店舗兼住宅を売る|3,000万円控除が効くのは居住部分だけ?
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1階が店や町工場で、2階が住まい。親が商売をやめたあとに残った、そんな建物を売ろうとして、手が止まっていませんか。マイホームを売ると税金が軽くなる話は聞いたことがあっても、店の部分にまで同じ特例が効くのかは、調べないと分かりません。町工場の跡地で土壌汚染の調査が要るかどうかは、町工場の跡地を売るときの土壌汚染の調べ方で確かめられます。
この記事では、国税庁の案内と法令をもとに、店舗併用住宅を売るときの3,000万円控除の考え方と、固定資産税の住宅用地の特例が残る条件を順に説明します。相続で受け継いだ建物の場合に、確認が必要な点も書きました。
結論
店と住まいが同じ建物にあるとき、3,000万円控除が使えるのは自分が住んでいた部分だけです。住んでいた部分が全体のおおむね90パーセント以上なら、全体が対象になります。
相続した空き家の特例が店舗併用の建物に使えるかは、この記事では言い切れません。自分が使うのはどちらの特例かを先に決めて、税理士か税務署で確かめてください。
店舗併用住宅の3,000万円控除は「住んでいた部分」だけが対象
先に答えを言います。1つの建物の中に店と住まいが一緒にあるとき、マイホームの3,000万円控除が効くのは、自分の居住に使っていた部分に限られます。建物全部に効くわけではありません。
国税庁のタックスアンサー(よくある税の質問)No.3452「店舗併用住宅を売ったときの特例」(令和8年4月1日現在の法令等)が、そう案内しています。
こと
1つの建物の中に、住まいの部分と、店・事務所・作業場などの部分が一緒に入っているものです。「店舗兼住宅」「兼用住宅」とも呼ばれます。1階が店で2階が住まい、という形が典型的な例です。
3,000万円控除が効く範囲(国税庁の考え方)
住んでいた部分
- 3,000万円控除などの対象になる
- 家屋も、その敷地のうち居住部分に当たる面積も対象
店や作業場だった部分
- この控除の対象にならない
- 事業用の別の特例があるが、売るだけでは使えない(後の節で説明)
「うちは親が店の奥に住んでいたし、全体がマイホームだ」と考えてしまいがちです。けれど税務署は、建物の使い方を部分ごとに見ます。ここを知らずに申告すると、あとから直すことになります。
3,000万円控除そのものの要件(住まなくなってから売るまでの期限など)は、国税庁のコード3302「マイホームを売ったときの特例」で説明されています。店舗併用でも、この要件は同じように見られます。
おおむね90パーセント以上なら全体が対象|按分の考え方
居住部分が建物の中で大きいときは、例外があります。自分の居住に使っていた部分が全体のおおむね90パーセント以上なら、全体を居住用として扱えると、同じ国税庁のページに書かれています。
逆に言えば、居住部分が90パーセントに届かないときは、住んでいた部分だけが対象に絞られます。このとき、家屋と敷地を居住部分と店の部分に分ける「按分」という作業が必要になります。
こと
1つのものを、使い方に応じた割合で分けることです。店舗併用住宅では、家屋は居住部分の床面積などで、敷地は居住部分に当たる面積で分けます。算式は、国税庁のNo.3452のページに載っています。
どう分けるかは、建物の間取りや使い方で変わります。たとえば、階段・廊下・玄関のように店と住まいで共用している場所や、店の奥の住まいに入る通路を、どちらに入れるかは自分では決めにくいところです。按分の方法は、売る前に税理士か管轄の税務署で確かめてください。この記事では、割合の目安は示しません。
| 居住に使っていた部分 | 控除の対象 | 按分 |
|---|---|---|
| 全体のおおむね90パーセント以上 | 建物全体を居住用として扱える | 必要なし(国税庁の案内) |
| 90パーセントに届かない | 居住に使っていた部分だけ | 家屋と敷地の両方で分ける |
相続した店舗兼住宅は、どちらの特例を使うかで条件が変わる
親が営んでいた店と住まいを相続して売る方には、3,000万円控除に近い特例が2つあります。名前が似ていて、条件はまったく別です。自分が使うのはどちらかを、先に決めてください。
| 自分が住んでいた家を売る | 相続した空き家を売る | |
|---|---|---|
| 国税庁の案内 | No.3452(店舗併用住宅)・コード3302 | コード3306 |
| 住んでいたのは | 売る本人 | 亡くなった親(被相続人) |
| 店舗併用の扱い | 居住部分だけ、おおむね90パーセント以上なら全体 | この記事では確認できていない |
左の列は、売る本人が店舗併用住宅に住んでいたときの話です。右の列は、相続した空き家の特例です。国税庁のコード3306には、対象を「主として被相続人の居住の用に供されていた一の建築物」とする書き方があります。また、相続した時から売る時まで、事業の用・貸付けの用・居住の用に使っていないことも、要件に入っています。
この特例は、租税特別措置法施行令(e-Gov法令検索、版ID:332CO0000000043_20260731_508CO0000000098、施行日:2026-07-31)でも、対象の家屋を「被相続人が主としてその居住の用に供していたと認められる一の建築物」に限っています。ほかに、昭和56年5月31日以前の建築であることなど、家屋の要件もあります(国税庁コード3306)。
ただ、店と住まいが同じ建物にあるときに、この特例がどこまで効くかは、国税庁のコード3306や、国税庁の質疑応答事例・申告書の書き方の案内では、確認できませんでした。そのため、この記事では「使える」とも「使えない」とも書きません。
ここに
国税庁のコード3306では、相続した時から売る時まで事業の用・貸付けの用に使っていないことが要件です。相続のあとも店を続けた、店の部分を貸した、という事実があると、要件に当てはまらなくなることがあります。相続のあとの使い方は、売る前に税理士か税務署へ伝えて確かめます。
店舗併用の建物を、そのまま売るのか、片付けてから売るのか、売り方の順番がつかめない場合は、手順を一緒に整理します。
店舗部分の特例と、廃業後の扱い
住まいの部分に使える特例の話をしてきました。では、店や作業場の部分には何もないのでしょうか。
国税庁のコード3455「店舗併用住宅を買い換えたときの特例」のように、事業に使っていた資産を売って、別の事業用の資産に買い換えるときの特例はあります。ただしこれは買い換えが前提です。売るだけでは使えないので、この記事では扱いません。
店を閉じたあと、1階を空けたまま2階だけに住んでいた、という場合もあります。こうした「廃業後の使い方」が控除の判断にどう影響するかは、建物の実際の使われ方で見られます。店を住まいに改装してから売る、といった手を打つ前に、税理士か税務署に、使い方と時期を伝えて相談するのが安全です。
消費税の扱いも、事業者が店の部分を売るときは変わる可能性があります。この記事では確認できていないので、税理士に聞く項目として挙げておきます。
固定資産税の住宅用地の特例は、居住部分が4分の1以上で残る
売ったあと、あるいは売るまでのあいだにかかる税金もあります。毎年の固定資産税です。
住まいの敷地は、固定資産税が軽くなる「住宅用地」の特例があります。店舗併用の建物でも、居住部分が建物の床面積の4分の1以上あると、特例の対象になる家屋として扱われます。地方税法施行令(e-Gov法令検索、令和8年8月22日施行の版)に、そう書かれています。
こと
人が住むための家が建っている土地の固定資産税を、軽くする仕組みです。店舗併用住宅では、居住部分の割合によって、特例の対象になる敷地の面積が変わります。
特例がどれだけ効くかは、居住部分の割合が表で区分されていて、割合が小さくなると対象の面積も小さくなる仕組みです。表の区分と率は、家屋の種類によって違い、改正もありえます。数字は、土地のある都の都税事務所で、自分の建物の居住割合を伝えて確かめてください。
ここで知っておきたいのは、建物を解体して更地にすると、この特例が外れることです。店が空いているからと先に壊すと、売るまでの固定資産税が上がる場合があります。時期の考え方は、更地にしたときの固定資産税と、解体の時期の決め方で説明しています。
売る前に、店舗併用住宅で決めておくこと
税の話を踏まえると、売る前に整理する順番が見えてきます。
店舗併用住宅を売るまでの整理の順番
- 誰がどこに住んでいたかを書き出す売る本人が住んでいたのか、亡くなった親が住んでいたのか。店の部分はいつまで使っていたか
- 使う特例を絞る自分の居住用か、相続した空き家か。条件が違う
- 按分の方法を決める居住部分と店の部分の分け方は、税理士か税務署で確かめる
- 売り方を比べる仲介か、業者の買取か。古家付きのままか、更地か
- 売って、翌年に確定申告特例は申告しないと受けられない
売り方の比較は、古家付き土地の売却で、古家のまま売る場合と解体する場合を並べています。仲介と買取の違いは、土地の買取業者の選び方にまとめました。店の設備や在庫、看板が残っているときは、遺品整理の費用と片付けの考え方も参考になります。
税金の特例は、売った翌年の確定申告で申告して初めて受けられます。土地売却の確定申告の期限と必要書類で、期限と必要書類を説明しています。
| 聞きたいこと | 窓口 |
|---|---|
| 居住部分の按分・特例が使えるか・税額 | 税理士か、管轄の税務署 |
| 固定資産税の住宅用地の特例・居住割合 | 土地のある都の都税事務所 |
| 売り方の比較・買い手の探し方 | 不動産会社(複数に相談して比べる) |
売る
- 売る本人が住んでいたのか、親が住んでいたのかを整理した
- 店の部分をいつまで使っていたか、相続のあとに使ったか貸したかをメモした
- 居住部分と店の部分の面積が分かる図面を用意した
- 固定資産税の通知書で、今の課税の状況を見た
- 解体する前に、固定資産税への影響を確かめた
下町の区では、商店や町工場に住まいが付いた建物が残っています。まちの様子や売り方は、墨田区・荒川区・葛飾区の売却ガイドも見てください。
店舗併用住宅の土地が、いくらくらいで売れそうか、まずは複数の会社の査定額を並べてみると、相場の幅がつかめます。店や設備が残ったままでも、状態を伝えて見てもらえます。
よくある質問
Q. 店舗併用住宅でも、3,000万円控除は使えますか?
他の要件を満たせば使えます。ただし、控除の対象になるのは、自分の居住に使っていた部分です。居住に使っていた部分が全体のおおむね90パーセント以上なら、全体が対象になります(国税庁 No.3452)。
Q. 親が店の2階に住んでいた家を相続しました。空き家の特例は使えますか?
店舗併用の建物にこの特例が使えるかは、この記事では確認できていません。国税庁のコード3306の要件に当てはまるかを、税理士か税務署に、建物の使い方を伝えて確かめてください。
Q. 店を閉めてから売るまでに、住まいの部分だけ使っていました。どう扱われますか?
使い方の実態で見られます。店を住まいに改装した場合などは、判断が分かれるおそれがあるので、売る前に税理士か税務署に、時期と使い方を伝えてください。
Q. 店舗併用住宅の固定資産税は、住宅と同じように安くなりますか?
居住部分が建物の床面積の4分の1以上あれば、住宅用地の特例の対象になる家屋として扱われます(地方税法施行令)。軽くなる程度は居住割合で変わるため、都税事務所で確かめます。
まとめ
- 店舗併用住宅で3,000万円控除が効くのは、自分が住んでいた部分だけ。居住部分がおおむね90パーセント以上なら全体が対象
- 居住部分と店の部分の按分は、自分で決めずに、税理士か税務署で確かめる
- 自分が住んでいた家を売るのか、相続した空き家を売るのかで、使う特例も条件も違う。店舗併用への効き方は、この記事では確認できていない
- 固定資産税の住宅用地の特例は、居住部分が床面積の4分の1以上で対象。解体すると外れる
- 売る前に、誰がどこをいつまで使っていたかを書き出しておく
出典:国税庁タックスアンサー No.3452「店舗併用住宅を売ったときの特例」、No.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」、No.3302「マイホームを売ったときの特例」、No.3455「店舗等併用住宅を買い換えたときの特例」(いずれも令和8年4月1日現在法令等)。いずれも2026年10月11日に閲覧。法令は e-Gov 法令検索(API v2)で本文を確認:地方税法施行令(版ID 325CO0000000245_20260822_508CO0000000251、施行日 2026年8月22日)、租税特別措置法施行令(版ID 332CO0000000043_20260731_508CO0000000098、施行日 2026年7月31日)。東京都主税局「住宅用地の申告等」。

