液状化のおそれがある土地を売るとき|東京の予測図の見方と買主への伝え方
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売ろうとしている土地を、東京都の「液状化予測図」で見てみたら、色が付いていた。そういう場面を想像して、不安になっている方もいるかもしれません。「言わないと、あとで責められるのか」「言ったら、売れなくなるのか」と。
先に整理すると、液状化は、不動産会社が買主にする重要事項説明の項目には入っていません。ただし、入っていないことと、黙っていてよいことは別の話です。この記事では、予測図で自分の土地の位置を見るところから、買主への伝え方、告知書の書き方までを、順番に書いていきます。
結論
重要事項説明の項目に、水害ハザードマップはあっても、液状化は出てきません。ですが、売主が知っていることを黙ってよい、という意味ではありません。
売主の動きは4つ。予測図で自分の土地の位置を見る。予測図は目安だと知っておく。買主に調査結果を先に渡すか、予測図の位置だけを正確に伝えるかを決める。知っている事実を告知書に書く。
液状化は重要事項説明の項目に入っていない|でも黙っていてよいとは限らない
先に答えると、宅地建物取引業法の施行規則(法律を実際に動かすための細かい決まり)に、「液状化」という言葉は1度も出てきません。水害ハザードマップ上の位置を説明する項目はありますが、液状化はありません。
こと
地震の強い揺れで、水を含んだゆるい砂の地盤が、一時的にどろどろの液体のようになる現象です。建物が傾いたり、地面が沈んだり、砂まじりの水が噴き出したりすることがあります。
ここは、編集部が国の法令データベース(e-Gov 法令検索)で、施行規則の全文を検索して確かめました。「液状化」も「地盤」も、0件でした。「水防法」は3件あり、いずれも水害ハザードマップに関する項目です。法律本体の宅地建物取引業法にも、「液状化」は出てきません。
重要事項説明の項目に書かれているか
水害ハザードマップ上の位置
- 施行規則に説明の項目がある
- 市町村長が提供する図面に位置が表示されているときは、その所在地を説明する
液状化
- 施行規則に、この言葉が出てこない
- 項目に入っていないだけで、黙ってよいという意味ではない
水害ハザードマップの説明義務については、ハザードマップで浸水が想定される土地を売るときで整理しました。浸水は買主が必ず耳にする情報でしたが、液状化は、項目に入っていないぶん、売主が知っていることを誰が伝えるのかがあいまいになりがちです。
そこで効いてくるのが、売ったあとの責任です。引き渡した土地が契約の内容と合っていなかったとき、売主が責任を問われる仕組みを契約不適合責任といいます。くわしくは契約不適合責任の免責とは?土地を現状のまま売るときの注意点にありますが、売主が知っていて伝えなかったことは、特約を付けても守ってもらえない場面があります。
では、売主はどこまで伝えるべきか。ここは土地ごとの事情で変わり、最終的には弁護士の判断になります。この記事では、聞かれたら正直に答える。知っている事実は告知書に書く。そこまでを基本の線とします。
ここに
「液状化は説明項目にないから、何も言わなくていい」と決めつけるのは危ない考え方です。売主の説明がどこまで必要になるかは、個別の事情で変わります。迷ったときは、弁護士に確かめてください。
手順1|東京の液状化予測図で、自分の土地の位置を確かめる
先に答えると、見る資料は東京都の「東京の液状化予測図」です。東京都土木技術支援・人材育成センターのホームページで公開されていて、無料で見られます。まず、自分の土地がどの区分に入っているかを、画面ごと保存しておきましょう。
検索サイトで「東京の液状化予測図」と入れると、都のページが出ます。地図は3つの区分に色分けされています。
- 液状化の可能性が高い地域
- 液状化の可能性がある地域
- 液状化の可能性が低い地域
注意したいのは、住所の探し方です。都のQ&Aによると、住所の検索は「丁目」までで、番地(地番)では探せません。丁目まで出したら、あとは地図を見ながら、自分の土地の場所を探すことになります。手元に登記簿や固定資産税の通知書を置いて、住所を確かめながら進めると迷いません。
予測図で自分の土地を確かめる流れ
- 予測図を開く東京都土木技術支援・人材育成センターのページから
- 丁目まで住所を入れる番地では検索できないので、地図で土地の場所を探す
- 区分を見る高い・ある・低いのどれに入っているか
- 画面を保存する版と確認した日付も、一緒にメモしておく
予測図は、新しいデータを加えて改訂されます。開いたときの版と日付を、画面と一緒に残してください。「売るとき、こう出ていた」という記録があると、話が食い違いにくくなります。
もう1つ、都市整備局が案内している「液状化対策ポータルサイト」も覗いてみてください。土地の地歴図(昔、その土地がどんな場所だったかを示す地図)とボーリングデータ(地面に穴を掘って調べた地盤の記録)が公開されています。区によっては、窓口で柱状図(ボーリングデータを1本ずつ図にしたもの)を見せてもらえます。例えば文京区は、東京都や区が公共工事で作った柱状図を、建築指導課か行政情報センターで閲覧できると案内しています。自分の土地そのものを調べたものではなく、近くの記録です。ほかの区に同じ窓口があるかは、確かめられていません。区役所の建築指導の窓口に電話で、「液状化の参考になる地盤データを見られますか」と聞いてみてください。
なお、東京の西部で色が付いていない地域は、液状化しにくい山地が大部分のため、予測の対象外とされています。
手順2|予測図は目安にすぎない|個別の土地は地盤調査が要る
先に答えると、予測図は、土地ごとの答えではありません。都自身が、その場所が「絶対に液状化する・しない」と断定するものではないと書いています。色が付いていても、付いていなくても、自分の土地のことはこの図だけでは決まりません。
都のページには、次のような注意が並んでいます。
- 東京都全域の地下を、一律の強さで揺らしたときの可能性を、相対的に(ほかの場所と比べて)示したもの。特定の地震を想定していない
- 「液状化の可能性が低い地域」でも、都として液状化が発生しないことを保証するものではない
- 判定はメッシュ(細かく区切った区画)ごと。同じメッシュの中でも、場所によって可能性が違うことがある
- 地盤改良などの液状化対策の効果は、考えに入れていない
- 取引などで液状化の判定が必要なときは、自らの責任で詳細な調査・検討をする
最後の1行が、売主にとっていちばん大事です。都は、土地や建物の取引などで液状化の判定が必要なときは、自分の責任で詳細な調査・検討をしてほしいと書いているのです。
| 予測図でわかること | 予測図ではわからないこと |
|---|---|
| 自分の土地のある一帯が、ほかの場所と比べて、高い・ある・低いのどの区分か | 自分の土地そのものが、地震で液状化するかしないか |
| 過去の記録にもとづく液状化の履歴(網羅はしていない) | 低い区分の土地に、軟らかい粘土の地盤がないか |
| 判定した時点の、都のデータにもとづく目安 | 地盤改良をしたあとの状態 |
ポイント
「高い」でも売れなくなるわけではなく、「低い」でも安心を請け合える、というわけでもありません。予測図は、買主と話し合うための出発点です。結果を過大にも過小にも言わないことが、売主の守りになります。
予測図の判定が低くても、低地には軟らかい粘土の地盤があり、建物の基礎に向かない場合があると、都のQ&Aにあります。ですから「低いから安心」と書いたり、口で言ったりするのは避けましょう。
予測図の区分をどう扱って、どの順で売りに出すか。整理がつかないときは、手順を一緒に整理します。
手順3|買主への伝え方|調査結果を先に持つか、位置だけ正確に伝えるか
先に答えると、道は2つです。売主が先に地盤調査をして、結果を持っていくか。それとも、予測図の位置だけを正確に伝えるか。どちらが合うかは、土地と買主で変わります。
買主が家を建てる予定なら、地盤の状態を把握して、必要な対策を考える場面が出てきます。都の液状化対策アドバイザー制度も、建て主や建物所有者がそうした検討をするときの相談先として作られています。売主が何も出さなければ、買主が「悪い場合」を考えて、価格の話をしてくることもありえます。そこで、売主がどちらの形で情報を出すかを決めておきます。
買主への出し方、2つの道
先に地盤調査をして、結果を渡す
- 買主が、数字や記録を見て判断できる
- 費用は売主の負担になる(金額は調査会社に見積もりを取る)
- 結果が悪くても、売主が知った事実になり、告知書に書く話になる
予測図の位置だけを正確に伝える
- 売主の費用はかからない
- 版・確認日・区分を、保存した画面と一緒に渡す
- 調査は、買主が自分で行う前提になる
調査を先にやる道は、買主の安心につながる反面、結果を知ってしまうことになります。もし悪い結果が出たら、それは売主が知った事実です。調べる前に、結果がどうでも伝える覚悟があるかを、考えてみてください。
一方、位置だけを伝える道は、手間がかかりません。ただし、「予測図ではこの区分でした。これは目安で、この土地の保証ではありません」とセットで伝えるのが条件です。区分だけを渡すと、買主に過大な安心や不安を与えてしまいます。
選ぶときの目安を、表にしました。
| 場面 | 向きやすい出し方 | 理由 |
|---|---|---|
| 買主が自分で家を建てる個人 | 位置を伝えるか、調査結果を渡す | 買主が自分で調べる前提で話ができ、売主が先に調べなくても進められる |
| 買取業者に売る | 位置を伝える(知っている事実は告知書にも) | 買い取る会社は、自社で調べる前提で価格を見ることがある。会社ごとに違うので、どこまで調べるかは聞いて確かめる |
| 予測図で高い区分に入っている | 調査結果を渡す道も考える | 売主が先に調べておくと、買主の質問に答えやすい |
| 売主が過去に地盤の異変を見聞きしている | どちらの道でも告知書に書く | 知っている事実は、調査をしなくても伝える |
この表は目安です。必ずこうなるという決まりではありません。買取の価格の見方は、土地の買取業者の選び方にまとめています。
なお都には、液状化対策について専門家に相談できる「液状化対策アドバイザー制度」があります。都の案内(2026年10月12日に確認)では、相談できるのは「都民(建て主、建物所有者等)」で、窓口相談も現地派遣も無料と書かれています。ただし、アドバイザーの仕事は情報提供と助言までです。地盤調査の結果にもとづく液状化の可能性の判断は、対象外とされています。土地だけを売る人が使えるかどうかは、案内に書かれていません。窓口の東京都都市整備局の建築企画課か、予約を受け付けている東京建築士会に、自分の場合を聞いてみてください。
手順4|告知書(物件状況報告書)に何を書くか
先に答えると、売主が知っている事実を、見たまま、分かる範囲で書くのが基本です。書き方の考え方は、契約不適合責任の記事の告知書の節と同じです。
こと
雨漏りやシロアリ、近隣とのトラブルなど、売主が知っている不具合や事実を書いて、買主に渡す書面です。書式は不動産会社が用意します。
渡された書式に、地盤や液状化に関する欄があるかを、まず見てください。欄があるなら、そこに書きます。欄がなくても、買主の判断に響きそうな事実は、備考に書き足せるかを不動産会社に聞きます。
告知書に
- 見聞きした事実:地震のあとに、庭や道路から砂まじりの水が出た、地面が沈んだ、建物が傾いた。こうした経験があれば、時期と場所を分かる範囲で書く
- 予測図の区分:東京の液状化予測図でどの区分に入っているか。版と確認日を添えて書く
- 地盤調査をした場合:結果の書類を添える。調査した時期と場所も書く
- 分からないこと:推測で「問題なし」と書かず、「不明」と書く
- 低い区分でも:「液状化の心配なし」とは書かない。「予測図では低い区分。保証ではない」と書く
古い家がある土地なら、傾きや沈みが、液状化のせいなのか、建物の傷みなのか、売主には区別がつかないことがあります。区別がつかないときは、そのまま「原因は不明」と書いて問題ありません。家の傷みの伝え方は、雨漏りや傾きがある家は、直さずに売れる?に詳しく書きました。
そして、買主から「この土地は液状化しますか」と聞かれたら、分かる範囲で正直に答えます。「予測図ではこの区分です。ただし目安なので、この土地のことは調べていません」。分からないことを分からないと言うのが、いちばん揉めにくい答え方です。
周辺区の土地を売るときは、区の記事とあわせて
液状化の起きやすさは、区の名前では決まりません。同じ区の中でも、場所で区分は違います。ですから、「何区だから」ではなく、手順1で自分の土地を見てください。
区ごとの売却の事情は、それぞれの記事にまとめています。川や海に近い低地を含む区の記事は、次のとおりです。
- 足立区:足立区の土地・狭小地の売却ガイド
- 葛飾区:葛飾区の土地・狭小地の売却ガイド
- 江戸川区:江戸川区の土地・狭小地の売却ガイド
- 墨田区:墨田区の土地・狭小地の売却ガイド
- 荒川区:荒川区の土地・狭小地の売却ガイド
土地に高低差や擁壁(がけを支える壁)がある場合は、地盤とは別の確認が要ります。がけ条例とは?高低差・擁壁のある土地の売り方と注意点も見ておきましょう。
予測図の区分のある土地が、いくらくらいで売れそうか。調査結果や予測図の位置を伝えたうえで、複数の会社の査定額を並べてみると、見方の幅がつかめます。
よくある質問
Q. 予測図で「液状化の可能性が高い」と出たら、売れませんか?
売れなくなる、とは言えません。予測図は、一帯の目安にすぎないからです。買主の受け止め方も人それぞれです。位置を正確に伝え、聞かれたことに正直に答えれば、検討に入ってもらえる土地です。
Q. 重要事項説明で、液状化は説明されないのですか?
宅地建物取引業法の施行規則には、液状化という言葉が出てきません。2026年4月1日施行の版で確かめました。ですから、決まった項目としては入っていません。買主が予測図を見て質問してくることはありえます。聞かれたら正直に答えてください。聞かれなくても、売主が知っている事実は告知書に書くのが基本です。
Q. 予測図で「低い」だった場合、「液状化の心配なし」と書いてよいですか?
書かないでください。都が、低い地域でも液状化が発生しないことを保証するものではないと書いています。「予測図では低い区分。保証ではない」と書くのが、正確です。
Q. 売る前に、地盤調査をしておくべきですか?
しなければ売れない、ということはありません。調査をするかどうかは、土地と買主の相手で決めます。調べるなら、悪い結果が出ても伝える覚悟を持ってから進めましょう。費用は調査会社によって違うので、見積もりを取って比べてください。
Q. 過去に砂まじりの水が噴き出したのを見たことがあります。どうすればよいですか?
知っている事実なので、告知書に書いてください。いつ頃、どこで見たかが分かれば添えます。正確な日付が分からなければ、「何年か前の地震のとき」で構いません。迷うときは、不動産会社や弁護士に相談してください。
まとめ
- 宅地建物取引業法の施行規則に、「液状化」という言葉は出てこない。水害ハザードマップは項目にあるが、液状化は入っていない
- ただし、項目にないことは、黙っていてよい理由にならない。聞かれたら正直に答え、知っている事実は告知書に書く
- 東京の液状化予測図で、自分の土地の位置を見て、版と日付つきで保存する。住所検索は丁目まで
- 予測図は目安で、個別の土地は地盤調査をしないと分からない。低い区分でも保証ではない
- 買主には、調査結果を先に渡すか、予測図の位置だけを正確に伝えるかを選ぶ
液状化のおそれがある土地を、どの順で整理して売りに出せばいいか。迷っている方は、売却の進め方の整理をお手伝いします。
出典:e-Gov 法令検索「宅地建物取引業法施行規則」(法令ID 332M50004000012、版ID 332M50004000012_20260401_507M60000802002、施行日 2026年4月1日。全文で「液状化」「地盤」は0件、「水防法」は水害ハザードマップに関する3件)と「宅地建物取引業法」(版ID 327AC1000000176_20260401_507AC0000000068、同じく「液状化」「地盤」は0件)。東京都土木技術支援・人材育成センター「東京の液状化予測図」トップページ(2026年10月12日に確認した時点の最新版は令和7年度改訂版)、同「Q&A(よくある質問)」「液状化予測図作成の考え方」。宅地建物取引業法施行令(版ID 339CO0000000383_20260401_507CO0000000388)も同じ日に確認し、「液状化」「地盤」は0件。東京都「東京の液状化予測図を更新」報道発表(2022年3月29日、令和3年度改訂版の凡例と注意書き)。東京都都市整備局「建築物における液状化対策について」と、そこから案内されている「東京都液状化対策アドバイザー制度について」(PDF、2026年10月12日に確認)。文京区「建築物の液状化対策に関すること」。この記事では、地盤改良や地盤調査の費用、予測図の判定の割合、売主の説明義務の範囲は、動く数値または弁護士の判断になるため書いていません。

