売却の進め方

土地を売ったら翌年の国民健康保険料はどうなる?|売却益が出た年に、確定申告のあとで来る請求

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実家の土地を売って、確定申告も済ませた。税金はこれで終わりと思っていたら、しばらくして区役所から、国民健康保険料や介護保険料の通知が届く。しかも、去年とは金額が大きく違う。そんな話があります。

土地を売ると、売却益は「その年の所得」として扱われます。所得税や住民税だけでなく、保険料の計算にも、その所得が使われる場面があるのです。ただ、3,000万円の特別控除などを「引いたあと」の金額で見るのか、「引く前」の金額で見るのかは、区によっても、計算の場面によっても違います。この記事では、墨田区と世田谷区の公式ページを実際に開いて確かめた内容を示し、売る前に自分の区へ何を聞けばよいかをまとめました。

結論
土地を売った年の所得は、翌年度の国民健康保険料・介護保険料・後期高齢者医療の保険料の計算に使われることがあります。特別控除を引く前か後かは、区ごと・場面ごとに違うので、他の区の話や一般論で金額は読めません。
売る前に、自分の住む区の窓口に「売却の予定額と特別控除を使う予定」を伝えて、試算を頼むのが確実です。この記事の後半に、聞く項目を並べました。

申告のあとに、保険料の請求が来る理由

先に答えを言うと、国民健康保険料は、前の年の所得をもとに計算されるので、土地を売った年の所得が、翌年度の保険料に響くのです。確定申告で終わるのは税金の手続きで、保険料は別の仕組みで、別の窓口から請求が来ます。

世田谷区の「保険料の計算方法」のページには、保険料の元になる額は「前年の所得額から住民税の基礎控除を引いた額」と書かれています。この所得額には、分離課税の所得(土地や建物を売った所得もここに入ります)が含まれる、とも書いてあります。墨田区の「国民健康保険料の計算」のページも、分離課税の譲渡所得を、保険料の元になる額に入れる表になっていました。世田谷区で土地を売る全体の流れは、世田谷区の土地を売る流れと調べる順番で整理しています。

ことばの解説:分離課税の譲渡所得

土地や建物を売った利益(譲渡所得)は、給料などとは別の計算で税金が決まります。これを分離課税といいます。税金の計算は別でも、保険料の計算には、この所得を足し合わせる区があります。

順番を図にすると、こうなります。

土地を売ってから、保険料の請求が来るまで

  1. 土地を売る(その年)売却益が、その年の所得になる
  2. 翌年に確定申告所得税・住民税の手続き。詳しくは土地を売った翌年の確定申告で説明しています
  3. 区が、前年の所得をもとに保険料を計算国民健康保険・介護保険・後期高齢者医療は、制度ごとに別の計算
  4. 保険料の通知が届く通知の時期や納期は、区の案内で確かめる

なお、会社の健康保険(協会けんぽや健康保険組合)に入っている方は、保険料の決まり方が別です。この記事は、国民健康保険、65歳以上の介護保険料、75歳以上の後期高齢者医療に関わる方向けに書いています。

特別控除は「引く前」か「引いたあと」か|墨田区と世田谷区で確かめた内容

ここが一番の注意点です。同じ区のなかでも、保険料を計算する場面と、軽減を受けられるかを判定する場面で、扱いが分かれていました。

私たちが公式ページを開いて確かめられたのは、墨田区と世田谷区の2区です。江戸川区と足立区は、サイトに接続できず確かめられていません。ほかの区は開いていません。表の内容は、この2区について書いたもので、23区全体の話ではありません。

場面 墨田区 世田谷区
国民健康保険料の所得割の計算 分離課税の長期・短期の譲渡所得は、特別控除を適用した後の金額を使う 分離課税の所得は、特別控除がある場合は控除後の金額を使う
国民健康保険料の軽減(均等割)を受けられるかの判定 開いたページには、特別控除の扱いは書かれていなかった 土地・建物などの譲渡所得は、特別控除を引く前の金額で判定する
65歳以上の介護保険料 合計所得金額から、土地建物等の譲渡所得に係る特別控除額を控除した金額を使う 合計所得から特別控除額を除いた金額になる
75歳以上の後期高齢者医療保険料 前年の所得に応じた所得割がかかり、譲渡所得金額を含むと書かれている。特別控除の前か後かは、開いたページには書かれていなかった このページは開いていない

この表を見て気づく点が2つあります。

1つ目は、世田谷区では、保険料の計算は「控除後」、軽減の判定は「控除前」と、同じ国保のなかで扱いが逆になっていることです。特別控除を使って保険料の計算上の所得は小さくなっても、軽減の判定では売却益がそのまま見られるため、「軽減が受けられると思っていたのに、受けられなかった」ということが起こり得ます。

2つ目は、墨田区の軽減の判定は、開いたページに書かれていなかったことです。書かれていないから「控除後」だとは言えません。自分の区の扱いは、区に聞かないと分かりません。

特別控除を使ったときの見え方(仮の数字の例)

控除「後」で見る場面

  • 売却益が2,500万円(仮の数字)
  • 特別控除3,000万円を使う
  • 差し引くと所得はゼロになる
  • 保険料の計算に、売却益はほぼ入らない

控除「前」で見る場面

  • 同じ売却益2,500万円(仮の数字)
  • 特別控除は引かずに見る
  • 所得が2,500万円あるものとして扱われる
  • 軽減の判定などで、不利に働くことがある

ここに注意:他の区の話をそのまま当てはめない

この記事で確かめたのは、墨田区と世田谷区の公式ページです。江戸川区と足立区はサイトに接続できず、ほかの区は開いていません。隣の区や、インターネットの体験談の扱いが、自分の区にもあてはまるとは限りません。ご自身の区の最新の案内を、区の窓口で確かめてください。

保険料の種類は4つ|自分がどれにあたるか

売主の年齢や加入先で、関わる保険料が変わります。あてはまる制度ごとに、別の計算で、別の担当課に聞く形になります。

保険料 対象になる人 土地の売却との関係(2区のページで確かめた範囲)
国民健康保険料 会社の健康保険や後期高齢者医療に入っていない方 前年の所得(分離課税の譲渡所得を含む)で所得割が決まる
国民健康保険の介護分 国保に入っている40歳から64歳の方 国保料の一部として計算される。区のページに介護分の所得割の記載がある。特別控除の扱いは区に確認
介護保険料(第1号) 65歳以上の方 前年の合計所得金額で段階が決まり、2区とも特別控除を除いた金額を使うと書かれていた
後期高齢者医療保険料 75歳以上の方(65歳から74歳でも、一定の障害があって認定を受けた方は対象になります) 前年の所得に応じた所得割がかかる。窓口は区と東京都後期高齢者医療広域連合

介護保険料の段階は、「所得が上がると段階が上がる」仕組みです。ところが、上のとおり2区とも特別控除を除いた金額で見ていたので、控除を使えば段階は上がりにくい、という見方ができます。ただ、これは2区で確かめた内容にとどまります。



空き家の3,000万円控除|使えるかどうかの確かめ方と相談先

売る前に、区の窓口で聞く項目

区ごとに扱いが違うなら、確かめる方法は1つです。売る前に、住んでいる区の担当課へ「土地を売る予定なので、保険料がどう変わるか試算してほしい」と頼むことです。売ったあとでは、金額は変えられません。売る前なら、売る時期をいつにするかも、考える材料になります(どの年の所得になるかは、税理士か税務署に確かめます)。

聞くのは、次の項目です。窓口へ行く前に、メモに書いておくと聞き漏らしません。

区の窓口で聞く項目

  • 国民健康保険料の所得割の計算で、特別控除は「引く前」か「引いたあと」か
  • 均等割の軽減を受けられるかの判定では、特別控除は「引く前」か「引いたあと」か
  • 65歳以上の介護保険料の「合計所得金額」では、特別控除は「引く前」か「引いたあと」か
  • 40歳から64歳の方がいる世帯は、国保の介護分の計算も同じ扱いか
  • 75歳以上の方がいる世帯は、後期高齢者医療の保険料の所得割で、特別控除はどう扱われるか
  • 売却の予定額・取得費・譲渡費用・使う予定の特別控除を伝えたとき、試算してもらえるか。試算に必要な書類は何か
  • 保険料の通知はいつ届き、納期は何回に分かれるか
  • 減免や猶予の制度は、土地を売って所得が増えた場合にも使えるか

聞き先の課の名前は、区によって違います。墨田区は国保年金課(国民健康保険・後期高齢者医療)と介護保険課、世田谷区は国保・年金課と介護保険課が窓口として載っていました。区のホームページで「国民健康保険料」と検索して、担当課の電話番号を確かめるのが早い方法です。

最後の項目の減免について、墨田区の「国民健康保険料の減免・一時猶予」のページを開くと、挙がっている事情は、災害、事業の休廃止、失業、病気などでした。土地を売って所得が増えたこと自体は、そのページに挙がっていません。だから「減免が受けられるはず」と見込んで売るのは避け、窓口で確かめてからにしてください。

税金の見積もりと、保険料の見積もりは別の作業

土地を売ったときの税金は、所得税・住民税の見積もりと、保険料の見積もりを、それぞれ別に出す必要があります。税金のほうは、土地売却の税金と費用で、自分で見積もる手順を整理しています。

保険料とは別に、親や配偶者の扶養に入っている家族がいるときは、扶養控除・配偶者控除の判定でも売却益が見られます。こちらは特別控除を引く前の金額で見るので、土地を売ると親の扶養・配偶者控除から外れる?で確かめてください。

保険料のほうは、売却益の金額が決まらないと試算が出ません。そこで、売値の見込みと取得費(買った値段や、分からないときの扱い)を、先に整理しておきます。取得費が分からない場合の考え方は土地を売った翌年の確定申告に、相続した土地で使える取得費加算の特例は取得費加算の特例はいつまで?にまとめています。

ポイント

この記事は、保険料の金額を計算するものではありません。保険料を決めるのは区で、税額の個別の計算は税理士や税務署の仕事です。区が出す試算と、税理士などへの相談を、別々に頼むと、役割が混ざりません。

相続した実家を売る方の場合は、相続した土地を売る手順の全体像や、実家の売却の進め方もあわせて読むと、売却の順番のなかで保険料をいつ確かめるかが見えます。



土地を売った翌年の確定申告|期限・必要書類・取得費が不明なとき

手元にいくら残るかを、保険料まで含めて見る

売却で手元に残るお金は、売った値段から、仲介手数料などの費用と税金を引いた額です。そこに翌年度の保険料の増減が加わるので、売る方法を比べるときは、保険料も頭に入れておく必要があります。

仲介で売る場合と、業者に買い取ってもらう場合では、売値が変わります。売値が変わると、売却益も変わり、保険料への響き方も変わります。どちらの売り方が自分に合うかは土地の状況で決まるので、保険料の影響は、売り方を選ぶ材料のひとつとして置いておきます。

複数の会社の査定額を並べて、売値の見込みの幅をつかんでおくと、区の窓口で試算を頼むときにも、「この金額で売る予定」と具体的に伝えやすくなります。

土地がいくらくらいで売れそうか、まずは複数の会社の査定額を並べてみると、売却益の見込みの幅がつかめます。

よくある質問

Q. 土地を売ると、国民健康保険料は必ず上がりますか?

必ず上がるとは言えません。売却益が出なかった場合や、特別控除を引いたあとの所得が小さい場合は、保険料の計算に入る金額が小さくなります。ただし、同じ区でも、保険料の計算と軽減の判定で特別控除の扱いが違う例がありました(世田谷区)。自分の区で、売る前に試算を頼むと分かります。

Q. 会社の健康保険に入っています。土地を売ると保険料は変わりますか?

この記事は、国民健康保険・介護保険・後期高齢者医療を対象に書いており、会社の健康保険の仕組みは確かめていません。加入先の健康保険組合や協会けんぽ、勤務先の担当者に確認してください。

Q. 試算は税理士に頼むものですか、区に頼むものですか?

保険料の金額を決めるのは区なので、保険料の試算は区の窓口に頼みます。売却益や所得税・住民税の個別の計算は、税務署か税理士に相談してください。

Q. 3,000万円の特別控除を使えば、保険料は安全ですか?

そうとは言えません。墨田区・世田谷区のページでは、保険料の計算は特別控除を引いたあとの金額を使うと書かれていました。一方、世田谷区の軽減の判定は、特別控除を引く前の金額です。特別控除を使うことで税金が小さくなっても、保険料の側の見え方は別、という点を押さえておいてください。

Q. 75歳以上の親が、実家を売る場合はどこに聞けばいいですか?

後期高齢者医療の保険料は、区の国保年金課などの窓口と、東京都後期高齢者医療広域連合の案内が関わります。墨田区のページには、広域連合の「保険料試算用シート」で保険料を試算できると載っていました。

まとめ

  • 国民健康保険料は前年の所得で計算されるので、土地を売った年の所得が、翌年度の保険料に使われる
  • 特別控除を引く前か後かは、区ごと・場面ごとに違う。墨田区と世田谷区の公式ページで確かめた限りでは、保険料の計算と介護保険料は控除後、世田谷区の軽減の判定は控除前だった
  • 確かめられたのは2区だけで、ほかの区は未確認。自分の区の扱いは、区の窓口で聞くしかない
  • 売る前に、国保・介護・後期高齢者医療の担当課へ、売却予定額と特別控除の予定を伝えて、試算を頼む
  • 税額の計算は税理士や税務署、保険料の試算は区、と窓口を分ける

出典:墨田区「国民健康保険料の計算」(2026年4月1日更新)、墨田区「第1号被保険者(65歳以上の方)の介護保険料」(2026年7月10日更新)、墨田区「保険料の計算方法」(後期高齢者医療制度、2026年4月1日更新)、墨田区「国民健康保険料の減免・一時猶予」(2026年4月1日更新)、世田谷区「保険料の計算方法」(2026年3月30日更新)、世田谷区「保険料の軽減・減免について」(2026年4月1日更新)、世田谷区「世田谷区の介護保険料額」(2026年7月3日更新)、世田谷区「後期高齢者医療制度」(65歳から74歳の一定の障害がある方の認定、2026年10月9日閲覧)。いずれも2026年10月9日に閲覧。保険料の区分・料率・限度額は年度で変わるため、本文には書いていません。介護保険料の合計所得金額の定めは、地方税法と介護保険法施行令にもとづくと各区のページに記載があります。

この記事の監修者:十坪とつぼさん(宅地建物取引士)
東京23区で土地の仕入れ営業を担当する宅地建物取引士。狭小地・旗竿地・古家付き土地など、小さくて売りにくい土地を日々見ている。

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