い手に引き継げるかどうかは、区によって扱いが違うことがあります。売る前に、区の窓口で「名義の変更の手続きは必要か」を聞いておくと、契約書に書く内容が決めやすくなります。
まとめ
- 水路や里道は、個人の土地ではなく、区や国が持つ公有地(法定外公共物)。区が管理しているものの窓口は区役所
- 最初の手がかりは公図。「道」「水」「無番地」の細長い線が、自分の土地と道のあいだにないかを見る
- 水路をはさむと、建築基準法の道路に接していない扱いになりうる。橋やふたの部分をどう扱うかは区の運用なので、建築指導の窓口で、自分の土地について確かめる
- 敷地内の里道や旧水路は、役目を終えていれば買い取れる場合があるが、持ち主(区・都・国)や区ごとに手続きが違う。価格や期間は個別に違う
- 売る前に調べた結果を紙にして、買い手に順番に伝える。確認できたことと、まだのことを分ける
出典:e-Gov 法令検索「建築基準法」(法令ID 325AC0000000201、版 325AC0000000201_20260527_508AC0000000023、施行日 2026年5月27日)、「国有財産特別措置法」(327AC0000000219_20251001_504AC0000000104、施行日 2025年10月1日)、「国有財産法」(323AC0000000073_20260717_508AC0000000062、施行日 2026年7月17日)、「地方自治法」(322AC0000000067_20260924_506AC0000000065、施行日 2026年9月24日)。国土交通省「道の相談室」質問「公図の赤道は誰が管理しているのでしょうか?」。世田谷区公式サイト「土地境界確定・確認(再標示)申請について(道路・水路等)」「道路・水路との公有地境界が不明なとき」「土地境界確定の窓口について」「道路に接していない敷地での建築について」、世田谷区建築ガイド(令和8年度版)の担当課一覧。墨田区公式サイト「道路の維持管理・通報」「道路関係資料の閲覧・取得」「土木管理課」「主な許可と制度」(いずれも2026年10月確認)。区の窓口は、編集部が公式サイトを確かめられた世田谷区と墨田区だけを書いています。国の窓口(財務局)の手続きと、水路の橋・ふたを接道として扱う運用は、確かめられていないため、断定していません。

