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不動産を売る前提の遺産分割協議書|共有名義か代表者名義か、贈与税の注意

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「遺産分割協議書を作りたい。でも、どうせ売るのだから、名義はどうすればいいのだろう」。相続した実家や土地を売る予定の方から、よく出る疑問です。

協議書の文例は、司法書士や相続の専門サイトにたくさん載っています。この記事には文例を載せません。扱うのは、不動産を売る前提のときだけ問題になる、1つの分かれ道です。全員の共有名義のまま売るのか、代表者1人の名義にして売るのか。その違いと、お金を分けるときの贈与税の注意をまとめます。

結論
売ってお金で分けるなら、名義は「全員の共有」と「代表者1人」のどちらでも進められます。違いが出るのは、売買契約や引き渡しの手間と、代金を受け取ったあとの税金の扱いです。
代表者1人の名義にするときは、売ってお金で分ける(換価分割)約束を残し、代金を実際に分けることが大切です。書き方と税の扱いは、司法書士と税理士に確かめてください。

売る前提なら、協議書で最初に決めるのは「名義」

売るつもりの不動産でも、協議書を作る段階では、まず「売るまでの間、誰の名義にするか」を決めます。名義を決めないと、相続登記(亡くなった人から相続人へ、登記の名義を変える手続き)が進みません。

名義の決め方は、大きく2つあります。

道路1つの土地兄1/3姉1/3弟1/3全体を売るには全員の同意が必要
共有名義:土地全体を売るには、共有者全員の同意が必要です。自分の持分だけを売ることはできます。

1つ目は、相続人全員の共有名義です。図のように、例えば3人なら3分の1ずつ名前が載ります。2つ目は、代表者1人の単独名義です。売るためだけに、いったん1人に集めます。

売ってお金で分けるという考え方そのものは、相続した土地を売ってお金で分ける換価分割で説明しています。この記事は、その中の「名義」の部分を掘り下げたものです。全体の手順(相続人の確定から確定申告まで)は、相続した土地を売る流れにあります。

ことばの解説:遺産分割協議書

相続人全員で話し合って決めた「誰が何を相続するか」を書面にしたものです。全員の署名と実印の押印、印鑑証明書を添えるのが一般的で、不動産の相続登記の書類にもなります。

共有名義のまま売る場合

全員の共有名義にする方法は、協議書がもっとも作りやすい形です。「話がまとまらないので、とりあえず全員の持分にしておく」という場面でも選ばれます。

ただ、売るときは名義人の全員が関わります。買い手との売買契約も、引き渡しも、本人の意思確認や書類がそれぞれに必要です。

  • 全員の署名・押印、印鑑証明書などの書類がそろう必要がある
  • 遠方や海外に住む人がいると、書類の郵送に時間がかかる
  • 途中で相続人の1人が亡くなると、その人の相続人が加わって、人数が増える
  • 1人でも「やっぱり売りたくない」となると、売るのが止まる

共有のままの注意点は共有名義の土地を売るにはに詳しく書いています。また、相続人に認知症などで判断が難しい人がいる場合は、そのままでは契約ができません。使う制度は成年後見と家族信託の使い分けを見てください。

代表者1人の名義にして売る場合(単独登記)

代表者1人の名義にすると、売るときの手続きは代表者を中心に進めやすくなります。契約も引き渡しも、名義人である代表者が行えるからです。

その代わり、ほかの相続人は名義に載りません。売れたお金を、あとで分ける約束に頼る形になります。だから、約束を協議書に残しておく必要があります。協議書には、少なくとも次の内容を決めておくと、あとで困りにくくなります(書き方は司法書士に確認してください)。

  • 売ってお金で分けること(換価分割であること)
  • 売却代金から、売るための費用を引くこと
  • 残ったお金を、誰がどの割合で受け取るか
  • 売れなかったときや、価格の下げ方をどうするか

売るときの名義の違い(不動産の手続きの面)

全員の共有名義

  • 契約・引き渡しに名義人全員が関わる
  • 協議書は作りやすい
  • 1人の反対や不在で止まりやすい
  • 代金は各人の持分に応じて受け取る

代表者1人の名義

  • 契約・引き渡しは代表者が進めやすい
  • 協議書に、売って分ける約束を詳しく書く必要がある
  • 代金がいったん代表者に集まる
  • 分け方の書き方で、税金の見え方が変わる

どちらが良い、とは言い切れません。家族の仲、住んでいる場所、代表者を誰にするか、で答えは変わります。相続人どうしの信頼があるなら代表者名義が進めやすく、信頼しきれないなら共有のほうが安心、という見方もできます。



共有名義の土地を売るには|全員の同意が必要な理由と進め方

代表者名義にして分けるときの贈与税の注意

代表者1人の名義で売ると、代金は代表者の口座に入ります。そこから、ほかの相続人に渡すことになります。このお金の渡し方が「贈与」と見られると、贈与税が心配になります。

国税庁の質疑応答事例「遺産の換価分割のための相続登記と贈与税」に、近い場面の説明があります。相続人の1人の名義で相続登記をしたのが、単に売るための便宜であり、売れた代金が、遺産分割の調停の内容に従って実際に分けられるなら、贈与税の課税は問題にならない、というものです(国税庁・質疑応答事例)。

つまり、見られるのは「名義が1人だったか」より、名義を1人にしたのは売るための便宜で、代金が約束どおり実際に分けられたかです。

ただし、この事例は「調停」の場合です。相続人どうしの協議書で、同じ書き方なら同じ扱いになるのか、協議書にどう書けば足りるのかは、この記事では確かめられていません。協議書の書き方によっては贈与と見られるおそれがあるかどうかも、確かめられていません。ここは税理士や税務署に、案を見せて確認してください。

ここに注意:あくまで一般的な考え方です

国税庁の事例は、特定の事実関係を前提にした一般的な回答で、あなたの場合にそのまま当てはまるとは限りません。協議書の書き方、登記のしかた、お金を渡すタイミングで見られ方が変わることがあります。売る前に、協議書の案を持って税理士に確認してください。この記事は、税金の判断をするものではありません。

もう1つ、売ったあとの所得税・住民税の申告も、取得割合の決め方で話が変わります。国税庁の質疑応答事例(未分割遺産を換価したときの譲渡所得の申告)では、売るときまでに代金の取得割合を決めてあれば、その割合に応じて各相続人が申告します。決めていなければ、法定相続分に応じて申告するのが原則です。ただし、申告期限までに代金が分けられ、相続人全員がその取得割合で申告すれば、認められます(国税庁・質疑応答事例)。名義が代表者1人のときに、この扱いがそのまま使えるかは、事例が触れていないため、税理士に確認してください。申告の手順は、土地を売った翌年の確定申告で説明しています。税金の全体像は土地売却の税金と費用をご覧ください。

便宜名義を1人にしたのは「売るため」で、代金は約束どおり分ける。ここが贈与税を考えるときの分かれ道

名義を決めたあと、売るまでの順番

名義が決まったら、相続登記をしてから、売り出すのが基本の順番です。

協議書から売却までの流れ(名義を決める場面)

  1. 売って分ける方針を全員で決める名義(共有か代表者か)と、価格・期限の決め方を話し合う
  2. 協議書を作る書き方は司法書士・弁護士に確認。全員が署名・押印する
  3. 相続登記をする法務局で、決めた名義に変える
  4. 売り方を決めて売り出す査定を比べ、仲介か買取かを選ぶ
  5. 引き渡しと代金の分配協議書で決めたとおりに分ける

相続登記には期限があり、売る前にやっておくべき理由もあります。相続登記の義務化と、名義変更をしないと売れない理由で確認してください。登記に使う書類や、登記識別情報(昔の権利証にあたるもの)が見つからないときの対処は、土地売却の必要書類一覧(権利証をなくしたときの対処つき)にまとめています。

売る前に価格と期限を決めておかないと、代表者が1人で値下げを決めて、あとで揉める原因になります。決め方は換価分割の記事にあるので、あわせて見ておくと安心です。

協議書を作る前に、全員で確かめること

  • 売るまでの名義を、共有と代表者のどちらにするか
  • 代表者にする場合、誰に、どこまで任せるか
  • 売却代金から引く費用(測量・解体・仲介手数料など)の範囲
  • 代金を分ける割合と、お金を渡す時期
  • 売れなかったときや、値下げするときの決め方
  • 協議書の案を、司法書士と税理士に見てもらったか

協議書を作る前に、売り方の選択肢や、決めておく順番を整理したいときは、手順を整理します。

協議書がまとまらないとき・売れないとき

協議書は、相続人全員がそろって合意しないと成立しません。1人でも欠けた協議書は、そのままでは使えません。まとまらないときは、家庭裁判所の調停という手続きがあります。進め方は弁護士に確認してください。

親が亡くなってから長い年月がたっているときは、分ける割合のものさしが変わる期限もあります。相続から10年たった未分割の実家で書きました。

共有のまま話が止まっているときは、共有物分割請求の進み方に、売却に応じない共有者がいるときの選択肢をまとめています。

また、売り出したのに買い手が付かないときは、売り方を見直します。仲介で時間がかかっているなら、業者の買取を比べる方法もあります。選び方は土地の買取業者の選び方にまとめています。



実家の売却|相続・兄弟・税金と、後悔しない進め方

誰に何を相談するか

協議書の書き方と贈与税は、不動産会社に聞いても答えが出せない領域です。聞く先を分けると、遠回りが減ります。

聞きたいこと 相談先
協議書の書き方、相続登記 司法書士
相続人どうしの合意、調停 弁護士
贈与税、売ったあとの税金 税理士
売り出し価格、仲介か買取か、期間 不動産会社

不動産会社の選び方や、一括査定の使い方は、一括査定は狭小地に向いているかで、仲介手数料の確かめ方は仲介手数料の上限は定価ではないで説明しています。当サイトは、売却の進め方の整理や売り方の比較の窓口です。贈与税や協議書の文言は判断できないので、上の表の専門家に確認してください。

名義を決めたら、売る前に複数の会社の査定額を並べておくと、価格を決める共通の資料になります。

よくある質問

Q. 売る前提の協議書は、普通の協議書と何が違いますか?

形式は同じです。違うのは、「売って、そのお金を分ける」という内容を書くところです。名義を共有にするか代表者にするかによって、書く内容が変わります。文例は専門家が作成するものなので、司法書士か弁護士に確かめてください。

Q. 代表者1人の名義にして売ると、贈与税がかかりますか?

国税庁の質疑応答事例では、1人の名義で相続登記をしたのが売るための便宜で、代金が調停の内容どおり実際に分けられるなら、贈与税の課税は問題にならない、とされています。ただし、これは調停の場合の事例です。協議書の場合の書き方や扱いは、この記事では確かめられていないので、必ず税理士か税務署に確認してください。

Q. 全員の共有名義にしてから売るのと、どちらが早いですか?

書類がそろいやすいのは、代表者1人の名義です。ただ、協議書に書く内容が増えます。共有名義は協議書が作りやすい反面、売るときに全員の手続きが必要になります。早さだけで選ばず、家族の状況で決めてください。

Q. 協議書を作る前に不動産会社へ相談してもよいですか?

できます。売れそうな価格や、期間の見通しを先に聞いておくと、名義や分け方を話し合いやすくなります。ただし、協議書の文言や税金は、不動産会社ではなく専門家に確認してください。

Q. 相続人の1人と連絡が取れません。

協議書は全員の合意が必要なので、連絡が取れないままでは進められません。住所の調べ方や、家庭裁判所の手続きは、弁護士か司法書士に相談してください。

まとめ

  • 売る前提の協議書で最初に決めるのは、売るまでの名義(全員の共有か、代表者1人か)。
  • 共有は協議書が作りやすいが、売るときは全員の手続きが必要になる。
  • 代表者1人の名義は売る手続きが進めやすいが、売って分ける約束を協議書に残す必要がある。
  • 代表者名義にするときは、「売るための便宜の名義」で「代金を約束どおり実際に分ける」ことが、贈与税を考える分かれ道。協議書の場合の扱いは確かめられていないので、税理士に先に確認する。
  • 協議書の文言は司法書士・弁護士、税金は税理士、売り方と価格は不動産会社と、窓口を分ける。

売る前に何を決めておけばよいか、売り方の比べ方で迷ったときは、整理をお手伝いします。

この記事の監修者:十坪とつぼさん(宅地建物取引士)
東京23区で土地の仕入れ営業を担当する宅地建物取引士。狭小地・旗竿地・古家付き土地など、小さくて売りにくい土地を日々見ている。

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