売却の進め方

駐車場として貸している土地を売る|借主への伝え方と、買主に引き継ぐときの注意

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親から相続した小さな土地が、いつの間にか月極の駐車場になっていた。あるいは、コインパーキングの会社に貸している。賃料が毎月入ってくるので、そのままにしてきたけれど、いざ売るとなると「借りている人に、いつ、どう伝えればいいのか」が分からない。そんな方に向けて書きました。

人が住む家を貸している場合は、借家人がいる古い貸家の売り方で扱っています。この記事は、建物ではなく、土地そのものを駐車場として貸している場合の売り方です。

結論
駐車場として貸している土地は、空けてから売るか、貸したまま売るかの2つで、やることが変わります。どちらにするにしても、最初に見るのは借主との契約書です。解約の予告の決まりや、特約が、売る段取りを左右します。

空けてから売るか、貸したまま売るか

売り方は2つに分かれます。空けて更地にしてから売るか、駐車場のまま買主に引き継ぐか。どちらが合うかは、契約の中身と、買う人が何に使いたいかで決まります。

駐車場の土地の売り方(考え方の整理)

空けてから売る

  • 買主は、建物を建てる人や自分で使う人まで広がる
  • 借主に解約を伝える手間と期間がかかる
  • 借主の人数が多いほど、段取りが増える

貸したまま売る

  • 借主と解約の話をしなくて済む
  • 買主は、賃料収入を見込む人が中心になる
  • 貸主の立場を、買主が引き継ぐ

「空けてから」のほうが、買う人の幅は広がります。建物を建てるために土地を探している人は、借主が付いたままだと検討しにくいからです。反対に、駐車場の賃料を目当てにする人なら、貸したままのほうが話が早い。

どちらを選ぶかを決める前に、まず自分の契約がどのタイプなのかを確かめます。

まず、自分の契約がどれかを確かめる

駐車場として貸している土地は、契約の相手と形で、大きく3つに分かれます。誰と契約しているかで、解約を伝える相手が変わります。

タイプ 契約の相手 売るときに気にするところ
月極駐車場(自分で貸している) 車を置く個人や会社 借主の数だけ契約がある。1台ごとに契約書があるか
コインパーキング(運営会社に一括で貸している) 運営会社1社 解約の連絡先は運営会社。精算機などの設備の撤去も契約で決まる
青空駐車・資材置き場 事業者など 契約書が簡単なことがあり、書面が無い場合もある

月極の場合、借主が10人いれば、契約も10本あると考えてください。1人ずつ、契約書の内容と、いつまで借りる約束になっているかを確かめます。

コインパーキングの場合は、土地を貸している相手は、駐車場に停めに来る利用者ではなく、運営会社です。解約の話をする相手は運営会社1社になります。精算機やロック板といった設備を誰の持ち物にするかは、契約書で決まっています。

ことばの解説:賃貸借(ちんたいしゃ)

お金を受け取って、物を貸す契約のことです。駐車場として土地を貸すのも、賃貸借にあたります(民法の賃貸借の規定)。貸している側が貸主、借りている側が借主です。この記事の売主は、貸主です。

契約書で確かめる5つのこと

契約書が手元にあれば、次の5点を順に見ます。解約の予告の決まりがどう書かれているかが、いちばん大事です。

契約書で確かめること

  • 期間と更新:いつからいつまでか。自動で更新される書き方か
  • 貸主からの解約:貸主の側から解約するとき、何日(何か月)前に伝える決まりか
  • 特約:売却したとき、土地の持ち主が変わったときの扱いが書かれているか
  • 賃料と預かり金:毎月の額、前払いの有無、敷金や保証金を預かっているか
  • 原状回復と設備の撤去:契約が終わるとき、舗装・ロープ・看板・機器を誰が片付けるか

解約予告の期間は、契約書によって違います。他の人の契約を基準にせず、自分の契約書に書かれた期間を、そのまま使ってください。

契約書に解約の定めが無い、あるいは期間を決めていない場合は、民法の規定が使われます。土地の賃貸借で期間の定めが無いときは、解約を申し入れてから1年で終わる、というのが民法の定めです(民法の「期間の定めのない賃貸借の解約の申入れ」の規定)。期間を決めた契約で、貸主の側から途中で解約できるかどうかは、民法に一律の答えがあるわけではなく、契約書に「中途解約」の定めがあるかどうかで変わります。定めが無い、または読み方に迷うときは、契約書を弁護士に見せて確認してください。

1年期間の定めがない土地の賃貸借で、解約を申し入れてから終わるまでの期間(民法の定め。契約書に別の定めがあればそちらを確かめる)

契約書が見つからないときは、借主本人、管理を頼んでいた不動産会社、親の通帳の入金記録から手がかりを探します。口約束の貸し借りでも契約は成り立ちますが、中身があいまいだと、買主も判断できません。今の賃料と条件を、借主に確認して書面に残しておくと、あとの話が進みます。

借地借家法がかかるかどうかの見分け

駐車場の貸し借りに、借地借家法(借主を強く守る法律)がかかるかどうかは、土地を借りた目的で決まります。この法律で守られる「借地権」は、建物を所有する目的で土地を借りる権利を指すからです(借地借家法の定義の規定)。

車を停めるためだけに借りている駐車場は、建物を建てる目的ではありません。借りた目的が建物の所有でなければ、条文の上では借地権にあたりません。ただし、自分の契約が実際にどちらにあたるかは、土地の使われ方で変わります。

ここに注意:駐車場だから必ず対象外、とは決めつけない

駐車場の名前でも、実際には借主が建物を建てている、事務所やプレハブを置いている、といった形だと話が変わることがあります。目的が「車を停めること」なのか、「建物を所有すること」なのかは、契約書の書き方と、土地の使われ方の両方で見ます。コインパーキングの精算機や小さな事務所があるときに、どちらになるかは、この記事では言い切れません。弁護士か司法書士に、次の3点を見せて確認してください。
・契約書(土地を借りる目的の書き方)
・土地の写真と配置図(建物や設備が、誰の持ち物で、どこにあるか)
・賃料の入金記録と、これまでのやり取り

借地借家法の対象でなくても、契約書に書かれた解約の決まりは守る必要があります。「売るから、来月までに出てください」と一方的に伝えても、契約上の予告の期間が足りなければ、借主は応じなくてよい場合があります。立退料が必要になるかどうかも、契約の内容と事情で変わるので、ここでは言い切りません。

建物を建てて土地を借りている場合は、駐車場とは別の話になります。そのときは借地権付きの家の売却を読んでみてください。

貸したまま売るとき|買主に引き継ぐもの

貸したままで売る場合、買主が貸主の立場を引き継ぐ形になります。借主から見ると、土地の持ち主が変わり、賃料の振込先が変わることになります。

ことばの解説:賃貸人たる地位の移転

土地を買った人が、売主に代わって貸主になることです。賃料を受け取る権利と、借主に土地を使わせる義務が、買主に移ります。民法には、借主が賃借権の対抗要件(第三者に権利を主張できる備え。賃借権の登記など)を持っている場合に、貸主の地位が土地の譲受人に移る、という定めがあります(民法の「不動産の賃貸人たる地位の移転」の規定)。買主が借主に「貸主は私です」と主張するには、土地の所有権移転登記も必要です。

ここで、駐車場ならではの注意があります。建物を借りている借家人なら、引渡しを受けて住んでいることが対抗要件になります。でも、駐車場の借主は、賃借権の登記をしていないことがあります。そのときは、土地を売っただけで貸主の立場が買主に移る、とは言えません。民法には別の定めがあり、売主と買主が合意すれば、借主の承諾がなくても、貸主の立場を買主に移せます(民法の「合意による不動産の賃貸人たる地位の移転」の規定)。つまり、何もしなくても自動で移る、と考えてはいけません。売買契約書に「貸主の立場を買主に移す」と書くのか、売主が契約を終わらせてから引き渡すのかを、売買契約の前に決めてください。

実際の手続きは、売買契約書の中で、買主と次のことを決めておく形が基本です。

  • 貸している契約を、買主が引き継ぐかどうか(引き継がない場合は、引渡しまでに売主が契約を終わらせる)
  • 預かっている敷金や保証金を、どう扱うか。受け取った敷金は、契約が終わるときに借主に返す義務があり、買主が貸主を引き継ぐ場合は、その返還の義務も買主に移る(民法の敷金の規定と、賃貸人たる地位の移転の規定)
  • 賃料を、引渡しの日を境に日割りで分けるかどうか
  • 借主の一覧、賃料の額、入金の状況を、買主に渡す資料として整える

貸したまま売るときの段取り

  1. 契約書と入金の確認借主ごとの契約書、賃料、預かり金を書類で確かめる
  2. 売り方を決める引き継ぐ前提で、買主の候補を探す
  3. 売買契約貸主の地位の引き継ぎ、預かり金、賃料の日割りを契約書に書く
  4. 引き渡しと借主への連絡所有権の移転登記のあと、借主に新しい貸主と振込先を伝える

借主への連絡は、売買が決まったあと、買主の名前と新しい振込先をそろえて伝えます。連絡が行き違うと、借主がどこに賃料を払えばよいか迷い、二重に払ってしまったり、未払いと見なされたりします。

賃料の精算も、決めておく点です。例えば月額1万5,000円の区画を、月の15日に引き渡すなら、その月の賃料は日割りで売主と買主に分ける、といった形です(仮の数字)。前払いで受け取っている翌月分があれば、それも買主に渡す金額に入ります。



借家人がいる古い貸家を相続したら|そのまま売るか、出てもらってから売るか

空けてから売るとき|借主への伝え方と順番

空けてから売る場合は、契約書に書かれた予告の期間から逆算して、売る日を決めるのが順番です。売ると決めたあとで急いで伝えるより、先に契約の終わらせ方を確かめてから動くほうが、行き違いが起きません。

進める順番は次のとおりです。

空けてから売るときの順番

  1. 契約書で解約の決まりを確認貸主からの解約の予告期間、特約、預かり金を確かめる
  2. 引き渡したい時期を決める予告期間から逆算して、売買契約の時期を考える
  3. 借主に書面で伝える口頭だけにせず、いつまでに空けてほしいかを書面で残す
  4. 撤去・精算車が無くなったのを確かめ、賃料と預かり金を精算する
  5. 売買契約・引き渡し更地の状態で買主に引き渡す

借主に伝えるときは、書面で残すことをおすすめします。いつ、何を伝えたかが、あとから確認できるからです。口頭だけだと、「聞いていない」となった場合に、予告の期間を数え直すことになりかねません。

借主が複数いる月極駐車場では、1人ずつ契約が違うことがあります。全員に同じ日に一斉に伝え、期限も揃えると、段取りが組みやすくなります。ただし、契約書で予告期間が違うなら、いちばん長い人に合わせて売る日を決めます。

コインパーキングの場合は、運営会社との契約に、解約するときの手順や、設備の撤去にかかる期間・費用の負担が書かれています。設備を撤去してもらう期間まで含めて、引き渡しの日を考える必要があります。

借主が簡単に話に応じない場合や、契約書の読み方で意見が分かれる場合は、売主が交渉の矢面に立たず、弁護士に相談する道もあります。この記事では、借主との交渉を代わりに引き受けることはしません。

相続した土地で、売る前にそろえるもの

親が貸していた土地を相続した場合は、貸主の立場も相続人に引き継がれます。借主との契約は、相続のあともそのまま続いている状態です。

売るには、先に土地の名義を相続人に変える相続登記が要ります。手続きは相続登記の義務化とは?期限・過料と、売る前にやることで説明しています。相続人が複数いて、遺産分割がまだなら、売る前に共有名義の土地を売るときの全員同意の考え方の内容も確かめてください。共有の土地は、全員の同意がそろわないと売れません。

相続した土地の売却全体の流れと税金は、相続した土地を売るときの手順と税金にまとめています。駐車場の賃料は、売るまでの間、不動産の所得として確定申告の対象になります。個別の扱いは、税務署か税理士に確認してください。

建物が建っていた土地が駐車場になっている、あるいは古い家が一部に残っている場合は、古家付き土地の売却の考え方も使えます。



相続した土地を売る流れと税金|登記・特例・期限の注意点

売り先の選び方と、価格の見方

貸したまま売るのか、空けてから売るのかが決まったら、次は誰に売るかです。同じ土地でも、売り先によって、求められる状態と価格の見られ方が変わります。

仲介で買主を探す場合は、貸したままだと、買主は賃料収入を目当てにする人が中心になります。空けた更地なら、建物を建てる人や、自分で使いたい人にも声がかかります。業者に直接買い取ってもらう形もありますが、価格は仲介より低くなりやすく、対応できる土地や地域は会社ごとに違います。それぞれの違いは、土地の買取業者の選び方と一括査定サイトは狭小地に向いている?で整理しています。

土地の価格は、場所、広さ、形で大きく変わります。例えば、駐車場の賃料が毎月3万円(仮の数字)でも、土地の価格がそれに釣り合うとは限りません。賃料の額だけで土地の値段を考えず、貸したままの価格と、空けた場合の価格を、並べて比べると判断しやすくなります。

駐車場として貸している土地を、複数の会社に見てもらうと、貸したままと空けたあとの両方の見方を聞けることがあります。申し込むと、電話やメールが来ることもあるので、あらかじめ頭に入れておいてください。

土地がいくらくらいで売れそうか、まずは複数の会社の査定額を並べてみると、相場の幅がつかめます。

よくある質問

Q. 月極駐車場の借主がいても、土地は売れますか?

売れます。貸したまま売る方法と、借主との契約を終わらせて空けてから売る方法があります。どちらを選ぶかで、売買契約書に書く内容が変わります。

Q. 借主には、いつまでに売ることを伝えればいいですか?

契約書に書かれた解約の予告期間が基準になります。期間は契約ごとに違うので、書面で確かめてください。期間の定めが無い土地の賃貸借は、民法では解約の申入れから1年で終わる、とされています。

Q. 駐車場でも、借主に立退料を払う必要がありますか?

必要かどうかは、契約書の内容と、借りた経緯で変わります。一律に「払う」「払わない」とは言えません。話し合いが難しいときは、弁護士に相談してください。

Q. コインパーキングのまま売ることはできますか?

できます。ただし、運営会社との契約を買主が引き継ぐのかどうかを、売買契約で決める必要があります。設備の所有者と、撤去の費用の負担も、運営会社との契約書で確かめてください。

Q. 賃料は、売った月にどう分けますか?

売買契約で決めるものです。引渡しの日を境に日割りで分ける形がありますが、決まりがあるわけではありません。前払いの賃料があれば、それも精算の対象にします。

まとめ

  • 駐車場として貸している土地は、空けてから売るか、貸したまま売るかの2つで、やることが変わる。
  • 最初に、契約の相手(月極の個人か、コインパーキングの運営会社か)と、契約書の解約予告・特約・預かり金を確かめる。
  • 借りた目的が建物の所有でなければ、借地借家法の借地権にはあたらない。ただし土地の使われ方で変わるため、契約書・配置図・入金記録を持って、弁護士か司法書士に確認する。
  • 貸したまま売るなら、貸主の立場の引き継ぎ、預かり金、賃料の日割りを売買契約書に書く。
  • 空けてから売るなら、契約書の予告期間から逆算して売る日を決め、借主には書面で伝える。

どちらの売り方が合うかは、契約の中身と土地の条件で変わります。契約書の読み方や、売り方の選び方で迷うときは、状況を一緒に整理します。

出典:e-Gov 法令検索 API v2「民法」(賃貸借、不動産賃貸借の対抗力、不動産の賃貸人たる地位の移転、合意による不動産の賃貸人たる地位の移転、期間の定めのない賃貸借の解約の申入れ、敷金の各規定。版ID 129AC0000000089_20260624_508AC0000000045(施行 2026-06-24))、「借地借家法」(趣旨・定義の規定。版ID 403AC0000000090_20260521_504AC0000000048(施行 2026-05-21))。

この記事の監修者:十坪とつぼさん(宅地建物取引士)
東京23区で土地の仕入れ営業を担当する宅地建物取引士。狭小地・旗竿地・古家付き土地など、小さくて売りにくい土地を日々見ている。

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