シロアリ被害は売るとき伝える?告知と、直すか現況で売るかの決め方
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実家の床下をのぞいたら、土が盛り上がった筋のようなものがあった。柱を押すと、少しへこむ。「これ、シロアリだろうか」と気づいたとき、売るつもりの方がまず気になるのは、買い手に言わなければいけないのか、言ったら売れなくなるのではないか、という点だと思います。
この記事では、知っているシロアリの被害は伝えるのが先という大原則から、告知書への書き方、直してから売る場合と今のまま売る場合の分かれ道までを整理します。古家付きの売り方全体は古家付き土地を売るときの全体像で説明しているので、ここではシロアリに絞って掘り下げます。
結論
シロアリの被害を知っているのに伝えずに売ると、あとで責任を問われるおそれがあります。分かっていることは、告知書に書いて伝えるのが基本です。
直してから売るか、今のまま売るかは、被害の程度・建物を残すか解体するか・買い手が業者か個人かで答えが変わります。どちらが得とは言い切れないので、判断の材料を順に並べます。
シロアリの被害は、知っていることを伝えるのが先
売主がやることは、知っていることを隠さず買い手に伝えることです。被害を直すかどうかの前に、まずここが決まります。
家を売ったあとで、売った物が契約の内容と違っていたとき、売主は責任を負います。これが契約不適合責任です。古家では「建物については責任を負わない」という特約(免責特約)を付けるのが一般的ですが、売主が知っていた不具合を伝えなかった場合は、特約があっても責任を免れません。特約の仕組みは、免責特約の仕組みと注意点で説明しています。ここでは繰り返しません。
シロアリに当てはめると、こうなります。
- 被害を知っている → 伝える(告知書に書く)
- 疑わしい跡を見たが、確かめていない → 見たことをそのまま書く
- 全く気づいていない → 「不明」と書く。ただし、知った時点で伝える
「知らなかった」ことと、怪しい跡を見ながら確かめなかったことは、同じではありません。どう扱われるかは事情しだいなので、見たことは書くのが安全です。過去に駆除や予防の工事をした記録があれば、それも伝える材料になります。
こと
売主が、建物や土地について知っている状況を買い手に伝えるための書面です。雨漏りやシロアリの被害の有無を書く欄があるのが一般的で、書いた内容は契約の判断材料になります。
告知書に何を書くか
告知書には、被害の有無だけでなく、見たこと・やったこと・分からないことを分けて書きます。書式は不動産会社が用意してくれるので、手元の記憶と書類を持って相談してください。
書く内容の目安は、次の通りです。書式によって欄の名前は違うので、実際の書面に沿って埋めます。
| 書くこと | 例 |
|---|---|
| 今の被害の有無 | 床下の柱に蟻道(シロアリが作る土のトンネル)を見た |
| 過去の被害 | 数年前に浴室まわりで被害があり、その部分を直した |
| 駆除・予防の工事の履歴 | 業者に頼んだ時期、範囲、保証書の有無 |
| 見たが確かめていないこと | 羽アリが飛んでいたが、調べてはいない |
| 分からないこと | 床下は一度も見ていないので不明 |
分からないことは、「不明」と正直に書くほうが安全です。分かる範囲を正直に書いてあるほうが、あとで話し合いになったときに、説明がつきやすくなります。
ここに
被害の跡をクロスの張り替えや板で隠してから売るのは、知っていて伝えなかったことになりかねません。直したなら、直したことを書いて伝えてください。
直してから売る/現況のまま売る、どちらが良いかは物件しだい
どちらかが常に正解、ということはありません。直してから売れば買い手の不安は減りますが、先にお金と時間が出ていきます。現況のまま売れば手間は省けますが、価格や買い手の層に響くことがあります。
直してから売る/現況のまま売る
直してから売る
- 買い手の不安が減りやすい
- 工事の費用と日数が先にかかる
- 直した範囲と保証を書面で渡せる
現況のまま売る
- 先に出るお金がない
- 知っている被害は告知書に書く
- 買い手は直す前提で価格を見る
「直したほうが得か」は、売れた値段から工事の費用を引いた手元の金額で比べるしかありません。工事のお金が売値にそのまま上乗せされて戻るとは限りません。家の広さ、被害の広がり、床下の状態で金額が変わるので、実際の見積もりで確かめてください。
見積もりをもらったら、金額より先に2つだけ確かめてください。「駆除」と「傷んだ木材の交換」は、別の工事だからです。シロアリを退治しても、食われて弱った柱や床板が自然に元に戻るわけではありません。駆除の見積もりだけを見て「これで全部直る」と思い込むのが、売主がいちばん誤解しやすいところです。
- 木材の交換(補修)が入っているか、駆除だけか。入っていないなら、別に頼む必要があるのかも聞いておきます
- その見積もりは「仮」か「確定」か。床下を開けて初めて分かる部分があるので、仮なら、どんな場合に金額が変わるのかを聞きます
直したあとに売るなら、やった範囲と保証の書面は、買い手に渡す資料にもなります。口頭の説明だけで済ませず、書面でもらっておくと安心です。見積もりの比べ方(範囲・保証・複数社に出す)は、下の「売る前に調べるかどうか」でまとめています。
何で決まるか|3つの見方
分かれ道は、次の3つです。この3つに自分の家を当てはめると、傾きが見えてきます。
1. 被害の程度
被害が床下の一部にとどまるのか、柱や土台まで広がっているのか。ここで工事の大きさがまるで違います。表面だけの被害なら、駆除と部分的な補修で済む場合もあります。構造を支える部分まで傷んでいると、直す範囲が広がり、買い手も慎重になります。
被害の程度は、見た目だけでは分かりません。床下に入って調べる調査が必要です。
2. 建物を残すか、解体前提か
買い手が建物を壊して新築する前提なら、シロアリの被害は、価格にあまり響かないことがあります。建物ごと壊すからです。反対に、買い手がその家に住む、またはリフォームして使うつもりなら、被害の範囲と直し方が価格の中心になります。
解体するかどうかの考え方は古家付きの土地を解体すべきかの考え方のほか、助成金の出る区なら解体費用の助成制度を区ごとにまとめた記事も参考になります。
3. 買い手が業者か個人か
買い手が不動産会社(買取業者)なら、家の状態を見たうえで、直す費用を見込んで価格を出します。状態が悪くても引き取ってもらえることがありますが、その分、価格は仲介で売るときより低くなりやすいです。個人が買い手の場合は、住む家として見るので、被害の有無や保証の有無を気にする人が増えます。
傾きの目安(物件によって変わります)
直してから売る側に傾きやすい
- 被害が限られている
- 個人に住み家として売りたい
- 時間と資金に余裕がある
現況のまま売る側に傾きやすい
- 被害が広く、建物の傷みも大きい
- 解体して新築する買い手が多い土地
- 早く手放したい、通えない
あくまで目安です。迷う場合は、直した場合と現況の場合の両方の数字を並べて決めるのがいちばん確実です。現況の買取を相談できる専門の会社の選び方は買取会社を比べるときの見方に、買取という売り方の考え方は空き家を業者に買い取ってもらう流れにあります。
シロアリの被害をどう伝えて、どの売り方を選ぶか整理がつかないときは、売り方の比較から一緒に進められます。
「査定」と
不動産会社に「いくらで売れるか」を聞くのが査定(売る側)。リフォームや駆除の業者に「直すのにいくらかかるか」を聞くのが見積もり(直す側)です。同じ「一括」でも別物です。売る方法を比べたいなら売るときの一括査定の考え方を見てください。直す費用を比べるのは、次の節で書く見積もりです。
売る前に調べるかどうか|調査と見積もりの取り方
調べるかどうかは、売り方と、被害がありそうな根拠の強さで決めます。調べて分かったことは、そのまま告知書に書くことになる点だけ、先に知っておいてください。
床下をのぞくと羽アリや蟻道が見つかる、柱がへこむ、床がきしむ。こうした気配があるなら、調べて被害の範囲をつかんでおくと、直すか現況かの比較がしやすくなります。反対に、解体して更地で売る予定なら、シロアリ調査にお金をかける意味は小さいかもしれません。
調査の頼み先は、駆除や床下の工事をする会社、リフォーム会社などです。調査のあとは、工事の見積もりも出してもらえることがあります。ここでやることは次の通りです。
- 費用がかかるのは、調査か、見積もりか、工事からか。依頼する前に確かめる。サービスごとに違います。
- 見積もりは1社だけでなく、複数社に出して比べる。1社では、その範囲や金額が妥当か比べられないからです。
- 比べるときは、金額だけでなく、何をどこまでやる工事なのかを書面に書いてもらう。床下全体か、被害のある部分だけか。保証の有無と期間も並べます。
- 複数の会社の見積もりを一度に取れる窓口もあります。依頼すると、会社から電話やメールで連絡が来ます。連絡の方法や時間帯を、申し込むときに確かめておくと困りません。
なお、紹介してもらえる会社があるかどうかは、土地の場所や条件で違います。必ず何社か来るとは限りません。
調べたあとで、「今のまま買い取ってもらうなら」という道も残しておきたい場合があります。その考え方は、訳あり不動産を今の状態で買い取ってもらう考え方から辿れます。
被害を見つけたときにやること・やらないこと
見つけた直後は、記録を残し、手を入れる前に状況を確かめるのが先です。
見つけたときの順番
- 写真を撮る被害の場所、蟻道、羽アリを撮る。日付が分かると良い
- 過去の書類を探す駆除・予防工事の保証書、領収書、図面
- 調べるか決める売り方(仲介・買取・解体前提)と合わせて考える
- 告知書に書く知っていることを不動産会社に伝える
やらないこと
- 被害の跡をクロスや板で隠して売る
- 調べる前に、傷んだ木材を自分で外して捨てる(被害の範囲が分からなくなる)
- 過去の工事や被害を、不動産会社に言わないでおく
- 見積もりの範囲を確かめないまま、工事を決める
自分で薬剤をまくかどうかは、被害の範囲を見えにくくすることがあるので、先に調べてから決めてください。空き家で長く見ていなかった場合も、手を入れる前に、まず写真を撮って記録します。
シロアリの被害がある家を、ふつうの仲介では買い手が見つけにくいこともあります。訳ありの不動産を専門に買い取る会社なら、今の状態のまま買取価格を出してもらえることがあります。ただし、価格は仲介より下がりやすく、申し込むと連絡が来ます。対応できる物件や地域は会社ごとに違うので、条件は申し込む前に確かめてください。
よくある質問
Q. シロアリがいたことを、売るとき必ず言わなければいけませんか?
知っていることは伝えるのが基本です。知っていた不具合を伝えないまま売ると、免責の特約を付けていても責任を問われるおそれがあります。過去の駆除や被害も、分かる範囲で告知書に書いてください。
Q. 駆除してから売れば、告知はしなくていいですか?
直したことを含めて伝えるほうが安全です。いつ、どこを、どの範囲で直したか、保証書があるかを書面で渡せると、買い手の不安も減ります。
Q. 被害があるかどうか分からないときは、調べたほうがいいですか?
売り方しだいです。家を残して売るなら、調べておくと比べやすくなります。解体して更地で売る予定なら、調べる意味は小さいことがあります。迷う場合は、不動産会社に売り方を相談してから決めても遅くありません。
Q. 「査定」と「見積もり」はどう違いますか?
査定は「いくらで売れるか」を不動産会社に聞くこと、見積もりは「直すのにいくらかかるか」を業者に聞くことです。目的が逆なので、売るつもりの方が間違えて頼まないようにしてください。
まとめ
- シロアリの被害は、知っていることを告知書に書いて伝えるのが先。隠して売るのは避ける
- 直すか現況で売るかは、被害の程度、建物を残すか解体するか、買い手が業者か個人かで決まる
- 迷ったら、直す場合と現況の場合の両方の数字を並べて比べる
- 調べるときは、費用がかかる範囲を依頼前に確かめ、複数社の見積もりを工事の範囲まで並べて比べる
- 「査定」は売る側、「見積もり」は直す側。目的を間違えない

