形・法規の悩み

がけ条例とは?高低差・擁壁のある土地の売り方と注意点

本ページにはプロモーション(広告)が含まれています。

「うちの土地はがけ条例に引っかかるかもしれません」。不動産会社にそう言われて、初めて聞く言葉に戸惑った方もいるのではないでしょうか。がけ条例は、高低差のある土地に家を建てるときの、東京都の安全ルールのひとつです。道路や隣の土地との間に段差があり、古い石積みやブロックの壁で土を支えている。そんな土地は、この条例に関わることがあります。

この記事では、がけ条例の中身、擁壁の種類と確かめ方、費用が価格に与える影響、売り方までを順番に説明します。

結論
東京都建築安全条例(通称・がけ条例)では、高さ2mを超えるがけの近くに建てる場合、原則として擁壁の設置などが求められます。
古い擁壁や確認の記録がない擁壁は、安全性が確認できず、やり直しや建物の配置の工夫が必要になることがあります。
擁壁の種類・高さ・書類を事前に調べ、費用の見込みを踏まえて売却先を選ぶことが大切です。

擁壁とは?読み方と意味をやさしく解説

擁壁は「ようへき」と読みます。段差のある土地で、土が崩れないように支える壁のことです。道路や隣の土地との間に段差がある土地の端に、よく立っています。

材料はコンクリートのほか、石やブロックを積んだものもあります。古い土地では、石積みやブロックの壁が多く残っています。見た目は同じ「壁」でも、種類や作られた時期によって、安全性の見られ方が変わります。種類ごとの違いは「擁壁の種類と注意点」で説明します。

家を建てるときに、この擁壁がルールを満たしているかが問われます。そのルールが、次に説明するがけ条例です。

がけ条例とは(東京都建築安全条例)

東京都では、高さ2mを超えるがけの近くに家を建てるとき、原則として擁壁が必要です。これを定めているのが東京都建築安全条例で、一般に「がけ条例」と呼ばれています。がけ崩れから家と人の命を守るためのルールで、23区内でも高低差のある土地では、建て替えのたびに関わってくる決まりです。地盤の弱さが心配な低地の土地なら、液状化の予測図の見方と買主への伝え方もあわせて確かめてください。

あなたの土地道路・下の土地擁壁高さ2m超はがけ条例に注意
高低差と擁壁:高さ2mを超えるがけ・擁壁がある土地は、東京都建築安全条例(がけ条例)の確認が必要です。

がけの定義と対象になる範囲

条例が決めているのは、傾きの角度ではなく「がけ高」(がけの高さ)です。がけ高は、がけの下の端を通る「二分の一こう配」(水平に2進んで、高さが1上がる)の斜線を引き、その線を超える部分について、がけの下の端から一番高い場所までの高さをいいます(東京都建築安全条例)。そのため、単純な高低差の数字とは少しずれることがあります。「何度以上ならがけ」と角度で線を引けるものではないので、自分の土地が当たるかどうかは、断面図で測って確かめる必要があります。なお、次の節に出てくる「30度」は、擁壁が要らない場合の条件の数字で、がけの定義ではありません。

高さ2mを超えるがけの下端から、水平距離でがけ高の2倍以内に、建築物を建てる場合や、建築敷地を造成する場合が、この条例の対象です。この範囲なら、原則として高さ2mを超える擁壁を設ける必要があります。家を建てるときだけでなく、建築のために敷地を造成するときも条文に入っているので、土地だけを売る場合も無関係ではありません。

高さの2倍がけの下の端から、水平距離でこの内側に建てると、がけ条例の対象になる(高さ3mのがけなら6m以内が目安)

がけの上に建てる場合も、下に建てる場合も対象になりえます。細かい取り方は土地ごとに違うので、区の建築指導課で図面を見せながら確認するのが確実です(出典:東京都建築安全条例)。

擁壁を作らなくてよい場合

次のような場合は、高さ2mを超える擁壁を設けなくてもよいとされています。

  • 斜面の傾きが30度以下のもの、堅い地盤を切った斜面、特殊な工法のいずれかで、安全上支障がない場合(30度以下というだけで自動的に不要になるわけではありません)
  • がけの上に建てる場合で、がけや既にある擁壁の構造に悪い影響を与えないとき
  • がけの下に建てる場合で、家の主な構造を鉄筋コンクリート造か鉄骨鉄筋コンクリート造にするとき、または、家の位置ががけから相当の距離があり、がけが崩れても安全なとき

条文の言葉は幅があり、実際に使えるかどうかは審査で判断されます。どの方法が使えるかは、土地の状況と家の計画しだいなので、区役所の建築指導課か建築士に確認してください。

擁壁を作り直さない場合の建て方

擁壁のやり直しが難しいときは、家の側で対応する方法が考えられます。

がけの上に建てるなら、基礎を深くして、がけが崩れても影響を受けにくい深さまで下げる方法があります(深基礎)。がけの下に建てるなら、がけに面する部分を鉄筋コンクリート造にして、土砂が流れ込んでも耐えられるようにする方法です。もうひとつは、がけの高さの2倍の範囲の外まで、家を離して建てる方法です。

どれも建築費が上がるか、建てられる範囲が狭くなります。狭い土地では、家をがけから離すと、建てる場所がほとんど残らないこともあります。買い手は、どの方法をとるかを考えたうえで価格を決めます。

深基礎やRC造でどこまで対応できるかという具体的な基準は、区によって審査での運用が異なります。図面を持って、区の建築指導課か建築士に個別に確認してください。

擁壁の種類と注意点

擁壁は、いつ・どう作られたかで評価が変わります。今の一般的な鉄筋コンクリートの擁壁で記録もあれば安心ですが、古い石積みは注意が必要です。

擁壁の種類 特徴 売却での注意点
鉄筋コンクリート造(L型など) 現在の一般的な擁壁 確認の記録があれば評価されやすい
間知石・間知ブロックの練積み 石やブロックをコンクリートで固めた擁壁 高さや作り方によって安全性の確認が必要
大谷石積み 古い住宅地に多い 風化しやすく、やり直しを求められることがある
空石積み(石を積んだだけ) コンクリートで固めていない 安全性の確認が難しい
増し積み・二段擁壁 古い擁壁の上にブロックなどを積み足したもの 構造上の問題が指摘されやすい

擁壁の書類を確認する

高さ2mを超える擁壁を作るには、建築基準法にもとづく「工作物」の確認申請が必要です。確認済証や検査済証があれば、作られた時点で基準に合っていたことが分かります。

区域の指定によっては、宅地造成及び特定盛土等規制法(2023年5月施行、通称・盛土規制法。旧・宅地造成等規制法)にもとづく都道府県知事などの許可が必要な擁壁もあります。この許可を受けた擁壁は、工作物の確認とは別の手続きで安全性が確かめられています。

書類が手元にない場合は、区役所で記録が残っていないか確かめましょう。建築指導課などで住所と地番を伝え、「この擁壁の工作物の確認記録はありますか」「盛土規制法の許可を受けた擁壁ですか」と聞いてみてください。

がけの高さや勾配の測り方、現地で何をどう確かめるかは、姉妹サイトの崖条例の読み方と現地の確認手順で、測量の側から詳しく説明しています。

目で見て分かる危険のサイン

擁壁のここを見てください

  • ふくらんでいる、傾いている
  • 大きなひび割れがある
  • 水抜き穴がない、または詰まっている
  • 擁壁の上にブロック塀が積み足されている

当てはまるものがあれば、専門家に状態を見てもらうことをおすすめします。

擁壁のある土地で建て替えができるか、区役所で何を聞けばいいか迷ったら、調べる順番を一緒に整理します。

擁壁のやり直し費用と価格への影響

工事の範囲が分からないままだと、買い手は費用を多めに見込みます。擁壁の状態を事前に調べておくことが、値下がりを小さくする一番の近道です。

費用が大きくなりやすい理由

擁壁の作り直しは、高さ・長さ・工事のしやすさで費用が大きく変わります。特に高くなりやすいのは、次のような条件です。

  • 重機が入りにくい狭い道路や旗竿地
  • 隣地の建物がすぐ近くにある
  • 古い擁壁の撤去や、土の搬出が多い

金額は条件による差が大きく、一律の目安は示せません。売る前に費用をつかんでおきたいなら、何社かの施工会社から見積もりを取りましょう。

価格への影響

買い手は、擁壁の工事費や、家をがけから離すことで小さくなる分を考えて価格を決めます。工事の範囲が分からないと、多めに見込まれて価格は下がりがちです。反対に、擁壁の安全性が確かめられていれば、買い手の不安が減り、価格への影響を小さくできます。

買い手はここを見る

買い取る会社の担当者が擁壁のある土地を見るとき、最初に確認するのは検査済証の有無です。書類がそろっている土地は、そのまま計画を進められます。ない土地は、地盤調査や構造計算をやり直す前提で見積もりを組むので、その分だけ買取価格は低めになりがちです。「書類がないから買えない」のではなく、「書類がない分の手間を金額に織り込む」という考え方です。売る側が先に古い設計図や役所の記録を探しておくだけで、その手間が減り、価格の見え方も変わってきます。

高低差・擁壁のある土地を売る前に確認したいこと

確認したいのは、段差の高さ、擁壁の持ち主、書類、区域の指定の4つです。特に擁壁が誰の土地にあるかは、境界とあわせて見ておきましょう。

  1. 高低差とがけの高さ:どこに、どのくらいの高さの段差があるか
  2. 擁壁の所有者:擁壁が自分の土地にあるか、隣地にあるか(境界の確認)
  3. 擁壁の書類:確認済証・検査済証、盛土規制法の許可書の有無
  4. 区域の指定:土砂災害警戒区域などに入っていないか

ここに注意

擁壁が境界の上に建っていると、誰のものかがあいまいなことがあります。工事費を誰が負担するかにも関わるので、売る前に境界をはっきりさせておくと安心です。

境界がはっきりしないときにどう進めるかは、確定測量で境界を決める方法にまとめています。



境界が決まっていない土地は売れる?隣が協力しないときの進め方

土砂災害警戒区域(イエロー・レッド)に入っている土地を売るとき

自分の土地が入っているかは、東京都の公開情報や区のハザードマップで確かめられます。入っていた場合、イエローとレッドで売主に起きることが違います。レッドでも売れないわけではなく、制限の中身を先に知っておくことが大切です。

ことばの解説:土砂災害警戒区域

がけ崩れなどの土砂災害が起きたとき、住む人の命や体に危害が及ぶおそれがある区域として、東京都が指定した場所です。「警戒区域」は通称イエローゾーン、より危険度が高い「特別警戒区域」は通称レッドゾーンと呼ばれます。

イエローとレッドで、売主に変わること

東京都建設局の「用語の解説」ページ(2026年10月15日確認。ページの更新日は2026年9月14日)によると、2つの区域は次のように書き分けられています。

イエロー(警戒区域) レッド(特別警戒区域)
区域のイメージ 住む人の命や体に危害が及ぶおそれがある区域 建物がこわれ、命や体に著しい危害が及ぶおそれがある区域
取引のとき 不動産会社は、警戒区域内であることを重要事項説明で伝える義務がある このページには記載なし(「説明が要らない」という意味ではありません)
建築や開発 このページには書かれていない(「制限がない」という意味ではありません) 特定の開発行為は許可制。建物の構造にも規制がある

イエローでは、売る側がまず知っておくことは買主に「区域内です」と説明される点です。重要事項説明(契約の前に、物件の大事な条件を買主に説明する手続き)の対象だと、東京都のページに明記されています。

レッドでは、建てられる家の構造が規制されるので、買主は建築費や計画を考え直すことになります。そのぶん、価格や買い手の探し方に響く場合があります。ただし制限があるだけで、売れなくなるわけではありません。レッドの場合の重要事項説明や、構造規制の具体的な中身は、東京都のこのページには書かれていません。ページに書かれていないだけで、「説明がない」「規制がない」という意味ではありません。売る前に、区役所の建築指導課など建築を担当する窓口(課の名前は、この記事では区ごとには確かめていません)か建築士に、土地の地番を伝えて確かめてください。

ここに注意

がけ条例の擁壁の話と、土砂災害の区域指定は別のルールです。擁壁に問題がなくても、土地が警戒区域に入っていることがあります。両方を確かめておくと、買主への説明がぶれません。

23区のどこに指定があるか

同じく東京都建設局の「区市町村別指定状況」(基準日:令和8年8月26日現在。2026年10月15日確認)では、都全体で警戒区域が15,745箇所あり、そのうち特別警戒区域が13,766箇所とされています。

23区で指定の多い区は、港区(208箇所、うち特別警戒区域136)、板橋区(152、同118)、大田区(111、同65)、文京区(105、同62)、世田谷区(104、同81)、北区(97、同71)の順です。新宿区54、品川区48、千代田区40、目黒区26と続きます。

一方で、足立区・江戸川区・葛飾区・江東区・墨田区・中央区は、指定が0箇所(「区域指定要件無し」)となっています。なお、港区・板橋区・文京区・世田谷区・品川区・千代田区・目黒区には、他の区市町村との境界をまたぐ指定区域が、上の数字とは別にあります(表の「*」印。2026年10月16日に東京都建設局のページで確かめました)。この7区では、実際の数は表の数より多くなります。

この数字は、いつまでも同じではありません。東京都は、区域の指定が終わったあとも、おおむね5年ごとに基礎調査(がけの地形などの調べ直し)を行って区域を指定するとしています。地形が変わった場合などは、指定の箇所数が変わる可能性があるともされています。売るときは、その時点の最新の情報で確かめてください。上の数字は、基準日時点のものです。

世田谷区・板橋区で売るときの全体の流れは、世田谷区の売却ガイドや板橋区の土地・狭小地の売却ガイドでもまとめています。

売る前にやること

  1. 東京都の公開情報や、区のハザードマップで、土地が区域に入っているかを見る。水害のほうの見方は、ハザードマップで浸水が想定される土地を売るときに書いています。
  2. 入っていたら、イエローかレッドかを区役所で確かめる。
  3. レッドなら、区役所の建築指導課か建築士に、建物の構造の規制がどこまでかかるかを聞く。
  4. 売る相手に、区域内であることを最初に伝える。買い手は、擁壁の状態とあわせて価格を考えます。

この節のポイント

イエローは「区域内です」と説明される土地、レッドは「建てられる家の構造が規制される」土地です。どちらも先に調べて、先に伝えるほうが、あとで話が止まりません。

高低差・擁壁のある土地の売却先の選び方

擁壁に問題があるなら、工事まで含めて計画できる相手が向いています。問題がなければ、ふつうの土地と同じく仲介も選べます。

擁壁の状態別・売り先の考え方

擁壁に問題がない

  • 一般の買い手への仲介も検討できる

やり直しが必要

  • 工事を含めて計画できる建売業者・買取業者が候補

古家もある

  • 解体と擁壁工事をまとめて考える

古家がある場合の解体費は、木造住宅の解体費用で費用の決まり方を紹介しています。



木造の解体費用は何で決まる?見積もりの取り方と狭小地の注意

擁壁の状態を伝えずに売ると、あとで責任を問われるおそれがあります。契約書での責任の分け方は、契約不適合責任の免責の考え方で解説しています。

建て替えできることが確かめられたら、複数の会社の査定額を比べてみましょう。形や条件が、価格にどのくらい響くかが見えてきます。

よくある質問

Q. がけ条例に該当すると、そもそも家を建てられませんか?

建てられなくなるわけではありません。擁壁を設ける、深基礎にする、がけから離して建てるなど、いくつかの方法があります。どれが使えるかで、建てられる家の大きさや費用が変わってきます。

Q. 擁壁をやり直さないと売れませんか?

やり直さなくても売ることはできます。ただ、買い手が工事費を見込むため、価格は下がりやすくなります。売主が工事をするか、今のまま売るかは、見積もりと査定を並べて決めましょう。

Q. 高さ2m以下の段差なら、がけ条例は関係ありませんか?

がけ条例の対象は、原則として高さ2mを超えるがけです。とはいえ、2m以下でも擁壁の状態が悪ければ、家の安全に関わります。区の窓口や建築士に確認しておくと安心です。

Q. 隣地の擁壁が崩れそうです。どうすればよいですか?

まず擁壁の持ち主を確かめ、管理について話し合う必要があります。費用の負担などで争いになるときは、弁護士に相談してください。

Q. 道路より土地が高い場合、車は停められますか?

道路との段差が大きいと、駐車場を作るには擁壁の一部を切り、土を掘り下げる工事が要ります。費用がかかるうえ、擁壁の構造にも影響します。駐車場を作れるかどうかは買い手の評価に関わるので、建築士や業者に確かめておくと説明しやすくなります。

まとめ

  • がけ条例(東京都建築安全条例)は、高さ2mを超えるがけの近くに建てる場合、原則として擁壁を求めるルールです。
  • 対象範囲は、がけの下端からがけの高さの2倍以内が目安です。
  • 大谷石積みや増し積みなど、古い擁壁はやり直しを求められることがあります。
  • 擁壁の検査済証・所有者・区域の指定を、売却前に確認しましょう。
  • 工事費を含めて計画できる業者など、状態に合った売却先を選ぶことが大切です。

旗竿地で段差もある場合は、旗竿地が売れない理由と売り方もあわせてご覧ください。高低差や擁壁のある土地をどう売るか迷ったら、調べることと売り先の候補を一緒に整理します。

この記事の監修者:十坪とつぼさん(宅地建物取引士)
東京23区で土地の仕入れ営業を担当する宅地建物取引士。狭小地・旗竿地・古家付き土地など、小さくて売りにくい土地を日々見ている。

LINEで相談 PR今すぐ査定