路地奥・旗竿地の通路は通っていい?通行地役権を登記で確かめる方法
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奥まった土地や旗竿地を売ろうとして、「この通路、うちが通っていい根拠はどこに書いてあるのだろう」と気づく方がいます。昔から通っているから大丈夫、と思っていたけれど、紙になったものは見たことがない。そんな場面です。
この記事では、通路を通れる根拠が何種類あるか、そのうち登記で確かめられる「通行地役権」を登記事項証明書のどこで見るか、載っていないときに何を調べるかを順に説明します。
結論
通路を通れる根拠は、①通路が自分の土地、②通路が共有、③通行地役権、④囲繞地通行権の4種類です。どれにも当たらなければ、口約束や黙認だけで通っている状態です。
このうち③は、法務局で取れる登記事項証明書の乙区に載ります。売る前に、自分の土地と通路の土地の両方の証明書を取って、見比べてください。
通路を通れる根拠は4種類|どれに当たるかで売り方が変わる
先に答えを言うと、通路を通れる理由は、4種類のどれかに分けて考えられます。どれに当たるかで、買い手への説明と、売る前にやることが変わります。
| 根拠 | 中身 | 登記で見る場所 | この記事での扱い |
|---|---|---|---|
| ①通路が自分の土地 | 旗竿地の「竿」が、自分の敷地に入っている | 自分の土地の登記の面積・地番 | 通る権利の問題は出にくい。幅は旗竿地の記事へ |
| ②通路が共有 | 通路の土地を、隣などと共有している | 通路の土地の甲区(所有者の欄) | 私道持分の記事と共有名義の記事へ |
| ③通行地役権 | 契約で「通路の土地を通る権利」を決めた | 乙区 | この記事の中心 |
| ④囲繞地通行権 | 他の土地に囲まれ、公道に出られない土地に、法律が認める通行の権利 | 登記には載らない | 袋地・無道路地の記事へ |
①の場合、通路は自分の土地なので、「通っていいのか」で迷うことはありません。迷いが出やすいのは、通路が他人の土地にかかっている形です。たとえば、路地の奥にあって、手前の土地の一部を通らないと道路に出られない場合です。
④の囲繞地通行権(いにょうちつうこうけん)は、民法が定めている権利です。他の土地に囲まれて公道に通じない土地の持ち主が、まわりの土地を通れる、という内容です。契約も登記も要らずに生じる点が、③との大きな違いです。
こと
自分の土地の便利のために、他人の土地を使える権利です。民法では、契約などで決めた目的に従って、他人の土地を自分の土地の便益に使う権利と定めています。通路として通る目的で決めたものが、通行地役権です。
③と④は、名前が似ていて混ざりやすい権利です。④は「法律が当然に認める」もの、③は「当事者が決めて、登記で見せる」ものと覚えると、整理しやすくなります。
登記事項証明書のどこを見るか|乙区と、要役地・承役地の向き
答えを先に言います。通行地役権は、登記事項証明書の「権利部」の「乙区」に載ります。ここを開けば、通路の権利が登記されているかどうかが分かります。
登記事項証明書の権利部は、甲区と乙区に分かれています。甲区には所有権に関する事項、乙区には所有権以外の権利に関する事項を記録する決まりです(不動産登記規則)。法務省の案内でも、乙区の例として抵当権・地上権・地役権が挙がっています。
| 欄 | 載っていること | 通行の権利との関係 |
|---|---|---|
| 表題部 | 所在・地番・地目・面積 | 土地の特定に使う |
| 権利部の甲区 | 所有者の名前、持ち主が変わった履歴 | 通路の土地を誰が持っているか |
| 権利部の乙区 | 抵当権、地役権など、所有権以外の権利 | 通行地役権はここ |
「要役地」と「承役地」|自分の土地はどちらか
乙区を読むときに出てくる2つの言葉を、先に押さえます。
こと
地役権で便利になる側の土地が要役地、使われる側の土地が承役地です。通路の例では、通る人の土地が要役地、通路になっている土地が承役地です。
奥の土地を売る方(通路を通る側)なら、自分の土地が要役地、手前の通路の土地が承役地です。逆に、自分の土地の一部を、奥の家が通路として使っている場合は、自分の土地が承役地になります。
不動産登記法は、承役地に地役権の登記をしたとき、要役地の登記にも、登記官が職権で必要な事項を記録すると定めています。不動産登記規則には、その記録の内容(要役地の地役権の登記である旨、承役地の所在、目的と範囲、登記の年月日)が書かれています。
つまり、仕組みの上では自分の土地と通路の土地の両方に記録が出ることになります。ただ、登記の時期や管轄によって見え方が違うことがあるので、両方の証明書を取って見比べるのが確実です。
乙区に書いてあること
承役地についてする地役権の登記には、次の内容が入ります(不動産登記法)。
- 要役地(どの土地のための権利か)
- 地役権設定の目的と範囲(何のために、どこまで使えるか)
- 設定のとき、法律の原則と違う取り決めをしていれば、その内容
注目してほしいのは、目的と範囲の欄です。「通行」とだけ書いてあるのか、自動車の通行まで書いてあるのか、通路のどの部分なのか。徒歩の通行だけを認めた権利なら、車での出入りは別の話になります。欄の書き方が短くて判断できないときは、設定したときの契約書で確かめます。
もう一つ、地役権の登記では、地役権者の氏名や住所を登記しなくてよい決まりがあります(不動産登記法)。権利は「Aさん個人」にではなく、「要役地という土地」に付いているからです。乙区に人の名前が出てこなくても、おかしなことではありません。
ポイント
地役権は、人ではなく土地に付く権利です。民法は、地役権は要役地の所有権に従たるものとして、その所有権とともに移ると定めています(設定で別の定めをした場合を除く)。奥の土地を売れば、通行地役権も、買った人に引き継がれます。通行の権利だけを切り離して売ることはできません。
登記事項証明書を取る手順は、次のとおりです。
登記事項証明書で通路の権利を確かめる順番
- 地番を調べる自分の土地と、通路になっている土地の地番を調べる。住所表示とは違う番号なので、権利証や固定資産税の通知書で確かめる
- 両方の証明書を取る法務局の窓口に出す、郵送で請求する、オンラインで請求する、の3つの方法がある(オンラインで請求しても、受け取りは郵送か窓口)。自分の土地と通路の土地の2通
- 乙区を見る地役権の記載があるか。要役地・承役地の地番、目的、範囲を読む
- 甲区で通路の持ち主を見る通路の土地の所有者が今も同じ人か、代替わりしていないか
通路の土地の証明書も、自分の土地と同じ手続きで取れます。不動産登記法は、手数料を納めれば「何人も」登記事項証明書の交付を請求できると定めているからです。通路の持ち主でなくても請求できます。地番が分からないときは、管轄の法務局に電話か窓口で聞いてください。住所から地番を調べてもらえる場合があると、法務局が案内しています(備え付けの地図やブルーマップを見られるかは、法務局によって違います)。持っていくのは、自分の土地の権利証か固定資産税の通知書、通路の場所が分かる地図(住宅地図など)です。請求書の様式と手数料は、法務局のサイトに載っています。
乙区に何も載っていないとき|次に確かめる4つのこと
乙区に地役権が無くても、慌てる必要はありません。登記が無いことと、通る権利が無いことは同じではないからです。ただし、登記がある場合より、説明に使える材料が少なくなります。
民法は、不動産に関する権利は登記をしなければ第三者に対抗できない(持ち主が変わった新しい人などに主張できない)と定めています。地役権も登記の対象です。通路の土地が売られたとき、登記が無いと、新しい持ち主に「通る権利がある」と主張しにくくなる原則があります。
一方で、登記が無い場合に、通る権利を新しい持ち主に主張できるかどうかは、通路の使われ方や当事者の事情によって変わります。売主が自分で結論を出せる部分ではありません。この記事では、判断を専門家にゆだねる前に、事実を集める順番を説明します。
①通路の土地は誰のものか
通路の土地の登記事項証明書を取り、甲区で所有者を見ます。自分の土地の一部なのか、隣の人の土地なのか、役所の土地(公道や水路。水路の扱いは水路・里道のある土地の売却で書きました)なのか。ここで、前の節の①②にも当たるかが分かります。
私道だと分かったら、持分があるか、持分が無いなら通行と掘削の承諾があるかが論点になります。私道持分なしの土地の記事で、承諾書の取り方を説明しています。
②書面があるか
登記が無くても、書面が残っていることがあります。探す場所は、次のとおりです。
- 自分が土地を買ったときの売買契約書と重要事項説明書(通路について書かれていないか)
- 昔の持ち主から預かった書類、覚書、通行承諾書
- 土地を分けたとき(分筆)に作った書類
見つかったら、通路の場所、通行の方法(徒歩のみか、車も含むか)、費用の負担、期間が書かれているかを読みます。
③通路の使われ方の事実
書面が無い場合でも、通路の使われ方は大事な材料になります。民法には、地役権は継続的に行使され、かつ外形上認識できるものに限り、時効によって取得できるという定めがあります。通路が舗装されている、長年通っている、といった事実が材料になりえます。
ただ、時効が成り立つかどうかは、使い始めた経緯や期間など、個別の事情で決まります。ここでは決められません。写真、長年の利用を示すもの(昔の住所を使った郵便物など)を、集めておくところまでが売主にできることです。
④囲繞地通行権に当たるか
自分の土地が、他の土地に囲まれて公道に通じていない場合は、前の節の④に当たる可能性があります。通路の場所は、通る人にとって必要で、通られる側の損害がもっとも少ない場所を選ぶ決まりです(民法)。通行の償金(しょうきん、通る代わりに払うお金)を払う定めもあります。
この場合も、建築のルールは別の話です。通行の権利があっても、家を建てるには、道路に2m以上接していなければなりません。接道義務の記事で整理しています。
ここまで調べて、4つのどれにも当たらない場合は、口約束や黙認で通っている状態です。その場合も、売れなくなるわけではありません。通路の持ち主に、これからの通行を書面にしてもらう道があります(次の節以降で説明します)。
買い手とローンが気にする点
先に答えを言うと、買い手が見るのは、「通る根拠を書類で示せるか」「車は通れるか」「通路の持ち主が変わっても続くか」の3つです。
| 買い手の疑問 | 売主が用意できるもの |
|---|---|
| 本当に通っていいのか | 乙区に地役権がある登記事項証明書、または通行承諾書 |
| 車で入れるのか | 登記の「目的と範囲」の欄、設定の契約書 |
| 水道・ガスの管を通せるか | 掘削の承諾書(通行とは別の承諾) |
| 通路の持ち主が変わったら | 登記があること(原則)、通路の持ち主の連絡先 |
車の通行と掘削は、通行の権利とは別に確かめます。民法は、地役権を設定の目的に従う権利としています。目的に「通行」しか無ければ、水道管やガス管を地中に通す工事までは、入っているか分からない状態です。通路の下の排水管が隣の敷地を通っていないかも、あわせて排水管が他人の土地を通っている土地の売却で確かめてください。
住宅ローンの扱いは、金融機関によって違います。通路の権利をどう見るか、どの書類があれば審査が進むかは、公式の資料で確かめられていないため、書けません。買い手が申し込む金融機関に、不動産会社を通じて聞いてもらうのが確実です。
売主にできるのは、買い手の疑問に先回りして、書類をそろえることです。
買い
- 自分の土地と通路の土地の登記事項証明書(取得から日が浅いもの)
- 地役権の登記があれば、その記載のコピー
- 通行承諾書や覚書があれば、そのコピー
- 通路の幅・舗装の状態が分かる写真
- 通路の持ち主の名前と、連絡が取れるか
通路が建築基準法上の道路にあたるかどうか(位置指定道路か、二項道路か)は、また別の確認です。前の道の調べ方は位置指定道路か二項道路かの記事にまとめました。
売る前にできること|登記がない通路を整える
答えを先に言います。登記が無くても、通路の持ち主に頼んで、通行の約束を書面にし、登記まで進める道があります。ただし、通路の持ち主の協力が要ります。
登記は、権利を得る側と、負担を負う側が一緒に申請するのが原則です(不動産登記法)。通路の持ち主が応じてくれないと、一人では登記できません。
通行の権利を書面と登記にする流れ
- 通路の持ち主に話す売ること、買い手に通行の書面を見せたいことを伝える。急いで書面に署名を求めない
- 書面の内容を決める通る場所、徒歩か車か、水道管などの掘削、修繕費の負担、持ち主が変わったときの扱い
- 司法書士に相談する地役権設定の登記ができるか、必要な書類は何かを聞く
- 登記して、買い手に渡す乙区に載った新しい登記事項証明書を取る
話し合いのときは、承諾料や通行料の額を、こちらから先に言わないほうが無難です。金額の相場は、通路の条件や地域で違い、この記事では扱えません。お金の話が出たら、その場で決めずに、専門家に相談してから返事をします。
ここに
通路の持ち主が通行を認めない、通行料を求めてくる、といった争いになりそうなときは、売主だけで進めず、弁護士に相談してください。持っていくのは、2通の登記事項証明書、見つかった書面、通路を使ってきた経緯のメモです。聞くことは、「今の状態で通る権利を主張できるか」「買い手にどう説明するか」の2つです。
通路の持ち主との話がつかない場合でも、売る道はあります。通行の書面が無い状態を正直に伝えたうえで、今の状態のまま買い取る会社に見てもらう方法もあります。会社の選び方は、土地の買取業者の選び方にまとめました。買取は仲介より価格が下がりやすい点は、前提に置いてください。
路地奥の土地の査定を取る前に、通路の登記事項証明書が手元にあると、不動産会社への説明がスムーズになります。
よくある質問
Q. 乙区に地役権が載っていれば、安心して売れますか?
登記があると、買い手への説明はしやすくなります。ただ、安心かどうかは、中身で決まります。「目的と範囲」の欄に、車の通行や、水道管などの埋設が含まれているかを確かめてください。短い記載で判断できないときは、設定のときの契約書を探します。
Q. 通行の承諾書があれば、地役権の登記は要りませんか?
承諾書があれば、通路の持ち主が許していることを示せます。ただ、通路の土地が売られて持ち主が変わったとき、承諾書の効力が新しい持ち主に及ぶかどうかは、書き方や事情で変わります。登記があるほうが、民法の原則に沿って主張しやすくなります。登記に進めるかは、司法書士に聞いてください。
Q. 昔から通っているだけで、書類が何もありません。どうすればいいですか?
まず、通路の土地の持ち主が誰かを、登記事項証明書で確かめます。そのうえで、長年通ってきた事実(写真、郵便物の宛先など)を集めてください。通る権利を主張できるかは、個別の事情で決まるので、弁護士に相談するのが近道です。売る場面では、書類が無いことを、買い手に正直に伝える必要があります。
Q. 通路の持ち主が亡くなっていて、相続人が分かりません。
通路の土地の甲区で、所有者の名前と、持ち主が変わった履歴を確かめます。名義が亡くなった人のままのときは、相続人を探すところから始まります。名義の確かめ方は、土地の名義が亡くなった祖父のままだったらの記事を読んでください。相続人との交渉や書面づくりは、司法書士や弁護士に任せる場面です。
Q. 自分の土地が通路として使われています。売るときはどうなりますか?
自分の土地が承役地になっている場合、乙区に地役権が載っていれば、土地を買った人も通行を受け入れる立場になります。民法は、地役権のために設けた工作物の設置・修繕の義務を設定で決めた場合、土地を買った人もその義務を負うと定めています。売るときは、乙区の内容を、そのまま買い手に伝えます。
まとめ
- 通路を通れる根拠は、①自分の土地、②共有、③通行地役権、④囲繞地通行権の4種類。どれにも当たらなければ、口約束や黙認の状態
- 通行地役権は、登記事項証明書の乙区に載る。自分の土地と通路の土地の両方の証明書を取って見比べる
- 乙区を読むときは、要役地(通る側)と承役地(通路になっている側)の向きと、「目的と範囲」の欄を確かめる
- 乙区に何も無いときは、通路の持ち主、書面、使われ方の事実、囲繞地通行権の4つを順に調べる。権利を主張できるかは、個別の事情で決まる
- 売る前に、通行の約束を書面にし、司法書士と登記を相談する。持ち主との話が揉めそうなら、弁護士へ
出典:e-Gov 法令検索「民法」(地役権の内容・付従性・時効取得、不動産に関する物権変動の対抗要件、公道に至るための他の土地の通行権。版ID 129AC0000000089_20260624_508AC0000000045、施行日2026-06-24)、「不動産登記法」(権利に関する登記の登記事項、地役権の登記の登記事項、共同申請。版ID 416AC0000000123_20260624_508AC0000000046、施行日2026-06-24)、「不動産登記規則」(登記記録の編成、地役権の登記。版ID 417M60000010018_20261005_508M60000010023、施行日2026-10-05)。いずれも2026年10月に確認。法務省「登記事項証明書の例」(乙区の説明)・法務局「各種証明書請求手続」(請求方法)・旭川地方法務局「地番を調べる方法」(地番の調べ方)は、2026年10月10日に確認。登記がない場合に通行地役権を主張できるかは、個別の事情によるため、本文では断定していません。


