袋地・無道路地の売却|通行の権利と売り方の選択肢
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うちの土地、ぐるりと他人の土地に囲まれていて、道路に出るには隣の敷地を通るしかない。そんな土地を相続したり、長年持っていたりして、「これって売れるのだろうか」と手が止まっている方は少なくありません。
こうした土地は袋地(ふくろち)や無道路地(むどうろち)と呼ばれます。ふつうの土地と同じ売り方をすると、買い手がつかないことが多い形です。ただ、売る道がないわけではありません。この記事では、自分の土地が袋地かどうかの確かめ方、通行の権利でできること・できないこと、そして4つの売り方を、順番に説明します。
結論
袋地は、他人の土地を通る権利(囲繞地通行権)はあっても、その権利だけでは家を建てられません。ふつうの買い手には売りにくい土地です。
売り先は、隣地の人・道路につなげてからの仲介・今の状態のままの買取業者の3方向で考えます。まず自分の土地が本当に袋地なのかを役所で確かめます。そのうえで、隣地の人に話を持ちかける前に、買取など、ほかの売り方の見立ても聞いて選択肢を並べておくと、話を進めやすくなります。買取は、仲介より価格が下がりやすい点に注意してください。
自分の土地は袋地?無道路地?まず確かめる方法
袋地かどうかは、公図・登記簿・前面道路の種類を役所と法務局で確かめれば分かります。思い込みで動く前に、ここから始めてください。
袋地と無道路地は、よく同じ意味で使われます。ざっくり分けると次のとおりです。
こと
袋地は、他人の土地に囲まれて、公道に出るには他人の土地を通るしかない土地のことです。無道路地は、建築基準法上の道路に接していない土地のことで、実務ではほぼ同じ意味で使われます。
旗竿地は、細い通路が自分の土地の一部になっていて、その通路で道路に出られる形です。袋地は、その通路すら自分のものではありません。旗竿地の売り方は旗竿地が売れない理由と売り方で説明しています。袋地は、その一歩先の形だと考えると分かりやすいです。
確かめる手順
ここでは、持っていくものと聞くことを順に書きます。
- 法務局で、公図と登記簿(登記事項証明書)を取る。 土地の形と、周りの土地の所有者が分かります。地番(土地の住所にあたる番号)を伝えれば取れます。
- 区役所の道路や建築の担当窓口で、前面の道の種類を聞く。 窓口の名前は区によって違います。「建築の指導」や「道路の管理」を扱う課、と伝えれば案内してもらえます。持っていくのは地番の分かる書類です。
- 「この土地は建築基準法の道路に接していますか」と聞く。 接しているかどうかは、道の種類と幅で決まります。
- 通路として使っている土地が、誰のものかを見る。 公図と登記簿で、通路部分の地番と所有者を確認します。私道なら、持分(共有している割合)が自分にあるかどうかも大事です。
自分では判断しにくいときは、建築士や土地家屋調査士に見てもらう方法もあります。
道路に接するために必要な幅や長さには、決まった数値があります。具体的な数値は区役所か建築士で確かめてください。この記事では数値を書いていません。
道路の種類や接道の基本は、接道義務の解説に書いています。
袋地で起きること|建て替え・住宅ローン・買い手
袋地は、建て替えができず、住宅ローンも付きにくく、買い手の数が限られる土地です。売りにくいのは、この3つが重なるからです。
- 建て替えができない。 家を建てる土地は、決められた幅で道路に接していないといけません。袋地はこの条件を満たさないため、今の家が古くなっても、原則としてそのままでは新しく建てられません。
- 住宅ローンが付きにくいことが多い。 金融機関は、担保にする土地の価値を見ます。建て替えできない土地は評価が下がるため、買い手がローンを組みにくくなることが多いです。扱いは金融機関ごとに違うため、買い手が事前に確かめる場面になります。
- 買い手が限られる。 家を建てて住みたい個人は、ほぼ対象から外れます。買うのは、隣地の人か、事情を分かったうえで買う業者が中心になります。
再建築不可の土地全体の話(費用や買取の考え方)は、再建築不可の土地の売却と買取にまとめています。袋地は、その中でも特に条件が厳しい形のひとつです。
ここに
「今は古い家が建っているから大丈夫」とは限りません。古い家が建った当時のルールと今のルールは違います。壊したあとに、同じ大きさの家が建てられるとは限らないため、解体する前に、建築士や区役所に相談してください。
ただし、例外があります。道路に接していない土地でも、役所の許可や認定を受ければ建てられる場合があります。この制度は接道の例外(許可・認定)の解説で詳しく説明しています。袋地でも、周りの状況によっては、この例外が使えることがあります。使えるかどうかで、売りやすさが大きく変わります。
通行の権利(囲繞地通行権)でできること・できないこと
袋地の持ち主には、他人の土地を通って公道に出る権利があります。ただし、通れることと、家を建てられることは別の話です。
こと
袋地の持ち主が、公道に出るために、周りの他人の土地を通ることができる、民法に定められた権利です。通る場所や方法は、通る人にとって必要で、しかも通られる側の損害が最も少ないものを選ぶ、と定められています。
この権利があるので、袋地の持ち主が「家に帰れなくなる」ことは、法律上はありません。ここは安心してください。ただし、通れる場所や幅、車で通れるかどうかは、周りの土地の状況で変わります。もめることもあります。
民法は、通る場所と方法について、通る人にとって必要で、通られる側の損害が最も少ないものを選ぶよう定めています。必要があるときは、通路を新しくつくることもできます。ただし、どこをどの幅で通るのが「損害が最も少ない」かは、土地ごとの事情で決まります。
海や川、水路を渡らないと公道に出られない土地や、崖があって公道との高低差が大きい土地も、同じ考え方で通行の権利が認められます。崖や高低差のある土地の売り方は、高低差・擁壁のある土地の売却で説明しています。水路をはさんで道路に出ている土地の確かめ方は、敷地の前に水路・里道があるときの売り方にまとめています。
この節の民法の内容は、編集部が法令の原文(e-Gov 法令検索)で確かめました(2026年9月30日時点)。ただし、「持ち主が変わったときにこの権利がどうなるか」は、条文に直接の書き方がなく、裁判所の判断の領域です。この点は、編集部では原文を確かめていません。個別の事情で結論が変わるので、実際の場面では弁護士に相談してください。
一方で、この権利には限界もあります。
通行の権利で「できること」と「できないこと」
通行の権利でできること
- 他人の土地を通って公道に出る
- 必要があるときは、通路をつくる
- 袋地の持ち主が変わっても、原則として新しい持ち主が通る権利は続くと考えられている
通行の権利だけではできないこと
- 建築基準法上の道路に接したことにはならない
- それだけでは、建て替えはできない
- 通路の土地を自分のものにはできない
なお、ここで説明したのは、法律が当然に認める通行の権利です。契約で決めて登記に載せる通行の権利(通行地役権)は、別の仕組みです。登記事項証明書のどこで確かめるかは、通行地役権を登記の乙区で確かめる方法で説明しています。
通行料(償金)の話
通る側は、通られる側に、償金(しょうきん)を払うのが原則です。通行によって通られる側が受ける損害に対して払うお金で、民法に定めがあります。
払い方には決まりがあります。通路をつくったことで生じた損害の分は別として、通行そのものに対する償金は、1年ごとに払うことができます。
ポイント:
土地を分けたことで袋地ができた場合は、分けた相手の土地だけを通ることができ、償金を払う必要はないと民法に書かれています。土地の一部を譲ったことで袋地になった場合も、同じ扱いです。袋地になった経緯を、まず登記簿や昔の売買の書類で確かめてください。
このように、償金がいるかどうかは、袋地になった経緯で変わります。金額は個別の事情で決まるため、この記事では目安を出しません。争いになりそうなときは、弁護士に相談してください。
承諾書があるかないかで実務が変わる
売るときに大事なのは、通路の所有者から、通行や掘削(水道管などを通すために地面を掘ること)の承諾書をもらえているかどうかです。
権利があっても、書面がないと、買い手や金融機関は「将来もめないか」を心配します。承諾書が取れていれば、話は進みやすくなります。承諾書の取り方は、私道持分なしの土地の承諾書と売却の進め方が参考になります。私道でも隣地の通路でも、考え方は近いです。
| 状態 | 売却での見られ方 |
|---|---|
| 通路の所有者と書面で通行・掘削の承諾がある | 買い手や業者に説明しやすい |
| 口約束だけで、書面がない | 売主が代わったときにもめる心配があり、評価が下がりやすい |
| 承諾がなく、通路の所有者とも連絡が取れない | 買い取る業者は限られ、断られることもある |
袋地の売り方が分からないときや、通路の承諾書をどう取るか迷うときは、状況を一緒に整理します。
袋地の売り方4つ|必要なものと価格の傾向
売り方は、隣地の人に売る、隣地の一部を買ってつなげる、買取業者に売る、仲介で出す、の4つです。どれが合うかは、隣地との関係と、土地の状態で変わります。
袋地の売り方を選ぶまでの流れ
- 袋地かどうかを確かめる公図・登記簿・前面道路の種類を確認する
- 通路の権利を整理する通路の所有者と、承諾書があるかを確認する
- 隣地に話を持ちかけるか決める関係が良ければ、隣地への売却や一部購入を検討する
- 買取業者にも見てもらう今の状態のままの買取価格を確かめて、比べる
| 売り方 | 必要なもの・条件 | 価格の傾向 |
|---|---|---|
| ①隣地の人に売る | 隣地の人に買う気があること。境界の確認 | 買う人の事情次第で幅が大きい。一般の買い手より高く買う人もいる |
| ②隣の土地の一部を買い、道路につなげてから売る | 隣地の一部を売ってもらえること。分筆(土地を分けて登記すること)の費用と手間 | 建てられる土地になれば売りやすく、仲介で出しやすい |
| ③買取業者に今の状態のまま売る | 訳あり物件を扱う業者に見てもらう | 仲介より下がりやすいが、早く確実に売れる |
| ④仲介で出す | 買い手が見つかるまで待つ | 買い手が限られ、時間がかかることがある。値下げになることもある |
①隣地の人に売る
隣地の人は、一般の買い手より高く評価してくれることがあります。自分の土地と合わせれば、土地が広くなったり、形が整ったりするからです。選択肢のひとつとして、検討する価値があります。
ただし、隣地の人が買うと決まっているわけではありません。こちらの事情を知られて、安く提示されることもあります。関係が悪いときや、相手に買う余力がないときは、ほかの方法と並べて考えます。
②隣の土地の一部を買い、道路につなげてから売る
袋地に道路までの通路を確保すれば、建てられる土地になります。隣地の一部を買って、自分の土地と一体にする方法です。土地が建てられる形になれば、ふつうの仲介でも売りやすくなります。
この方法は、隣地の人が一部を手放してくれることが条件です。分筆や測量の費用もかかります。売れる価格が、その費用を上回るかを、先に見積もってください。測量の費用の決まり方は土地の測量費用で調べられます。
③買取業者に今の状態のまま売る
袋地を専門に扱う買取業者なら、通路の承諾書がなくても、今の状態のままで検討してくれることがあります。ただし、会社によって対応は違います。手間が少なく、早く売れるのが強みです。その代わり、買取の価格は仲介より下がりやすい傾向があります。
業者の選び方は、土地の買取業者の選び方にまとめています。袋地は、業者ごとに得意・不得意が分かれます。複数社に見てもらって、比べてください。
④仲介で出す
ふつうの仲介で出すこともできますが、買い手が限られるため、長引くことがあります。仲介の期間は長くなりやすく、途中で値下げをすることもあります。
ポイント
先に「買取ならいくらになるか」を確かめておくと、隣地の人と話すときの、ひとつの目安になります。ただし、買取の価格は、仲介より下がりやすい価格です。隣地の人がその価格で買ってくれるとは限りません。金額の話は、慎重に進めてください。
隣地との交渉で気をつけること
隣地の人との話は、いきなり売買の話から入らず、まず通路と境界の状況を、お互いに確かめるところから始めるのがおすすめです。袋地は、隣地の人の協力がないと動かない場面が多いからです。
気をつけたい点は次のとおりです。
- 書面に残す。 通行や承諾、境界のことは、口約束にしない。承諾書や覚書として書面にする。
- 境界を確かめておく。 境界があいまいだと、売買や分筆の話が止まります。境界が決まっていない土地の進め方を先に読んでおくと、話の見通しが立ちます。
- 越境がないかを見る。 塀や屋根が隣の敷地にはみ出していると、話がこじれやすくなります。越境がある土地の売却と覚書で対処を確認できます。
- 感情的にならない。 「通らせてもらっている」立場だと、つい遠慮しがちです。反対に、権利を強く主張しすぎると、関係がこじれます。どちらも、売却の妨げになります。
- お金の話は慎重に。 通行料や、土地を売る価格の話は、金額を決める前に、専門家に相談してください。
隣地の
- 公図と登記簿で、通路の所有者を確認した
- 通路の承諾書があるか、なければ何が書面になっているか確認した
- 境界標(境界を示す杭など)の位置を見た
- 買取など、ほかの売り方の見立ても聞いてみた(できれば)
隣地の人との交渉が難しそうなときは、弁護士や、司法書士・土地家屋調査士といった専門家に相談する方法もあります。この記事では、交渉の代理はしません。
どこに相談するか
相談先は、確かめたいことによって違います。役所、専門家、買取業者を、目的で使い分けてください。
| 知りたいこと | 相談先 |
|---|---|
| 道路に接しているか、建て替えできるか | 区役所の建築や道路の担当窓口、建築士 |
| 境界・測量・分筆 | 土地家屋調査士 |
| 通路の権利や、隣地とのもめごと | 弁護士 |
| 名義や登記のこと | 司法書士 |
| 今の状態でいくらで売れるか | 訳あり物件を扱う買取業者 |
窓口の名前は区によって違います。区役所の窓口でできること・できないことは、別の記事で整理しています。
袋地は、自分ひとりで判断すると、選択肢を見落としやすい土地です。まず役所で状況を確かめ、そのうえで、専門業者の見立ても並べてみてください。
袋地の売り方をどう選ぶか、役所で何を確かめるか、一緒に整理します。
袋地は、ふつうの仲介では買い手が見つかりにくい土地です。訳ありの不動産を専門に買い取る会社なら、今の状態のまま買取価格を出してもらえることがあります。買取は仲介より価格が下がりやすいこと、申し込むと電話やメールが来ること、対象の土地や地域が会社ごとに違うことは、あらかじめ知っておいてください。
よくある質問
Q. 袋地でも、売ることはできますか?
売れます。ただし、家を建てたい一般の買い手には向かないため、隣地の人や、袋地を扱う買取業者が主な相手になります。売り方の選択肢は、本文の「袋地の売り方4つ」を見てください。
Q. 通路の承諾書がないと、売れませんか?
承諾書がなくても売れる場合はあります。ただ、あるほうが、買い手に説明しやすく、評価も下がりにくくなります。取れそうなら、売る前に取っておくのがおすすめです。
Q. 通行の権利があれば、建て替えもできますか?
できません。通行の権利は「他人の土地を通れる」というだけです。家を建てるには、建築基準法上の道路に接している必要があり、別の話です。例外の制度が使えるかは、区役所で確認してください。
Q. 隣地の人が売ってくれないときは、どうすればいいですか?
隣地に売る、一部を買う方法は使えなくなるため、買取業者に今の状態のまま見てもらう方法が中心になります。関係がこじれているときは、弁護士に相談することも検討してください。
Q. 袋地の買取価格は、どのくらいですか?
土地の形、通路の状況、地域で大きく変わるため、この記事では金額を出しません。仲介より下がりやすい傾向はあります。複数の買取業者の見積もりを並べて比べてください。
まとめ
- 袋地は、他人の土地を通らないと公道に出られない土地。まず公図・登記簿・区役所で、本当に袋地かを確かめる。
- 通行の権利(囲繞地通行権)があっても、それだけでは建て替えできない。買い手は限られ、住宅ローンも付きにくい。
- 売り方は、隣地の人に売る、隣地の一部を買ってつなげる、買取業者に売る、仲介で出す、の4つ。
- 通路の承諾書があるかで、売却の進めやすさが変わる。書面にしておく。
- 隣地の人との話は書面に残し、境界と越境を先に確かめる。買取の見立ても並べて、選ぶ。
なお、必要な幅などの具体的な数値は、区役所か建築士で確かめてください。この記事では数値を書いていません。


