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取得費加算の特例はいつまで?相続した土地を売る時期の決め方

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相続した土地を売ろうか、まだ持っておこうか。迷っているうちに、2年、3年とたってしまう方は少なくありません。そんなとき、どこかで「期限があるらしい」と聞いて、あわてて調べ始めるのが「取得費加算の特例」です。

この記事は、特例の計算を説明するものではありません。「いつまでに売るか」「そもそも自分は使えるのか」の2つに絞って、売る時期の決め方を整理します。計算の仕組みや申告の書き方は、別の記事に案内します。

結論
取得費加算の特例は、相続税を払った人が、相続税の申告期限の翌日から3年を経過する日までに売ったときに使えます。目安は、亡くなってから概ね3年10か月です(国税庁の言い方ではなく、計算上の目安です)。
相続税がかかっていない人は、期限を考える前に、そもそも対象外です。自分の期限と、使えるかどうかは、税務署か税理士に確認してください。

この記事の前提

特例の要件と期限は、国税庁タックスアンサーNo.3267(令和8年4月1日現在法令等)にもとづいています。税の制度は改正が入ります。売る前に、最新の内容を税務署か税理士で確かめてください。当サイトは宅建業の免許も税の資格も持たない情報サイトで、税の個別の判断はできません。

取得費加算の特例とは|相続税を払った人が、期限内に売ったときの仕組み

相続税を払った人が、期限内に相続した土地を売ると、売ったときの税金が軽くなることがある。それが取得費加算の特例です。

国税庁の説明では、相続や遺贈で取得した土地・建物・株式などを一定期間内に売った場合に、相続税額のうち一定金額を、売った資産の「取得費」に加算できる、とされています(No.3267)。

ことばの解説:取得費(しゅとくひ)

土地を売って出た利益(譲渡所得)を計算するとき、売った金額から差し引ける「買ったときにかかったお金」のことです。取得費が大きいほど利益が小さくなり、税金も下がります。相続した土地では、亡くなった方が買ったときの金額などをもとに考えます。

つまり、払った相続税の一部を「土地を手に入れるためにかかった費用」とみなして、利益を小さくする仕組みです。使えるのは、3つの要件をすべて満たす人です。国税庁の原文は次のとおりです。

要件 国税庁の言い方(No.3267) 一言でいうと
(1) 相続や遺贈により財産を取得した者であること 相続で土地を取得した人
(2) その財産を取得した人に相続税が課税されていること 相続税がかかった人
(3) その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること 期限内に売った人

この記事で押さえるのは、読者の多くが見落とす(2)と、時間が決め手になる(3)です。加算できる金額の求め方や、確定申告の書類は土地を売った翌年の確定申告で説明しています。税全体の流れは相続した土地を売ったときの税金の全体像を先に見てもらうと、つかみやすくなります。

相続税がかかっていない人は、この特例を使えない

要件(2)のとおり、相続税が課税されていない人には、取得費加算の特例は使えません。期限に間に合うかを心配する前に、まずここを確かめます。

相続税は、財産の合計が大きいときにだけかかります。相続した土地を売ろうと考える方の中には、申告そのものが要らなかった、あるいは申告したけれど税は0円だった、という方もいます。その場合は、特例の期限を気にしなくて大丈夫です。逆に、「期限の3年に間に合わせなければ」と売り急ぐ理由にもなりません。

ポイント

取得費加算の特例を使えるのは、「相続税を実際に払った人」です。申告書を出したことと、税が課されたことは別の話です。迷うときは、相続税の申告書の控え(税理士に頼んだなら、その報告書)を見て、税が課されたかどうかを確かめてください。

もう1つ、きょうだいで相続した場合です。要件(2)は「その財産を取得した人に」相続税が課税されていること、とあります。条文(租税特別措置法)も、相続で財産を取得した個人で、その相続につき相続税額があるものが売ったとき、という書き方です。判定は、相続人1人ずつです。相続税が課されたのが別のきょうだいだけなら、課されていない自分は使えません。自分に相続税が課されたかどうか(配偶者の軽減などを使った結果、税額が0円になった場合を含む)は、申告書や税理士の報告書で確かめてください(出典:e-Gov法令検索 租税特別措置法、国税庁 No.3267)。

使えるかを確かめるチェックリスト

  • 相続税の申告書の控えは手元にあるか(税理士の報告書でもよい)
  • 自分に、相続税が課された記録があるか(ほかのきょうだいの分ではなく、自分の分)
  • 相続税の申告期限はいつだったか(申告書か、税理士に確認)
  • 売る土地は、相続で取得した財産か

相続税がかかっていない人でも、別の特例が使える場合があります。それが、後ろの節で触れる空き家の3,000万円控除です。

期限の目安は「亡くなってから概ね3年10か月」|条文の言い方と数え方

期限は、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までです。目安にすると、亡くなってから概ね3年10か月になります。

「3年10か月」は、国税庁の表現ではありません。次の2つを組み合わせた、計算上の目安です。

  • 相続税の申告は、亡くなったことを知った日(通常は亡くなった日)の翌日から10か月以内(No.4205)
  • 取得費加算は、その申告期限の翌日以後3年を経過する日まで(No.3267)
概ね3年10か月亡くなってから、取得費加算の期限までの目安(10か月+3年。国税庁の言い方ではなく、計算上の目安)

この記事で、具体的な年月日は書きません。数え方は、いくつかの点でずれるからです。

  • 相続税の申告期限が土曜・日曜・祝日にあたると、翌日が期限になる(No.4205)
  • 亡くなったことを知った日が、亡くなった日と違うことがある(No.4205は「知った日の翌日から10か月」)
  • 売った日を、契約の日で見るか、引き渡しの日で見るか(下で説明します)

ここに注意

自分の期限は、日付で確かめてください。「3年10か月たったばかり」「あと数日」のようなぎりぎりの場合は、目安では判断できません。売る前に、税務署か税理士に「自分の期限は何月何日か」を聞いておきましょう。

「売った日」は、引き渡しの日が原則。契約の日も選べる

期限がぎりぎりのとき、ここが効きます。国税庁のタックスアンサーNo.3102には、こう書かれています。

資産を譲渡した日は、原則として、売買など譲渡契約に基づいて資産を買主などに引き渡した日をいいますが、売買契約などの効力発生の日に譲渡があったものとして確定申告することもできます。
契約の効力発生の日とは一般的には契約締結の日です。

つまり、原則は引き渡しの日ですが、契約の日で申告することもできるという書き方です。土地の売買では、契約から引き渡しまで1か月以上あくことがふつうです。契約は期限内に間に合ったが、引き渡しが期限をまたぐという場面が起こりえます。

ただし、取得費加算の期限の判定で、どちらを使えるかは、この資料に書かれていません。自分の場合にどちらで見るのかは、契約の前に税務署か税理士に確認してください。引き渡しの日で見ると間に合わない、という結論になることもあります。

期限から逆算する|相続登記から引き渡しまでを並べる

期限の日に売り終わっていなければならないので、必要なのは「いつ動き出すか」の逆算です。売るまでには、順番に片づける手続きがあります。

期限から逆算して並べる(所要期間は目安)

  1. 相続登記・遺産分割名義が亡くなった方のままでは売れない。誰の名義にするかが決まらないと、先へ進めない
  2. 売り方を決める仲介か買取か。査定を比べて決める
  3. 売り出し・契約仲介なら、買い手探しに1〜3か月ほどが目安
  4. 引き渡し契約から1〜2か月ほど。測量や片付けで延びることもある
  5. 期限の日この日までに「売った」ことになっている必要がある

仲介で売る場合、相談から引き渡しまでは数か月〜半年ほどかかるのが一つの目安です(土地売却の流れと期間)。狭小地や相続した土地は、測量や登記の準備でさらに延びます。ここに、売る前に必要な相続登記の期間が加わります。

ここは税の決まりではありません。上の所要期間から考えた、編集部の目安です。その前提で言うと、期限まで1年を切ったら、売るかどうかをはっきり決めたほうが安全だと考えます。

逆算のとき、つまずきやすい順に並べます。

  1. 名義が故人のままになっている。 相続登記は、売る前に済ませる必要があります。相続登記の義務化と、売る前にやることで手順を確認できます。
  2. 兄弟姉妹で、売るかどうかの意見が割れている。 遺産分割がまとまらないと、土地は売れません。売ってお金で分ける方法は、換価分割の流れと注意点が参考になります。遺産分割協議書の書き方は、不動産を売る前提の遺産分割協議書にまとめています。
  3. 測量や、家の片付けが終わっていない。 契約したあとに延びやすい部分です。


相続登記の義務化とは?期限・過料と、売る前にやること

期限に間に合いそうにないときは、売り方を変える手もあります。買取なら、仲介より短い期間で売れることがあります。ただし、価格は仲介より下がりやすい点は、ふまえておいてください。

空き家の3,000万円控除と、どちらを使うか

取得費加算の特例と、相続空き家の3,000万円控除は、同じ土地で両方は使えません。どちらを使うかを、売る前に決めます。

国税庁のタックスアンサーNo.3306(被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例)の適用要件(5)に、こうあります。

(5)売った家屋や敷地等について、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例や収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと。

「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」が、この記事の取得費加算の特例です。つまり、同じ土地で両方を使うことはできません。

2つは、使える人と、期限の数え方が違います。

2つの特例の違い(要点のみ)

取得費加算の特例

  • 相続税が課された人だけ
  • 期限は、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで
  • 土地・建物・株式など、相続した財産が対象

空き家の3,000万円控除

  • 相続税がかかったかどうかは問われない(要件はNo.3306で確認)
  • 期限は、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで
  • 家が昭和56年5月31日以前の建築であることなど、条件が細かい
  • 売却代金などの条件もある(金額は改正で変わるため、国税庁のページで確認)
  • この特例そのものに期限がある(令和8年4月1日現在の国税庁の記載では、令和9年12月31日までの売却)

選び方の考え方は、次のとおりです。

  • 相続税が課されていない人:取得費加算は使えないので、空き家の3,000万円控除の条件に当たるかを確かめます。
  • 相続税が課された人で、空き家の控除の条件にも当たる人:条件に当たるので、どちらか一方を選べます(同じ土地に両方は使えません)。どちらが有利かは、売った利益の大きさと、払った相続税の額で変わります。税理士に、それぞれで試算してもらうのが確実です。
  • 相続税が課された人で、空き家の控除の条件に当たらない人:取得費加算の期限が、売る時期の目安になります。

もう1つ、見落としやすい点があります。空き家の3,000万円控除には、制度そのものの期限があります。No.3306 の概要に「平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間に売って」とあり、この日までに売らないと使えません(令和8年4月1日現在の法令です。これまでに延長されたこともあるので、使う前に国税庁のページで最新を確かめてください)。自分の3年の期限がまだ先でも、制度の期限のほうが先に来ることがあります。

期限も、2つは別の日になります。亡くなった時期によって、先に来るのがどちらかが変わります。片方の期限だけを見て決めると、もう片方を使えなくなることがあるので、両方の期限を並べて確かめてください。空き家の控除の条件は、空き家の3,000万円控除の確かめ方で整理しています。



空き家の3,000万円控除|使えるかどうかの確かめ方と相談先

特例を使うなら確定申告が必要|売る前に手元にそろえるもの

取得費加算の特例は、確定申告をしないと使えません。国税庁の案内では、一定の書類を添えて申告することが必要とされています(No.3267)。

  • 相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書
  • 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]

申告は、売った年の翌年にします。書類のそろえ方は確定申告の記事にあります。相続税の申告書の控えは、あとから探すと見つからないことがあります。売ると決めたら、先に取り出しておくのがおすすめです。

税全体の見取り図が欲しい方は、持っている間・相続のとき・売ったときの3つに分けた相続した空き家にかかる税金も役に立ちます。



土地を売った翌年の確定申告|期限・必要書類・取得費が不明なとき

売る時期を決める前に、土地がいくらくらいで売れそうか、複数の会社の査定額を並べておくと、期限までにどの売り方が現実的かが見えてきます。

よくある質問

Q. 取得費加算の特例の期限は「3年10か月」ですか?

目安としては、亡くなってから概ね3年10か月です。ただし、国税庁の言い方は「相続の開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで」です。申告期限が土日祝にあたると、期限が翌日以降にずれます(No.4205)。自分の期限の日付は、税務署か税理士に確認してください。

Q. 相続税の申告が要らなかった(税がかからなかった)場合も使えますか?

使えません。要件に「相続税が課税されていること」があるためです(国税庁No.3267)。相続税がかかっていない場合は、空き家の3,000万円控除など、別の特例に当たるかを確かめます。

Q. 期限を過ぎてしまったら、どうなりますか?

期限(3年を経過する日)までに売っていないと、この特例の要件を満たしません。期限のあとに売った場合の税金は、通常の計算になります。個別の金額は、税理士に確認してください。

Q. 空き家の3,000万円控除と、両方使えますか?

同じ家と土地では、重複して使えません(国税庁No.3306)。どちらが有利かは、利益の大きさと相続税の額で変わるので、税理士に両方の試算を頼むと確実です。

Q. 特例を使うときの手続きは、何が必要ですか?

売った翌年に、確定申告が必要です。「相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書」と、譲渡所得の内訳書を添えます(国税庁No.3267)。

まとめ

  • 取得費加算の特例は、相続税が課された人が、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売ったときに使える
  • 相続税がかかっていない人は、この特例を使えない。まず自分に相続税が課されたかを確かめる
  • 「概ね3年10か月」は目安にすぎない。自分の期限の日付は、税務署か税理士に確認する
  • 売るには、相続登記・遺産分割・売り出し・引き渡しの順に時間がかかる。期限から逆算して、早めに動く
  • 空き家の3,000万円控除とは重複して使えない。両方の期限と条件を並べて、税理士に有利なほうを聞く

期限から逆算して、相続登記から売り方の選び方まで、何をいつまでに進めるか迷うときは、手順を一緒に整理します(税の判断は税理士・税務署の領域のため、お受けできません)。

この記事の監修者:十坪とつぼさん(宅地建物取引士)
東京23区で土地の仕入れ営業を担当する宅地建物取引士。狭小地・旗竿地・古家付き土地など、小さくて売りにくい土地を日々見ている。

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