古家・空き家・相続

実家の売却|相続・兄弟・税金と、後悔しない進め方

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親が年を重ねてくると、「いずれ実家をどうしようか」という話が家族の中に出てきます。狭い土地に建つ古い木造の家なら、「そもそも売れるのか」「今売るべきか、まだ先でいいのか」も気になるところでしょう。ネットで調べると「実家 売却 後悔」「実家 売れない」という言葉も目に入り、余計に不安になった方もいるかもしれません。

実家を売る時期は、大きく分けると2つしかありません。親が住んでいるうちに親が売るか、相続した後に子が売るかです。どちらを選ぶかで、使える税金の特例も、必要な手続きも変わってきます。この記事では、その2つの違いを軸に、兄弟姉妹での分け方、認知症になったときの備え、後悔しないための準備を順番にお伝えします。

なお、片付けや相続の手続きも含めて、実家を手放すまでの全体の流れを先に知りたい方は、実家じまいの全体像をまとめた記事を先に読むと、この記事がその中のどの部分にあたるかが分かりやすくなります。

結論
実家を売るタイミングは、親が売主になるか、相続後に子が売主になるかで大きく分かれます。
どちらになるかで、使える税金の特例・必要な手続き・家族の関わり方が変わります。
後悔の多くは「準備不足のまま急いで決めたこと」から生まれるので、名義・境界・家族の意向を早めに確認しておくのが一番の備えです。

実家の売却は「誰が売るか」で大きく変わる

答えから言うと、分かれ目は「誰が売主になるか」です。親の名義のまま親が売るのか、相続で名義を受け継いだ子が売るのか。この違いで、税金・手続き・家族の関わり方が変わります。

実家を売る2つのタイミング

親が住んでいるうち

  • 売主は親(名義人本人)
  • 居住用財産の3,000万円特別控除を使える可能性
  • 親本人の意思確認と署名が必要

相続した後

  • 売主は相続して名義を得た子
  • 相続空き家の3,000万円控除などを使える可能性
  • 相続登記と、相続人全員の合意が必要

もう少し細かく並べると、次のようになります。

項目 親が住んでいるうち・存命中に売る 相続後に売る
売主 親(名義人本人) 相続して名義を得た子
主な税金の特例 居住用財産の3,000万円特別控除(親が住んでいた家の場合) 相続空き家の3,000万円控除、取得費加算の特例など
必要な手続き 親本人の意思確認・署名・本人確認 相続登記、遺産分割協議
主なリスク 親の転居先の確保、判断能力の低下 相続人間の意見の対立、空き家期間の管理負担
家族の関わり方 親の意思が中心 相続人全員の合意が必要

どちらが正解というものはありません。親の住まいの予定、健康状態、兄弟姉妹の関係、税金の特例の条件。これらを合わせて考えたうえで決めることになります。

一人っ子が実家を売るとき|兄弟がいない分、何が楽で何が重いか

先に答えを言うと、一人っ子は「揉める相手がいない代わりに、決める人も手伝う人も自分だけ」という立場です。兄弟がいる場合と比べて、話し合いの手間は減ります。その分、判断と手続きの重さが自分に集まります。

楽になること:相続人が自分だけなら、話し合いと同意が要らない

兄弟がいる場合は、実家を誰が継ぐか、売るか残すかを相続人どうしで決めます。民法では、相続人が複数いるとき、遺産は相続人どうしの話し合い(協議)で分けるのが基本です。相続人が自分ひとりだけなら、分け方を決める相手がいません。

名義の面でも違いがあります。相続人が数人いると、相続財産はいったん全員の共有になります。共有のまま売るには、共有者の同意が必要です。相続人が自分ひとりで単独で相続した実家は、共有になりません。売る・売らない、いつ売るか、いくらで手放すかを、自分ひとりで決められます。

重くなること:判断と手続きが自分に集まる

兄弟がいれば、名義変更は誰がやるか、片付けは誰が行くか、業者との連絡は誰が受けるかを分け合えます。一人っ子は、これが全部自分の仕事です。相続登記、荷物の片付け、不動産会社とのやり取りが同じ時期に重なります。

もう一つは、相談する相手が身内にいないことです。兄弟がいれば「この金額で売って良かったと思う?」と聞けますが、一人っ子にはその相手がいません。売り方や価格を確かめる相手を、自分で用意する必要があります。司法書士・税理士・不動産会社と、役割ごとに窓口を分けておくと、判断を一人で抱え込まずに済みます。進め方の全体は実家じまいの手順をまとめた記事で順番に追えます。

親の介護と売却の判断が、同じ時期に来ることもあります。親が施設に入る費用のために実家を売るかどうかを、介護の手配をしながら決める形です。片付けの費用の見当は遺品整理の費用と、片付けずに売る選択で確かめられます。

差が出やすいのは、親が認知症になったときの備えと手続きを、自分ひとりで進めることです。兄弟がいれば、成年後見の申立てや家族信託の相談を一緒に進められます。一人っ子は、動き出す人も、準備を整える人も自分になります。備え方は、この後の「認知症になると実家は売りにくくなる」の節にまとめています。成年後見と家族信託の使い分けは、親が認知症で実家を売れないときの記事でも整理しています。

一人っ子と兄弟がいる場合の違い

  • 楽になる:遺産分割の話し合い、共有名義、全員の同意
  • 重くなる:手続きの担い手、相談相手、親の判断能力の低下への備え

一人っ子でも、共有になることがある

一人っ子でも、実家がいつも自分ひとりの名義になるとは限りません。たとえば、実家の名義人だった親が先に亡くなり、もう一方の親が存命の場合です。配偶者は常に相続人になるので、相続人は「子」と「残った親」の2人になります。この2人で遺産分割の協議をしないまま、法律で決まった相続分(子と配偶者で各2分の1)で登記をすると、実家は2人の共有になります。協議で「子が単独で取得する」と決めれば、自分ひとりの名義にもできます。

どの形になるかは、名義人が誰か、誰が相続人かで変わります。まず登記簿で名義人を、戸籍で相続人を確かめるのが先です。手順は相続登記と売却の関係の記事にまとめています。

親が元気なうちに実家を売るときのポイント

親が売主なら、まず確かめたいのは税金の特例です。そして、売る手続きには親本人の意思確認が欠かせないことも覚えておいてください。

親が住んでいる間に売るなら「居住用財産の特例」を確認

親が自分で住んでいる家やその敷地を売るときは、税金が軽くなる制度を使える可能性があります。売って出た利益(譲渡所得)から控除を受けられる制度です。正式には「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除」といいます。親が店を営んでいた家なら、控除の扱いが変わることがあるので、店舗併用住宅の売却と3,000万円控除も見ておいてください。

親が施設に入るなどして家に住まなくなった後でも、対象になり得ます。ただし住まなくなってからいつまでに売るかで使えるかどうかが変わり、その間に家を人に貸していた場合などは扱いも変わります。使えるかどうかは個別の事情しだいなので、税理士か税務署に確認してください。

親本人が契約の場に立ち会う必要がある

売主は、名義人である親です。子が代わりに動く場合でも、親本人に「売る意思があるか」を確かめる手順は省けません。登記を進める司法書士は、本人の意思を確かめられなければ手続きに進めません。そのため、本人と会って意思と本人確認をする場が設けられます。

委任状があれば、子が手続きを代わりに進められる場面もあります。ただし、それは親の意思がはっきりしていることが前提です。

認知症になると実家は売りにくくなる

いちばん気をつけたいのが、親の判断能力の低下です。判断能力がない状態では売買契約そのものが無効になります。そうなる前に、備えの方法を知っておきましょう。

意思能力がない状態での売買契約は無効

自分がした行為の結果を判断できる力を、民法では「意思能力」と呼びます。これがない状態で結んだ契約は無効です。家族が代わりに署名しても、有効な契約にはなりません。

司法書士も、本人の意思確認ができなければ登記の手続きを進められません。実務の上では、ここで売却がほぼ止まってしまいます。

ここに注意

家族が親の代わりに署名しても、売買は有効になりません。親の物忘れが気になり始めたら、元気なうちに家族で方針を話し合うことが何よりの備えです。

成年後見制度を使う場合

判断能力が低下した後に売るなら、家庭裁判所に申し立てて成年後見人を選んでもらう方法があります。ただし、次の点は知っておいてください。

  • 後見人は「本人の利益」のために財産を管理するため、家族の都合だけでは売却できない
  • 本人が住んでいた家(居住用不動産)を売るには、家庭裁判所の許可が必要
  • 一度始まると、原則として本人が亡くなるまで続く
  • 専門職が後見人になった場合は、継続的に報酬がかかる

申立てから後見人が選ばれるまでにも、一定の期間がかかります。申立てから審判が出るまでには、時間がかかります。期間は家庭裁判所や事案によって違うので、申立ての窓口(家庭裁判所)で確かめてください。この記事では、期間の目安は書いていません。今すぐ実家を売る予定がなくても、時間がかかることを見込んで早めに動き出すと安心です。

親の様子を見ながら、いつ・どう売るのがいいか。家族だけで決めきれないときは、実家の状況に合わせた進め方を一緒に整理します。

家族信託という選択肢(概要)

認知症への備えとして、「家族信託」という方法もあります。

ことばの解説:家族信託

親が元気なうちに、実家の管理や売却の権限を子に託しておく契約です。託す親を「委託者」、託される子を「受託者」といいます。親の判断能力が低下した後も、子が契約の範囲内で売却を進められます。

便利な仕組みですが、契約内容の設計は簡単ではありません。専門家への費用もかかり、税金の扱いにも注意点があります。検討するなら、信託に詳しい司法書士や弁護士、税理士に相談してください。この記事では概要の紹介にとどめます。親の状態ごとに何ができるかは、親が認知症で実家を売れないときで詳しく整理しています。

相続後に実家を売る場合のポイント

相続後に売るなら、最初の一歩は名義を子に変えることです。そのうえで、空き家の特例が使えるか、兄弟姉妹との話し合いをどう進めるかを考えます。一人っ子で相続する場合も、確認すべきことは共通しています。

まず相続登記が必要

親が亡くなった後は、実家の名義を相続人に変える「相続登記」をしないと売れません。2024年4月からは、この相続登記が義務になりました。

3年以内相続で取得したことを知った日から、相続登記を申請しなければならない期限

期限や手続きの詳しい内容は、義務化された相続登記と売却の関係にまとめています。

相続空き家の3,000万円控除

親が一人で住んでいた家を相続して売る場合も、条件を満たせば税金が軽くなることがあります。制度の正式名は「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除」です。

判定に関わるのは、おおよそ次の4つです。それぞれに細かい線があり、改正も入っているので、この記事では具体的な数字を書きません。

  • 家が建てられた時期
  • 耐震改修か解体をするかどうか、それを誰がいつ行うか
  • 相続してからいつまでに売るか
  • 売った金額

期限を過ぎると使えなくなるので、相続したら早めに税務署か税理士に確認しておくと安心です。相続した人が何人いるかで控除額が変わる決まりもあるので、兄弟姉妹で分けて相続するときは、その点もあわせて聞いてください。確かめ方と相談先は相続空き家の3,000万円控除にまとめています。



空き家の3,000万円控除|使えるかどうかの確かめ方と相談先

親が老人ホームに入所していた場合の特例

親が亡くなる前に老人ホームなどの施設に入っていた場合でも、相続空き家の3,000万円控除を使えることがあります。ただし、介護の認定を受けていたか、入所した後にその家をどう扱っていたかなど、判定に関わる条件がいくつもあります。

この特例は要件が細かく、改正も入っています。該当するかどうかは書類での証明も必要になるため、使えるかどうかは税務署か税理士に確認してください。施設に入った時期や、そのあと家を貸したかどうかが分かる資料を持っていくと、話が早くなります。

兄弟姉妹で相続する場合・一人っ子で相続する場合

相続人が複数いると、誰が実家を相続するのかを話し合う必要があります。売って代金を分ける「換価分割」という方法を選ぶ家族も多いでしょう。共有名義のまま売るなら、相続人全員の同意が必要です。

一人っ子で相続する場合、兄弟間の話し合いは要りません。ただし、もう一方の親が存命なら、その親との遺産分割協議は必要になります。名義・管理・売却の判断をすべて一人で背負うことになるので、早めに専門家へ相談できる窓口を見つけておくと心強いはずです。

話し合いから売却までの順番は、相続した土地を売るまでの流れも参考にしてください。

実家が「売れない」と言われる理由

結論から言うと、実家が売れにくいのは建物の古さと、買い手が見る条件(接道・広さ・立地)が合っていないことが主な理由です。事前に条件を確かめておけば、手の打ちようがあります。

売れにくい実家に共通する3つの特徴

「実家 売れない」で検索が多いのも事実ですが、理由の多くは次の3つに集まります。

  • 建物が古く、そのままでは買い手が住宅ローンを組みにくい
  • 敷地が狭い、道路との接し方に不安があるなど、建て替えの条件がはっきりしない
  • 実家への思い入れから、相場より高い価格で売りに出している

23区の周辺区では、実家の敷地がもともと狭いケースも少なくありません。狭小地ならではの売り方は狭小地は売れる?売却の3つの方法にまとめています。建物を残すか解体するかの判断は、古家付きのまま売るか、解体して売るかを参考にしてください。

買い手の見方:古い実家はここを見る

買い取る会社の担当者が、親の代からの実家を買い取りの対象として見るとき、まず確認するのは建物の傷み具合と、更地にしたときに何が建つ土地かです。同じ築年数でも、雨漏りやシロアリの跡があるかどうかで解体するかの判断が変わりますし、道路の付き方によっては、今と同じ大きさの家がもう建てられないこともあります。「実家だから」という思い入れの分だけ相場より高い価格を希望されることもありますが、買い手が見る条件はほかの土地と同じです。

実家を売って後悔しやすい場面と、避け方

後悔の話は、大きく4つの場面に分けられます。値段、片付け、家族との話し合い、気持ちの整理です。どれも、疲れているときや急いでいるときに起きやすいものです。自分に近い場面から読んでみてください。

後悔しやすい4つの場面(避け方の要点)

値段・片付け

  • 査定は複数社で比べる
  • 片付けは期限を決めて分けて進める

家族・気持ち

  • 売る前に兄弟姉妹と方針を共有する
  • 親の物は、手放す前に「残す物」を決める

値段:急いで決めて、安く売ってしまった

値段は、後悔につながりやすい話のひとつです(どれくらいの人がそう感じるかの調査は、確認していません)。きっかけになりやすいのは、片付けや管理に疲れて「もう早く終わらせたい」と思ったこと、最初に来た会社の提案をそのまま受けたことです。実家は家族で使ってきた家なので、相場と比べる習慣がなく、金額の良し悪しが分かりにくい面もあります。

避けるには、決める前に売り方ごとの金額の見え方を知っておくことです。一般に、仲介は時間がかかる代わりに価格が高くなりやすく、業者の買取は早い代わりに価格が低くなりやすい、という違いがあります(物件によって逆になることもあります)。査定は1社で決めず、複数社の金額と、その理由の説明を聞き比べてください。一括査定の使い方は一括査定サイトのメリット・デメリット、買取業者を選ぶときの確認点は買取業者の選び方にまとめています。

片付け・遺品:想像より時間と手間がかかった

実家の片付けは、始めてみると思った以上に長引きます。家財の量に加えて、仏壇や写真、書類、貴重品など、すぐには捨てられない物が次々に出てくるからです。遠方から通っている場合は、通う回数だけ交通費と時間もかかります。庭に祠やお墓が残っている場合は、祠やお墓がある土地の売却で、誰に相談するかも整理しています。

避けるには、最初に「いつまでに終えるか」と「誰が何をやるか」を決めておくことです。全部を家族だけでやろうとせず、大きな家具や量の多い物は業者に頼む、と線を引く手もあります。部屋ごとの順番や、片付けと相続手続きをどう並行させるかは、実家じまいの進め方で詳しく整理しています。この記事では、後悔を避けるための考え方にとどめます。

兄弟・親族:話す順番を間違えた

兄弟姉妹の間で揉める原因は、金額だけでなく話す順番にもあります(どちらが多いかの調査は、確認していません)。たとえば、一人が先に査定を取り、売る前提で話を持ち込むと、ほかの兄弟は「もう決まっている」と受け取ります。実家に住み続けている人、介護を担ってきた人、遠方にいる人では、実家への思いも負担も違います。

避けるには、先に価格の話をせず、まず「実家をどうしたいか」の気持ちを、全員から順に聞くことです。売る・残す・誰かが住む、の3択を並べ、それぞれの手間と費用を紙に書き出して見せると、感情のぶつかり合いを減らせるかもしれません。相続人が複数いるとき、実家は共有名義のまま売るか、売って代金を分けるかで進め方が変わります。全員の同意が必要になる仕組みは共有名義の土地を売るにはで、相続の手順は相続した土地を売る流れで確かめられます。家賃を取らずに兄弟や親族が実家に住んでいる場合の法律上の位置づけと売る順番は、親族が無償で住んでいる実家の売り方に書きました。

話し合いが進まないときは、無理に決めずに、専門家を間に入れる方法もあります。実家の売却で何から手をつけるか分からない場合は、進め方の整理についての相談を受け付けています(兄弟姉妹との交渉を代わりに行うことはできません)。

思い出:売ってから寂しくなった、親の物を捨てて悔やんだ

売った後に、急に寂しくなる人がいます。片付けの勢いで、親の手紙や愛用品まで処分してしまい、あとで悔やむこともあります。実家には家族で過ごした時間が積み重なっているので、売るのがつらいと感じるのは自然なことです。無理に気持ちを切り替える必要はありません。

避けるには、手放す前に「残す物」を先に決めておくことです。写真、手紙、親が大事にしていた品などを先に取り分け、迷う物は「保留の箱」に入れて、あとで見直します。家の写真を撮っておく、鍵を渡す前に家族で最後に集まる、といった区切りのつけ方もあります。気持ちの整理には時間がかかるので、売る日を急がず、余裕のあるスケジュールを組んでください。

一人っ子で、全部を一人で決めている

一人っ子の場合、話し合う兄弟がいない分、名義、片付け、査定、気持ちの整理まで、すべてを一人で背負うことになります。相談相手がいないまま急いで決めてしまうのが、この場面で後悔が出やすい理由のひとつです。

避けるには、決める作業を小分けにして、相談できる人を増やすことです。手続きは司法書士や税理士、売り方は不動産会社の担当者、と役割ごとに窓口を分ければ、判断の負担が軽くなります。相続の手続きの面では、一人っ子でも、もう一方の親が存命なら遺産分割協議が必要になることがある点だけ押さえておいてください(詳しくは、前の節の「兄弟姉妹で相続する場合・一人っ子で相続する場合」に書きました)。



実家じまいの進め方|片付けから相続手続き・売却までの順番

実家の売却、今からできる準備

売る時期がまだ決まっていなくても、準備は今日から始められます。名義・書類・境界・建て替えの可否を確かめておけば、どちらの道を選んでも話がスムーズに進みます。

今のうちに確かめておきたいこと

  • 名義:法務局で登記事項証明書を取り、名義人が誰かを見る(祖父母の名義のままのこともあります)
  • 書類の保管場所:権利証(登記識別情報)、購入時の契約書、測量図、建築確認の書類
  • 境界:境界標があるか、隣の家と境界の話がついているか
  • 建て替えができるか:区役所で、家の前の道路の種類と接し方を聞く
  • 家族の考え:親の意向、住まいの予定、兄弟姉妹の考えを共有する

建て替えの条件は、特に大事です。狭い土地や古い住宅地では、建て替えられるかどうかで価格が大きく変わります。区役所の建築指導課などの窓口で、地番を伝えて前面道路の種類を聞いてみてください。

書類の探し方や、なくしたときの対処は売却で必要になる書類のまとめで確認できます。売却全体の流れを先に知っておきたい方は、土地売却の流れと期間も参考にしてください。



土地売却に必要な書類一覧|権利証・登記識別情報をなくしたときの対処

親が住んでいるうちに売るか、相続後か:判断の目安

目安はシンプルです。実家が空き家になる見込みなら、存命中の売却も検討する価値があります。親が住み続けたいなら、無理に売る必要はありません。

存命中の売却を考えてよいのは、たとえば次のような場合です。

  • 親が施設や子の家に移る予定で、実家が空き家になる見込み
  • 親自身が「自分の代で整理したい」と考えている
  • 相続人同士で話がまとまりにくいことが予想される

親が住み続けたいなら、その気持ちを大切にしてください。ただ、判断能力の低下に備えた準備は進めておくと安心です。家族信託の検討や書類の整理は、住みながらでもできます。

誰に相談すればいいか迷ったときは、金額は不動産会社、名義は司法書士という相談先の分け方で、内容ごとの窓口の違いを整理しています。売るかどうかを家族で話し合う前に、複数の会社の査定額を並べておくと、判断の材料にもなります。



共有名義の土地を売るには|全員の同意が必要な理由と進め方

よくある質問

Q. 親が認知症と診断されたら、もう実家は売れませんか?

診断名だけで決まるわけではありません。その売買の内容を理解して判断できるかどうかで、一つひとつの契約について判断されます(民法の意思能力の規定)。「軽度だから大丈夫」「重いから無理」と、程度で線を引けるものではありません。この線引きは、この記事では示せません。判断するのは記事でも不動産会社でもないからです。では、誰がどこで判断するのか。本人の状態は医師が診ます。その状態で契約できるかは、登記を進める司法書士や弁護士が、本人と会って確かめます。確かめられないときは、家庭裁判所に申し立てて成年後見制度を使う道になります。まず主治医に相談し、あわせて司法書士か弁護士に、いまの状態で契約を進められるかを聞いてください。

Q. 子が親の代わりに実家を売ることはできますか?

親の判断能力がはっきりしていれば、親から委任を受けて手続きを代わりに進められます。ただし、売主はあくまで親です。本人の意思確認は必要で、親の同意なく子が売ることはできません。

Q. 兄弟姉妹がいない一人っ子でも、実家を売る手続きは変わりますか?

兄弟間の話し合いが不要な分、手続きはシンプルになります。ただし、もう一方の親が存命なら、その親との遺産分割協議は必要です。相続登記や特例の確認など、やることの中身自体は兄弟姉妹がいる場合と変わりません。

Q. 親が老人ホームに入所していた場合も、空き家の3,000万円控除は使えますか?

条件を満たせば使える場合があります。介護の認定や、入所後にその家をどう扱っていたかなど、判定に関わる条件がいくつもあります。要件が細かく改正も入るので、使えるかどうかは税務署か税理士に確認してください。

Q. 実家を売るのがつらくて、なかなか決められません。

つらいと感じるのは自然なことで、決められないのは悪いことではありません。先に「残す物」を取り分けたり、売る日を急がずに決めたりすると、気持ちの整理がつきやすくなります。期限に追われていない限り、動くのは気持ちが落ち着いてからで構いません。

Q. 兄弟姉妹の意見が合わないときは、どうすればいいですか?

先に金額の話をせず、まず全員の「実家をどうしたいか」を聞くところから始めてください。売る・残す・誰かが住むの選択肢ごとに、手間と費用を書き出して見比べると、話が進みやすくなります。まとまらないときは、司法書士や弁護士など専門家に間に入ってもらう方法もあります。

Q. 実家を売る前に解体した方がよいですか?

解体すると、固定資産税の住宅用地特例が外れるなどの影響があります。判断の材料は古家付きのまま売るか、解体するかの判断ポイントで解説しています。

まとめ

  • 実家を売る時期は「親が売主のうち」と「相続後」で、税金の特例や手続きが変わる
  • 親の判断能力が低下すると、本人名義の実家は原則として売れなくなる
  • 成年後見制度では、居住用不動産の売却に家庭裁判所の許可が必要
  • 相続では、兄弟姉妹との話し合い(換価分割など)や、老人ホーム入所時の特例の確認が必要になる
  • 後悔しやすいのは、値段・片付け・兄弟姉妹との話し合い・気持ちの整理の4つの場面で、どれも決める前の準備で避けやすい
  • 「売れない」の多くは建物の古さと接道などの条件が理由で、名義・境界・建て替えの可否の確認は今からでも始められる

名義や境界を確かめたうえで、売る時期や方法を落ち着いて考えたい。そんなときは、実家の状況に合わせた進め方の相談を無料で受け付けています。

この記事の監修者:十坪とつぼさん(宅地建物取引士)
東京23区で土地の仕入れ営業を担当する宅地建物取引士。狭小地・旗竿地・古家付き土地など、小さくて売りにくい土地を日々見ている。

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