形・法規の悩み

孤独死があった家を相続したら|特殊清掃・費用の負担・売却の順番

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離れて暮らしていた家族が、自宅で亡くなっていた。悲しむ間もなく、警察や葬儀、そして家の後始末が一度に押し寄せてきます。「この家はどうすればいいのか」「片付けや清掃の費用は誰が払うのか」と、途方に暮れている方も多いと思います。

家の売却を考えるのは、もう少し先で構いません。先にやることは、順番に片付けていけば、ひとつずつ進みます。この記事では、孤独死があった家を相続した人が、清掃・片付け・費用の負担・売却までをどんな順番で進めるかを、手順としてまとめました。売るときの告知の考え方は別の記事に任せ、ここでは「手をつける前に確かめること」を中心にお伝えします。

結論
順番は、①相続人と状況の確認 → ②相続するかどうかの判断 → ③特殊清掃・遺品整理 → ④売却や活用です。いちばん大事なのは、②の前に片付けを進めすぎないことです。
清掃や片付けの費用は、頼んだ人が業者に払うのが基本で、多くは相続人が負担することになります。ただし、相続放棄を考えている場合は、手をつけ方によって選択肢が狭まることがあるため、先に弁護士・司法書士へ確かめてください。

孤独死があった家を相続したら、何から手をつけるか

最初にやるのは、片付けではなく「状況の確認」です。清掃業者に電話するのは、そのあとで間に合います。急がされても、次の順番を崩さないようにしてください。

孤独死があった家を相続してから売却までの順番

  1. 状況を確かめる相続人は誰か、持ち家か賃貸か、遺言や保険はあるかを整理する
  2. 相続するかどうか決める相続放棄には期限がある。手をつける前に専門家へ
  3. 特殊清掃・遺品整理複数社に見積もりを取り、作業の記録をもらう
  4. 売る・貸す・更地にするを決める告知の扱いを確かめながら、売り方を比べる

なぜこの順番なのか。片付けや処分は、やり直しがきかないからです。家財を捨ててしまってから「やはり相続放棄をしたかった」と気づいても、戻せないことがあります。反対に、売却の話を先にしても、清掃が終わっていなければ買い手や買取会社は見に来られません。

最初の確認では、次の点を紙に書き出しておくと、あとで誰に相談するときも話が早くなります。

最初に確かめること

  • 相続人になる人は誰か(きょうだい、子ども、配偶者など)
  • その家は亡くなった方の持ち家か、賃貸か
  • 遺言書、預貯金、借金、ローンの有無(分かる範囲で)
  • 入っている火災保険や家財の保険の証券(見つかれば)
  • 警察から受け取った書類や、連絡先のメモ

警察の対応がすべて終わる前に、部屋の中のものを動かしたり、処分したりしないでください。いつ現場に入ってよいかは、警察や管理会社に聞けば教えてもらえます。

特殊清掃と遺品整理・ふつうの清掃は何が違うのか

特殊清掃は、汚れや臭い、害虫などの影響が残った部屋を、元に近い状態へ戻すための専門の作業です。荷物を仕分けして片付ける遺品整理や、ふつうのハウスクリーニングとは、目的も道具も違います。

ことばの解説:特殊清掃

人が亡くなってから発見まで時間がたった部屋などで、汚れ・臭い・害虫などの影響を取り除き、消毒や、必要に応じた床材の撤去まで行う作業のことです。業者ごとに対応の幅が違うため、見積もりの内訳と作業の記録で確かめてください。

作業 目的 主な内容
特殊清掃 汚れ・臭い・害虫への対処と原状回復 除去、消毒、消臭、床や壁の撤去・補修など
遺品整理 家財の仕分けと処分 残すもの・捨てるものの分別、搬出、貴重品の探索
ふつうの清掃 通常の汚れの掃除 ハウスクリーニング。売却前の仕上げに使う

順番としては、特殊清掃を先に、遺品整理をあとに行うのがふつうです。部屋の状態が落ち着かないと、家財を安全に運び出せないためです。ただし、状況によっては同時に進める業者もあるので、見積もりの段階で「どの順番で、何をやるのか」を聞いてください。

なお、特殊清掃が必要になったかどうかは、売るときの告知にも関わります。その理由は、事故物件の売却・買取を扱った事故物件(孤独死・自殺)の売却・買取|告知義務と相場の目安で説明しています。ここでは、作業の内容が分かる書類を必ず受け取っておくことだけ覚えておいてください。

孤独死の特殊清掃の費用は誰が負担するのか

清掃や片付けの費用は、頼んだ人が業者に払うのが基本で、多くは相続人が負担します。亡くなった方の預貯金や遺産をどう使うかは、相続の手続きにも関わるため、この記事では触れません。家が持ち家か賃貸か、相続放棄をするかどうかでも、話が変わります。

ここで、金額の目安は書きません。特殊清掃の費用は、部屋の広さや状態、作業の範囲で大きく変わるためです。一律の相場を当てにすると、見積もりを見たときに判断を誤りやすくなります。費用を左右するのは、たとえば次のような点です。

ポイント:特殊清掃の費用は、何で変わるか

広さ(間取り)、汚れや臭いが残っている範囲、床や壁などを撤去・補修するかどうか、家財の量、階数や搬出のしやすさ、作業の日数。見積もりは必ず複数社で、同じ条件で取り、内訳を比べてください。

負担の考え方は、状況ごとに次のように分かれます。

状況 費用の考え方 先にやること
持ち家を相続する 頼んだ人(多くは相続人)が負担。遺産の使い方は先に専門家へ 相続人どうしで分担を話し合う
賃貸の部屋だった 原状回復などの費用を請求されることがある。範囲は契約内容と個別の事情で変わる 賃貸借契約書と、管理会社・大家の意向を確認
相続放棄を考えている 手をつけ方によって、選択肢が変わることがある 何もする前に弁護士・司法書士へ
火災保険・家財の保険に入っていた 契約によって違う 自分の保険証券と保険会社に確かめる

賃貸の場合は、相続人や連帯保証人に請求が来ることがあります。何をどこまで負担するかは、契約書の内容と個別の事情で変わるため、この記事では範囲を示しません。請求書が届いたら、支払う前に、内訳と根拠を管理会社に確認し、弁護士・司法書士にも相談しましょう。

保険は、契約によって内容が違います。対象になるかどうかは、自分の保険証券と保険会社に確かめてください。

片付ける前に確かめること|相続放棄を考えている場合

相続放棄を少しでも考えているなら、家財の処分や清掃を頼む前に、弁護士・司法書士へ確かめてください。相続人が財産を処分してしまうと、相続を認めたものとみなされ、放棄できなくなるおそれがあるためです。

ことばの解説:相続放棄

家庭裁判所に申し出て、初めから相続人ではなかったことにしてもらう手続きです。プラスの財産も借金も、すべて引き継がなくなります。期限は、自分のために相続が始まったと知った時から原則3か月です(熟慮期間)。間に合いそうにないときは、家庭裁判所に期間を延ばす申立てをする方法があります。

民法には、相続人が相続財産を処分すると、相続を認めたものとみなす、という決まりがあります。ただ、家財の片付けや、清掃・遺品整理の費用を払うことが、これに当たるかどうかは、この記事では線を引けません。「払っても大丈夫」とも「払ってはいけない」とも、ここでは書きません。清掃や片付けを頼む前、費用を払う前に、弁護士・司法書士に確かめてください。

ここに注意

清掃業者から「すぐに作業しないと状態が悪くなる」と急かされることがあります。急ぐ事情があるのは事実でも、相続をどうするかの判断とは別の話です。相続放棄の期限内かどうか、作業前に費用を誰が払うかを確認してから、依頼してください。

相続放棄をしても、その家を実際に管理していると責任が残ることがあります。放棄そのものの仕組みや、放棄・売却・国庫帰属の比べ方は、相続放棄のデメリットと、売却・国庫帰属との比べ方を見てください。相談先は、相続放棄の手続きなら弁護士か司法書士、税金なら税理士、売り方なら不動産会社や買取会社、と分かれます。



いらない土地を相続したら|相続放棄・売却・国庫帰属を比べる

どこまで片付けを進めてよいのか、誰に何を聞けばよいのかが分からないときは、状況を聞きながら、順番の整理をお手伝いします。

特殊清掃の業者の選び方|ランキングではなく見分け方

業者は「安さ」や「順位」ではなく、見積もりの中身と、作業後にもらえる記録で見分けます。この記事では、特定の業者はすすめません。どの会社に頼む場合でも、次の点を確かめてください。

確かめること 見るポイント
現地の確認 電話だけで金額を決めず、現地を見たうえで見積もりを出すか
見積書の内訳 「一式」ではなく、作業ごとの内訳が書いてあるか
追加費用の条件 どんなときに金額が増えるか、事前に説明があるか
作業の範囲 特殊清掃・遺品整理・消臭・撤去のどこまで含むか
作業後の記録 作業内容が分かる報告書や写真を出してもらえるか
ごみの処理 家庭から出るごみの運搬・処分を、適切な形でしているか
契約前の対応 急かさず、他社と比べる時間をくれるか

ごみの処理については、家庭から出る不用品の運搬を仕事として行うには、市区町村の許可が要るという決まりがあります(廃棄物処理法。例外もあります)。実際の扱いは自治体で違うことがあるため、不安なときは、その業者に「処分はどこがやるのか」と聞くか、お住まいの区市の廃棄物の担当窓口に確かめてください。答えがあいまいなら、見送るのも手です。

もうひとつ、見積もりは最低でも2〜3社で取ってください。内容を比べると、作業の範囲の違いがよく分かります。作業後に受け取る報告書や写真は、売るときに「何をどこまで直したか」を買い手に説明する材料にもなります。



実家じまいの進め方|片付けから相続手続き・売却までの順番

清掃のあと、売る・更地にする・貸すをどう決めるか

清掃が終わったら、相続の手続きを済ませたうえで、売り方を比べます。売るには、まず名義を相続人に変える相続登記が要ります。手順は相続した土地を売る流れ|相続登記から売却・税金までにまとめています。

孤独死があった家を売るときは、買い手に何を伝えるか(告知)が問題になります。どんな場合に告知が必要かは、前に紹介した事故物件の売却・買取の記事で扱っているので、ここでは繰り返しません。

売り方は、状況によって向き不向きがあります。

売り方の比べ方

仲介(一般の買い手)

  • 条件が合えば価格は伸びやすい
  • 売れるまでの期間が読みにくい
  • 告知の説明を、自分たちで整える必要がある

専門の買取会社

  • 今の状態のまま、期間を決めて手放しやすい
  • 価格は仲介より低くなりやすい
  • 対象の家や地域は会社ごとに違う

買取が向くのは、清掃や修繕の手間をかけずに、早く区切りをつけたい場合です。反対に、時間に余裕があり、少しでも高く売りたいなら、仲介も比べる価値があります。買取会社に申し込むと、電話やメールで連絡が来ます。1社で決めず、条件を比べてください。見積もりで確かめる点は土地の買取業者の選び方に書きました。

建物を壊して更地にする方法もあります。ただし、更地にしたあとの告知の扱いは、事故物件の記事で確かめてください。壊すかどうかは、解体の費用と、売りやすさの両方を見て決めます。費用の調べ方は木造の解体費用は何で決まる?見積もりの取り方と狭小地の注意で扱っています。解体は、相続放棄を考えている場合、清掃と同じく先に専門家へ確かめてから進めてください。



木造の解体費用は何で決まる?見積もりの取り方と狭小地の注意

事故物件は、ふつうの仲介では買い手が見つかりにくいことがあります。訳ありの不動産を専門に買い取る会社なら、今の状態のまま買取価格を出してもらえることがあります。ただし、買取は仲介より価格が下がりやすいので、その点も含めて、複数の会社で比べてみてください。

申し込みのときは、物件の種類を選ぶ欄があります。選択肢は、共有持分・再建築不可・事故物件・借地・底地・空き家・その他です。いちばん近いものを選び、合うものがなければ「その他」を選んでください。状況は、画面の案内に従って伝えます。

よくある質問

Q. 特殊清掃の費用は、いくらくらいかかりますか?

金額は、部屋の広さや汚れの範囲、撤去や補修の有無で大きく変わるため、ここでは目安を示しません。2〜3社に、同じ条件で現地見積もりを取って比べるのがいちばん確実です。内訳に「一式」が多い見積もりは、中身を聞いてから判断してください。

Q. 費用は相続人の誰が払うのですか?

頼んだ人が業者に払うのが基本で、多くは相続人が負担します。複数人いる場合は、話し合って分担を決めるのがふつうです。賃貸の部屋だった場合は、契約内容によって、管理会社や大家から請求が来ることもあります。相続放棄を考えているなら、支払う前に弁護士・司法書士に確かめてください。

Q. 相続放棄をするつもりでも、清掃の依頼はできますか?

一律に「できる・できない」とは言えません。手をつけ方によって、相続を認めたとみなされるおそれがあります。依頼する前に、弁護士・司法書士に聞いてください。その相談の際は、警察の書類、賃貸契約書、亡くなった日などを手元にそろえておくと話が進みます。

Q. 清掃をすませれば、売るときに告げなくてよくなりますか?

清掃をしたから告知が不要になる、とは限りません。判断の考え方は、事故物件の売却・買取の記事で説明しています。

Q. 清掃せずに、そのまま買い取ってもらうことはできますか?

会社によっては、今の状態のまま買取を検討してくれることがあります。ただし、対応できる物件や地域は会社ごとに違い、価格も状態に応じて下がりやすくなります。1社で決めず、複数の会社の条件を比べてください。

まとめ

  • 順番は、状況の確認、相続するかどうかの判断、特殊清掃・遺品整理、売却や活用です。
  • 特殊清掃は、遺品整理やふつうの清掃とは別の作業です。費用は部屋の状態や作業の範囲で変わるため、複数社の見積もりで比べます。
  • 費用は、頼んだ人が払うのが基本で、多くは相続人の負担です。賃貸だった場合は、契約内容の確認が先です。
  • 相続放棄を考えているなら、清掃や片付けの前に、弁護士・司法書士へ確かめてください。
  • 売るときの告知は事故物件の記事、更地にするかは解体費用の記事で確かめながら、売り方を比べましょう。

期限のあること以外は、急がなくて大丈夫です。何から進めるか、誰に何を聞けばよいかを整理したいときは、こちらからご相談ください。

この記事の監修者:十坪とつぼさん(宅地建物取引士)
東京23区で土地の仕入れ営業を担当する宅地建物取引士。狭小地・旗竿地・古家付き土地など、小さくて売りにくい土地を日々見ている。

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