古家・空き家・相続

雨漏りや傾きがある家は、直さずに売れる?告知と直す判断の基準

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雨が降るたびに、天井にしみが広がる。柱が少し傾いて、ビー玉を置くと転がっていく。実家や古い家を手放そうとしたとき、そんな不具合が気になって「直さないと売れないのでは」と手が止まる方は多いと思います。

この記事は、直すか、直さずに売るかを、買い手への伝え方(告知)と、売ったあとの責任(契約不適合責任)の面から決めていく記事です。修理の金額の相場は書きません。何で決まるかと、見積もりの取り方を中心にまとめます。シロアリは別の記事に任せ、ここでは雨漏りと傾きを扱います。

結論
雨漏りや傾きがあっても、直さずに売ることはできます。ただし知っている不具合は、買い手に伝えるのが先です。伝えたうえで、今の状態のまま売るか、直してから売るかを、買い手の種類と建物の残し方で決めます。
迷うなら、工事を頼む前に「今のまま」の買取額や査定額を聞いておくと、直す意味があるかが数字で比べられます。

雨漏りのある家は、直さなくても売れる|先に決まるのは「伝えること」

雨漏りがある家でも、直さずに売ること自体は問題ありません。売るために必ず直さなければいけない、という決まりはないからです。先に決まるのは、直すかどうかではなく、知っていることを買い手に伝えることです。

買い手の側から見ると、雨漏りは「住み始めてから困るもの」です。だから、伝えずに売って後から分かると、トラブルになりやすい。逆に、伝えたうえで価格に織り込んでもらえば、直さないまま売っても話は成り立ちます。

売る相手によっても違いがあります。買い手が建物を壊して新築する前提なら、屋根や壁の傷みは価格にあまり影響しないことがあります。反対に、そのまま住む人やリフォームして使う人なら、雨漏りの場所や原因が価格の中心になります。

古家をどう売るか、解体するかどうかの全体像は古家付き土地を売るときの相場と判断基準にまとめています。この記事は、その中の「建物に不具合があるとき」だけを掘り下げます。

道路古家付きのまま売る築40年解体して更地で売る更地
古家付き土地:解体すると買い手は見つけやすくなる一方、解体費がかかり、固定資産税の軽減もなくなります。

雨漏りの告知で伝えること|今・過去・直した跡

告知書には、いま漏れているかどうかだけでなく、過去の雨漏りや直した履歴も書くのが安全です。直したから「なかったこと」になるわけではなく、買い手が知りたいのは「また起きるのか」だからです。

書き方の仕組み(告知書とは何か、免責特約とのつながり)は、契約不適合責任と免責の考え方の「告知書の書き方」で説明しています。ここでは、雨漏りに当てはめた書き方だけを示します。

状況 告知書への書き方の例
今、雨のたびに漏れている 場所(2階の北側の部屋の天井など)と、気づいた時期を書く
天井にしみがあるが、漏れは見ていない 「しみがある。原因は調べていない」と、見たままを書く
数年前に漏れて、屋根を直した 直した時期・範囲・工事をした会社・保証書の有無を書く
住んでいないので分からない 「長く住んでおらず、状況は不明」と書く

「知らなかった」と「確かめなかった」は同じ扱いになるとは限りません。しみや雨の跡を見たのなら、原因が分からなくても、見たことは書くほうが後で説明がつきます。

告知書の書式は不動産会社や団体ごとに違います。どこまで書くかは、渡された書式の欄に沿って、欄に収まらないことは余白に添えます。過去に一度だけ漏れた、もう直した、という場合も、書くかどうか迷うなら不動産会社に相談してください。この記事では、書式の項目を一次の資料では確かめられていません。

ここに注意

天井のしみをクロスの張り替えや塗装で隠してから売るのは、知っていたことを伝えなかった、と受け取られるおそれがあります。直したなら、直したことを書いて渡してください。

傾きがある家の伝え方と、測り方

傾きは、「傾いている気がする」で終わらせず、分かる範囲で測ってから書くほうが、買い手との話が進みます。感覚だけだと、実際より大げさにも控えめにも伝わってしまうからです。

床や柱の傾きは、建物の調査(インスペクション)で測れます。国には、住宅の紛争を扱うときの参考にする傾きの基準(国土交通省「住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準」)があります。ただし、これは新築住宅の紛争を想定したものです。古い家の売買で「どこから不具合として告げるべきか」を決めた線ではないため、この記事では数字を書きません。

売るときの目安は、傾きに気づいているなら、大きさにかかわらず「気づいている」と伝えることです。どの程度が問題になるかは、調査をした専門家と不動産会社に聞いてください。

売主がやることは、次のとおりです。

  • 床にビー玉を置く、柱に下げ振り(おもりを糸で吊るしたもの)を当てるなど、気づいた状態を写真と一緒に記録する
  • 建具(ドア・窓)が閉まりにくい、壁にひびがあるなど、傾きに関係しそうな症状もメモする
  • 買い手や不動産会社から調査の依頼があれば、立ち会えるように日程を空けておく

調査を売主が先に頼むかどうかは、売り方しだいです。解体して更地で売る予定なら、傾きの調査にお金をかける意味は小さいです。家を残して売るなら、調べておくと、直す場合と現況の場合を比べやすくなります。



古家付き土地の売却|相場・注意点と解体するかの判断基準

傾きや雨漏りのある家を、どう伝えてどの売り方にするか整理がつかないときは、売り方の比較から一緒に進められます。

免責にしておけば安心?守られない場合

「現況のまま、責任を負わない」という特約(免責特約)を付ければ、雨漏りや傾きのある古家も売りやすくなります。ただし売主が知っていたのに伝えなかった不具合は、特約があっても責任を免れません。

仕組みは免責特約を付けて現況で売るときの注意点で詳しく書いたので、ここでは雨漏りと傾きの場面だけ補います。

  • 個人が売主のときは、責任を負う期間を区切ったり、負わない特約を付けたりできる。期間や範囲は、契約書で決まる
  • 「雨漏りは知っていたが、特約があるから書かなかった」は通らない。民法は、責任を負わない特約をしても、知りながら告げなかった事実については責任を免れないと定めている
  • 買い手が不動産会社(買取)でも、売主が個人なら、考え方は同じ。知っていることは伝える

どこまでが「知っていた」にあたるかは、事情で変わります。書くか迷うことは、書いておくか、契約の前に不動産会社に相談するのが安全です。なお、売主が不動産会社の場合は決まりが違い、この記事の対象外です。

ことばの解説:契約不適合責任

売った家や土地が、契約で約束した内容と違っていたとき、売主が買い手に対して負う責任のことです。修理の請求や、代金の減額などを求められることがあります。

つまり、免責は「伝えたうえで、残りのリスクを買い手に持ってもらう」ための仕組みです。伝えることと免責にすることは、セットで考えます。

直してから売る/直さずに売る|分かれ道は4つ

どちらが得かは、物件と買い手で変わります。直した費用が、そのまま売値に上乗せされて戻るとは限りません。まず分かれ道を4つ並べて、自分の家を当てはめてください。

直してから売る/直さずに売る

直してから売る

  • 買い手の不安が減りやすい
  • 工事の費用と日数が先にかかる
  • 直した範囲と保証を書面で渡せる

直さずに売る

  • 先に出るお金がない
  • 知っている不具合は告知書に書く
  • 買い手は直す前提で価格を見る

1. 買い手が業者か、住む個人か

買取業者は、直す費用を見込んだうえで、今の状態のまま価格を出します。状態が悪くても引き取ってもらえることがある一方、価格は仲介より低くなりやすいです。住むための個人が買い手の場合は、雨漏りの有無や保証を気にする人が増えます。

2. 建物を残すか、解体するか

建物を壊して新築する買い手が多い土地なら、屋根の雨漏りを直しても価格に反映されにくいです。解体の費用の考え方は木造の解体費用は何で決まるかに、助成金が出る区の探し方は東京23区の解体助成金のまとめにあります。

3. 不具合の広がり(原因が分かっているか)

雨漏りは、原因の場所を特定できるかどうかで、工事の大きさがまるで変わります。屋根の一部の傷みなのか、壁の中や柱まで水が回っているのか。傾きも同じで、床の沈みだけなのか、基礎や地盤の問題なのかで、直し方が別物になります。ここは見た目では分からず、調べないと決まりません。

4. 時間とお金の余裕、通える距離

直すには、見積もり・工事・確認の手間がかかります。遠方に住んでいて通えない、相続した家を早く手放したい、という場合は、直さずに売る側に傾きます。

直す・直さないの目安(物件によって変わります)

直す側に傾きやすい

  • 原因が分かり、範囲が限られている
  • 住む個人に売りたい
  • 時間と資金に余裕がある

直さない側に傾きやすい

  • 傷みが広く、建物の価値が低い
  • 壊して建て替える買い手が多い
  • 早く手放したい、通えない

あくまで目安です。直した場合の手取りと、今のままの手取りを並べて比べるのがいちばん確実で、そのために「今のまま」の買取額や査定額を、工事の前に聞いておきます。

なお、再建築不可の家は、直してから売るかどうかの考え方が少し違います。建て替えができないぶん、建物の状態がそのまま価値になるからです。該当する方は再建築不可の家をリフォームして売るかの判断を先に見てください。



再建築不可の家はリフォームして売る?そのまま売る?

直すと決めたとき|見積もりの取り方と、記録の残し方

直すなら、工事の前に原因と範囲を書面にしてもらい、複数社で比べるのが基本です。この記事では修理の金額は書きません。屋根の形や広さ、傷みの広がり、足場が要るかどうかで変わるため、実際の見積もりで確かめるしかないからです。

直すと決めたときの順番

  1. 写真と状況を記録漏れる場所、しみ、傾きの様子を日付つきで撮る
  2. 原因を調べてもらう屋根・外壁・防水・床下など、どこが原因か
  3. 複数社に見積もりを頼む工事の範囲・保証・期間を書面で並べる
  4. 工事の記録を残す契約書・保証書・写真を、売るときの告知に使う

見積もりを比べるときは、金額だけでなく次の点を見ます。

  • 原因の特定のために、どこを調べて、何が分かったのか。報告が口頭だけでないか
  • 部分補修か、全面か。同じ場所が再発したときの保証があるか
  • 見積もりが無料か、調査から有料か。依頼する前に確かめる

直した記録は、売るときの強い材料になります。保証書や工事の写真があれば、告知書に「いつ、どこを、誰が直したか」を書けて、買い手の不安も減ります。反対に、直した跡があるのに履歴が分からないと、買い手は「また漏れるのでは」と見るので、記録は捨てずに残してください。

売るつもりの家を直すかどうかは、住みながら売る場合とも別の話になります。住んでいる家の内覧やリフォームの考え方は住みながら家を売るときのコツを見てください。

買取に出す選択肢と、シロアリが気になるとき

直さずに、今の状態で買い取ってもらう道もあります。訳ありの建物を、そのままの状態で見てくれる専門の買取会社があるためです。ただし価格は仲介より下がりやすく、申し込むと電話やメールで連絡が来ます。

買取という売り方の考え方は空き家を業者に買い取ってもらう流れに、会社を選ぶときの確認点は買取業者の見積もりで確認する点にまとめています。複数社に査定を出して相場の幅を見たいなら、一括査定を狭小地で使うときの向き不向きも参考になります。訳ありの不動産全体の考え方は訳あり不動産の種類別の売り方から辿れます。

シロアリの被害がありそうなときは、告知の仕方が少し違います。見つけたときの伝え方はシロアリ被害は売るとき伝える?にまとめたので、そちらを読んでください。この記事の雨漏り・傾きの考え方は、そのままつながります。

どこが原因で売れないのか分からないときは、家の不具合のほかに土地が売れない原因を見分ける方法も手がかりになります。

売る前のチェックリスト

  • 雨漏り・しみ・傾きを、日付つきの写真で記録した
  • 過去の修理の書類(保証書・領収書)を探した
  • 知っていることを、告知書に書く準備ができた
  • 直す場合と直さない場合の両方で、手取りを比べた
  • 工事の前に、「今のまま」の査定額か買取額を聞いた

雨漏りや傾きのある家は、ふつうの仲介では買い手が見つかりにくいことがあります。訳ありの不動産を専門に買い取る会社なら、今の状態のまま買取価格を出してもらえることがあります。ただし、価格は仲介より下がりやすく、申し込むと連絡が来ます。対応できる物件や地域は会社ごとに違うので、条件は申し込む前に確かめてください。

よくある質問

Q. 雨漏りがあることを、売るとき必ず伝えなければいけませんか?

知っている雨漏りは、伝えるのが基本です。知っていた不具合を伝えないまま売ると、免責の特約を付けていても責任を問われるおそれがあります。民法は、責任を負わない特約をしても、知りながら告げなかった事実は責任を免れないと定めています。過去の雨漏りや修理した履歴、原因が分からないしみも、分かる範囲で告知書に書いてください。どこまでが対象になるかは事情で変わるため、書くか迷うときは、契約の前に不動産会社に相談してください。この記事では、告知の範囲を決めた公的なガイドラインは確かめられていません。

Q. 雨漏りを直せば、告知はしなくていいですか?

直した場合も、直したことを含めて伝えるほうが安全です。いつ、どこを、誰が直したか、保証書があるかを書面で渡せると、買い手の不安も減ります。

Q. 傾いた家は、そのままでも売れますか?

売れます。傾きの程度によっては、建物は評価されず、土地として見られることもあります。測って記録し、分かっていることを伝えたうえで、解体前提の買い手や買取会社に当たるのが一つの道です。

Q. 雨漏りの調査や見積もりは、売る前にしておいたほうがいいですか?

売り方しだいです。家を残して売るなら、調べておくと直す場合と現況の場合を比べられます。解体して更地で売る予定なら、調査の意味は小さいです。調査が有料か無料かは、依頼する前に確かめてください。

Q. 雨漏りのある家は、相続したばかりでも売れますか?

売れます。相続登記(名義を相続した人に変える手続き)は先に済ませる必要があります。流れは相続した土地を売る手順(相続登記から引き渡しまで)で説明しています。

まとめ

  • 雨漏りや傾きがあっても、直さずに売ることはできる。先に決まるのは、知っていることを伝えること
  • 告知書には、今の状態だけでなく、過去の雨漏りや修理の履歴も書く。分からないことは「不明」と書く
  • 免責特約を付けても、知っていて伝えなかった不具合は責任を免れない。伝えることと免責は、セットで考える
  • 直すかどうかは、買い手の種類・建物を残すか・不具合の広がり・時間の余裕で決まる。工事の前に、今のままの査定額や買取額を聞いておく
  • シロアリは別の記事(伝え方と直す判断の記事)で確かめる

この記事の監修者:十坪とつぼさん(宅地建物取引士)
東京23区で土地の仕入れ営業を担当する宅地建物取引士。狭小地・旗竿地・古家付き土地など、小さくて売りにくい土地を日々見ている。

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