古家・空き家・相続

相続土地国庫帰属制度とは?いらない土地を国に返す方法と、使えないケース

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相続した土地に、家を建てる予定も住む人もいない。売ろうにも、買い手が見つかりそうにない。そんな土地を前に、「いっそ国に返せないものか」と考える方が増えています。

2023年に始まった相続土地国庫帰属制度は、まさにこのための制度です。似た名前の相続登記の義務化は、名義を自分に変える手続きの話でした。こちらは、名義を変えたあとに「持ち続けるか、売るか、国に返すか」を考える段階の話です。

この記事では、制度の仕組みと、国に返せない土地の具体的な条件、かかる費用を整理します。あわせて、国に返すのと売るのと、どちらが手元に残るかも比べてみます。

結論
相続土地国庫帰属制度を使うと、一定の条件を満たした土地を国に引き取ってもらえます。ただし建物がある土地、担保が付いている土地、境界が分からない土地などは対象外です。
承認されても、10年分の管理費にあたる負担金を納める必要があります。市街化区域などの宅地は面積で計算され、20万円を超えます(50㎡で約41万円、仮の例)。要件が厳しく費用もかかるため、買い手が見つかりそうな土地なら、売ったほうが手元に残る場合があります。

相続土地国庫帰属制度とは?相続登記の義務化との違い

相続で土地を受け継いだとき、まずやることは相続登記です。名義を亡くなった方から自分に変える手続きで、2024年4月から義務になりました。期限や過料は相続登記の義務化とは?期限・過料と、売る前にやることで説明しています。

この記事のテーマは、その先の話です。名義を変えたあと、その土地をどう扱うか。売る、そのまま持ち続ける、そして国に返す。この記事では、国に返す選択肢である相続土地国庫帰属制度を掘り下げます。

正式名称は「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(相続土地国庫帰属法)です。2023年4月27日に施行されました(出典:法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」)。相続、または相続人への遺贈によって土地を取得した人が申請できます。共有の土地なら、共有者全員で申請しなければなりません。相続した土地が共有名義で、そもそも話し合いがまとまらないという場合は、共有名義の土地を売るには|全員の同意が必要な理由と進め方も参考になります。

「国に返せないなら、自治体に寄付できないか」と考える方もいますが、こちらも断られることがあります。理由はいらない土地は寄付できる?自治体・法人に断られる理由と手放し方で整理しています。

この制度は、いわば最後の手段です。まずは売る道を探し、それでも難しいときの選択肢として考えるのが現実的というのが、このメディアの立場です。理由は、このあと説明する要件の厳しさにあります。

空き家は国に返せる?建物があるとどうなるか

空き家が建ったままの土地は、国に返す申請ができません。建物が建っている土地は、申請の時点で却下されます(出典:相続土地国庫帰属法の承認申請ができない土地と却下の規定、版ID 503AC0000000025_20250601_504AC0000000068、施行日 2025-06-01)。古くて誰も住んでいない家でも、倉庫や物置でも、建物にあたれば同じです。小さな物置小屋のように建物にあたらない場合もありますが、その場合も別の要件(管理に過分な費用や労力がかかるか)で見られます(出典:法務省「相続土地国庫帰属制度に関するQ&A」)。

では、空き家のある土地は国に返せないのかというと、そうではありません。建物をなくして更地にすれば、申請できる土地になります。ただ、そこから先はお金の話になります。

空き家のある土地を国に返すまでの順番

空き家のある土地を国に返したいときの順番

  1. 建物を解体して更地にする解体費がかかる。見積もりは土地の広さや建物の構造で変わる
  2. 更地にしてから申請する審査手数料を払う。承認されたら、負担金も納める
  3. かかったお金の合計を、売った場合と比べる解体費+審査手数料+負担金が、国に返すときの出費の合計

解体してから「やっぱり不承認でした」となると、壊した建物は戻りません。解体の前に、法務局の事前相談で見通しを聞いておくほうが安全です。ただし事前相談は、出した書類から分かる範囲での担当者の見解です。申請後には実地調査があるため、結果が違うこともあります(出典:法務省「相続土地国庫帰属制度に関するQ&A」)。相談先は、費用の節の「事前相談はどこでするのか」に書きました。

解体費の決まり方や見積もりの取り方は、木造の解体費用は何で決まる?見積もりの取り方と狭小地の注意で確かめられます。

「解体して国に返す」と「古家付きのまま売る」の比べ方

空き家がある土地に絞ると、比べるのは次の2つです。解体するかどうかが、最初の分かれ目になります。

比べるところ 解体して国に返す 古家付きのまま売る
解体費 自分で払う 払わずに済む場合がある
手元のお金 解体費+審査手数料+負担金が出ていく(解体費に、手数料14,000円と、負担金20万円以上を足した額。宅地は面積で上がる) 買い手が見つかれば、代金が入る可能性がある
先に決めること 解体してよいか、費用を出せるか 古家付きで買う人がいるか
うまくいかないとき 不承認でも、解体費と審査手数料は戻らない(審査手数料は、却下・不承認・取り下げでも返らない) 買い手がつかなければ、持ち続ける費用が続く

国に返す場合は、解体の前に「合計いくらかかるか」を出しておくのがコツです。解体費の見積もりが出たら、そこに審査手数料(1筆14,000円)と、負担金(20万円以上。市街化区域の宅地は面積で上がり、50㎡で約41万円)を足した額が、国に返すための出費です。金額は土地ごとに変わるので、自分の土地で出してください。この合計と、古家付きのまま売ったときの手残りを並べて比べてください。

古家を残したまま売るときの考え方は、古家付き土地の売却|相場・注意点と解体するかの判断基準で整理しています。買い手が見つかりにくい土地でも、古家付きのまま今の状態で買い取る会社が見つかることはあります。

解体する前に確かめたいこと

家が建っている土地は、固定資産税と都市計画税が軽くなる「住宅用地の特例」を受けています(出典:地方税法の住宅用地の特例の規定、版ID 325AC0000000226_20261001_508AC0000000002)。家を壊して更地になると、この特例は使えなくなり、税額が上がることがあります。その年の1月1日の状態で判断されます(出典:地方税法の賦課期日の規定、同じ版ID)。くわしくは古家付き土地の売却|相場・注意点と解体するかの判断基準の「固定資産税の住宅用地特例」で確かめられます。

また、登記された建物を壊したときは、所有者が、壊した日から1か月以内に建物の滅失登記を申請しなければなりません。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の定めがあります(出典:不動産登記法の建物滅失登記と過料の規定、版ID 416AC0000000123_20260624_508AC0000000046)。税額の見込みは市区町村の税務課、登記は法務局で、壊す前に確認してください。

国に返すのも売るのも難しいとき、自治体や法人への寄付という道もありますが、断られることがあります。理由と、断られたあとに残る道は自治体や法人に断られる理由と手放し方にまとめました。

いらない土地を手放す4つの道|国に返す・売る・寄付・相続放棄の分かれ目

「いらない土地」を手放す道は、国に返す、売る、寄付する、相続放棄するの4つです。国に返すのは、そのうちの1つにすぎません。どれを選ぶかは、「お金が入るか出るか」「他の財産まで巻き込まないか」「相手が受けてくれるか」で分かれます。

道 お金の動き 分かれ目になること
国に返す(この制度) 審査手数料と負担金を払う 却下・不承認の条件に当てはまらないこと。相続、または相続人への遺贈で土地を受け継いだ人だけが申請できる
売る 代金が入る可能性がある 買い手が見つかるか。建物や境界に不備があっても、専門の買取会社なら検討してくれることがある
寄付する 基本的に、お金は動かない 受け取る側が「ほしい」と言ってくれるか。使い道のない土地は断られやすい
相続放棄する プラスの財産もマイナスの財産も引き継がない 土地だけを選べない。自分のために相続が始まったと知った時から3か月以内に決める。やり直しはきかない

相続放棄は「土地だけ」を手放す道ではありません

ここだけは、混同しやすいところです。相続放棄をすると、その相続に関しては初めから相続人でなかったことになります(出典:民法の相続放棄の効力の規定、版ID 129AC0000000089_20260624_508AC0000000045、施行日 2026-06-24)。預貯金や自宅など、他の財産もまとめて手放すことになります。借金などのマイナスの財産も引き継ぎません。ただし、放棄の時に土地を現に占有していると、次の管理者に引き渡すまでは、その土地を保存する義務が残ります(出典:民法の相続放棄をした者による管理の規定、同じ版)。

しかも期間内でも撤回できません(出典:民法の承認・放棄の撤回の規定、同じ版)。期間は、自分のために相続が始まったと知った時から3か月です(出典:民法の承認・放棄の期間の規定、同じ版)。

ここに注意:放棄と国庫帰属は、両方は使えない

国に返す申請ができるのは、相続、または相続人への遺贈で土地を受け継いだ所有者です(出典:相続土地国庫帰属法の承認申請の規定、版ID 503AC0000000025_20250601_504AC0000000068、施行日 2025-06-01)。相続放棄をした人は、初めから相続人でなかったことになるので、同じ土地で両方を使うことはできません。放棄するかどうかの判断や手続きは、弁護士・司法書士など専門家に確認してください。

放棄の期間や、間に合わないときの伸長の申立てはいらない土地を相続したら|相続放棄・売却・国庫帰属を比べるで詳しく扱っています。寄付が断られる理由と、断られたあとに残る道はいらない土地は寄付できる?自治体・法人に断られる理由と手放し方にまとめました。



いらない土地を相続したら|相続放棄・売却・国庫帰属を比べる

売る道がどこまで現実的かは、土地の事情で変わります。買い手がつかない原因の探し方は土地が売れない原因の見分け方|買い手が「できないこと」から探すが参考になります。

自分の土地は国に返せる?上から順に確かめる

「使えない」と言われる理由は、土地ごとに違います。次の順に確かめて、最初に引っかかったところが、使えない理由です。引っかからなければ、事前相談に進む価値があります。

自分の土地は国庫帰属の対象になりそうか

  1. 相続、または相続人への遺贈で受け継いだ土地か買った土地は申請できない。共有なら共有者全員で申請する
  2. 建物は残っていないか建物があると、書類の段階で却下される。更地にするかどうかは、費用を見てから決める
  3. 担保・借地・他人の通路・汚染・境界の争いはないか建物と合わせて5つの却下条件。次の節の表で確かめる
  4. 崖・工作物・地下の埋設物・隣地との争いなどはないか5つの不承認要件。申請が受け付けられたあと、実地調査で見られる
  5. 負担金を払っても手放したいかお金を払う側になる。費用の節で額の見方を確かめる

どこで引っかかるか自分では見分けづらい土地は、法務局の事前相談で聞くのがいちばん確実です。相談の窓口は、費用の節の「事前相談はどこでするのか」に書きました。1つめから3つめまでで止まった土地は、国に返す以外の道、つまり売る道を並行して調べておくと無駄がありません。

国に返せない土地|申請の時点で却下される5つの条件

申請書を出しても、そもそも審査に進めない土地があります。次の5つのどれかに当てはまると、書類の段階で却下されます(出典:法務省「相続土地国庫帰属制度において引き取ることができない土地の要件」)。

却下される土地 内容
建物がある土地 家や倉庫など、建物が建ったままの土地
担保権・使用収益権がある土地 抵当権が付いている、借地権を設定しているなど
通路など他人が使っている土地 隣の家の通路になっているなど、他人の利用が予定されている
土壌汚染がある土地 土壌汚染対策法の特定有害物質で汚染されている
境界が分からない土地・権利に争いがある土地 境界標がない、隣地との境界で揉めているなど

23区で相続する土地には、古い家が建ったままのケースが少なくありません。建物がある土地は、それだけでこの制度を使えません。使うには、更地にしてから申請する必要があります。

ここに注意

古い家を壊してから申請するとなると、解体費用がかかります。金額は、建物の広さや構造で変わります。壊したあとに却下・不承認となると、費用だけがかかって土地が手元に残る結果になりかねません。まずは法務局の事前相談で見通しを聞いてから動くほうが安全です。費用の決まり方は木造の解体費用は何で決まる?見積もりの取り方と狭小地の注意で確認できます。



木造の解体費用は何で決まる?見積もりの取り方と狭小地の注意

承認されない土地|実地調査で分かる5つの不承認要件

却下要件をクリアしても、次に実地調査が待っています。ここで次の5つのどれかに当てはまると、不承認になります(出典:法務省「相続土地国庫帰属制度において引き取ることができない土地の要件」)。

不承認になる土地 内容
急な崖がある土地 勾配30度以上・高さ5m以上の崖があり、管理に過分な費用や労力がかかる
地上に工作物・車両・樹木などがある土地 管理や処分の妨げになるものが地面の上に残っている
地下に除去すべき物がある土地 浄化槽の残骸や大きな石など、埋設物がある
隣地とのトラブルがないと管理できない土地 隣人に通行を妨害されているなど、争いがないと手を付けられない
その他、管理・処分に過分な費用や労力がかかる土地 個別の事情に応じて政令で定める

高低差があり擁壁が心配な土地は、この崖の要件に引っかかることがあります。擁壁の状態や費用の考え方は高低差・擁壁のある土地の売却|がけ条例と費用の注意点にまとめています。

ポイント:国に返すときは、こちらが払う側になる

不承認要件を見ていると、買い取る側の評価が下がる土地とかなり重なります。境界が定まらない、崖地で擁壁の状態が怪しい、地中に何が埋まっているか分からない。こうした土地は査定額が下がりますが、それでも値段がつくことはあります。国に返す場合はこちらがお金を払う側になるので、そこは覚えておいたほうがいいです。

使えないのはどんな土地か|却下と不承認をまとめて確かめる

ここまでの10個の条件を、1つの表にまとめます。違いは1行で言えます。却下は「申請の時点で出せない土地」、不承認は「申請を受け付けたあと、調べてから引き取れないと分かる土地」です。

法律では、却下の条件と不承認の条件が、それぞれ別の規定で定められています(出典:相続土地国庫帰属法の承認申請ができない土地・却下・承認の各規定、版ID 503AC0000000025_20250601_504AC0000000068、施行日 2025-06-01)。

条件 却下か不承認か どこで確かめるか
建物がある 却下 現地と、登記簿に建物の登記が残っていないか
担保権・使用収益権が設定されている 却下 土地の登記事項証明書(法務局)
通路など、他人が使う予定の土地が含まれる 却下 現地で、隣の人や近所の人が通っていないか
土壌汚染がある 却下 その土地の昔の使われ方。分からなければ事前相談
境界が明らかでない・所有権に争いがある 却下 境界標が現地にあるか、隣地の所有者と話せているか
急な崖があり、管理に過分な費用や労力がかかる 不承認 現地で土地の傾斜と高さを見る。事前相談
地上に、管理や処分を妨げる工作物・車両・樹木などがある 不承認 現地
地下に、取り除かないと管理や処分ができない物がある 不承認 昔の建物の図面や工事の記録。事前相談
隣の人などと争わないと管理や処分ができない 不承認 通行や越境をめぐって、隣と揉めていないか
そのほか、管理や処分に過分な費用や労力がかかる 不承認 事前相談で個別に聞く

この表は索引です。1つずつの中身は、前の2つの節に戻って読んでください。

「使えない」と言われやすい3つの形

「使えない」とつまずきやすい形を、3つ取り上げます。

  1. 建物がある。 空き家を含め、建物が建ったままだと却下されます。更地にするかどうかは、前の節で比べたとおり、費用を見て決めます。
  2. 境界が決まっていない。 境界が明らかでない土地は、却下されます。境界標が見当たらない、隣と境界で揉めているといった土地は、これにあたるおそれがあります。進め方は境界が決まっていない土地の売り方で扱っています。
  3. 共有者の1人が反対している。 共有の土地は、共有者の全員が共同で申請しなければなりません(出典:相続土地国庫帰属法の共有の場合の申請の規定、版ID 503AC0000000025_20250601_504AC0000000068)。1人でも協力してくれないと、申請そのものが進みません。共有名義のもめごとは、共有名義の土地を売るときの同意と進め方も参考になります。

自分の土地が表のどこにも当てはまらないときは、事前相談に進む価値があります。逆に1つでも当てはまるときは、国に返す道だけにこだわらず、売る道も並べて調べてください。

要件をひととおり確認したところで、次は費用の話に移ります。

費用はいくらかかる?審査手数料と10年分の負担金

国に引き取ってもらうには、申請時と承認後の2段階でお金がかかります。

タイミング 費用の名前 金額の目安
申請時 審査手数料 土地1筆につき14,000円(収入印紙で納付)
承認後 負担金(10年分の管理費相当額) 1筆20万円が基本。ただし「市街化区域等の宅地・農地」と「森林」は、面積に応じて20万円以上になる。23区周辺の宅地は、50㎡で約41万円、100㎡で約55万円(仮の例。条文どおりに計算した額)。額は政令で決まっており、変わることがあります
20万円〜承認された土地1筆あたりの負担金の最低ライン。市街化区域などの宅地・農地・森林は面積で高くなる(50㎡の宅地で約41万円、仮の例)

ことばの解説:負担金

国に土地を引き取ってもらう代わりに納めるお金。国がその土地を管理する10年分の費用にあたる金額として計算されます。市街地の宅地・農用地区域内の農地・森林などは、面積に応じて金額が変わることがあります(出典:法務省「相続土地国庫帰属制度の負担金」、相続土地国庫帰属法施行令。申請前に法務局の相談窓口で確認してください)。

審査手数料は、却下や不承認になっても返ってきません。負担金を納めなかった場合も同じです。隣り合う2筆以上の土地がいずれも同じ土地区分であれば、申し出ることで1筆とみなして負担金を計算してもらえます。この申し出は、承認申請書を出してから承認されるまでの間に行え、隣の土地の所有者が自分と違っても、所有者どうしが共同で申し出れば可能です。

解体費用や書類をそろえる手間もかかるので、まずは事前相談で見込みを聞いておくのが安心です。

事前相談はどこでするのか

相談を受け付けているのは、承認申請をする土地がある都道府県の法務局・地方法務局(本局)の不動産登記部門です。支局・出張所では受け付けていませんのでご注意ください。土地が遠方にあって電話やウェブでの相談が難しい場合などは、お近くの法務局・地方法務局(本局)でも相談できます(出典:法務省「相続土地国庫帰属制度に関するQ&A」令和7年9月1日現在)。

申請から国庫帰属までの流れ

標準的な審査期間の目安は8か月とされています(出典:法務局の案内)。実際には実地調査の状況などで、半年〜1年ほどかかることもあります。

相続土地国庫帰属制度を使うまでの流れ

  1. 事前相談土地を管轄する法務局に、要件に当てはまりそうか相談する
  2. 申請書類の提出申請書・土地の図面・写真などをそろえ、審査手数料を納める
  3. 書面審査・実地調査法務局の担当者が、却下要件・不承認要件に当てはまらないか確かめる
  4. 承認と負担金の納付承認の通知から30日以内に、10年分の負担金を納める
  5. 国庫帰属負担金の納付をもって、土地の所有権が国に移る

負担金は、通知が届いた翌日から30日以内に納めないと、承認そのものが失効します。期限を過ぎると、また最初から申請をやり直すことになるので注意してください。

要件に当てはまるか自分だけでは判断しづらい土地もあると思います。売却の可能性とあわせて、どちらの道が現実的か一緒に整理することもできます。

国に返すか、売るか|どちらが手元に残るか

ここまで見てきたとおり、国に返すには建物がないこと、境界がはっきりしていることなど、いくつもの条件をクリアする必要があります。承認されても数十万円の負担金を国に払う側になります。

一方、同じ土地でも、買い手が見つかれば売却ではお金を受け取れます。古い家が建ったままでも、境界が多少あいまいでも、専門の買取会社であれば買い取れることがあります。

国に返す前に、最後に確かめたいポイント

  • 建物は残っていないか(更地になっているか)
  • 抵当権や借地権など、担保・権利は付いていないか
  • 隣地との境界は、境界標などではっきりしているか
  • 崖や急な傾斜、大きな工作物・樹木は残っていないか
  • 専門の買取会社に、一度も相談せずに諦めていないか

国に返す・売る の比較

売る(仲介・買取)

  • 建物・境界の不備があっても検討の余地がある
  • 代金を受け取れる可能性がある
  • 買い手が見つかるかは土地次第

国に返す(国庫帰属)

  • 建物なし・境界確定など要件が厳しい
  • 審査手数料+負担金でお金を払う側になる
  • 売却の見込みがまったくないときの最終手段

古い家が建ったままの土地は、古家付き土地の売却|相場・注意点と解体するかの判断基準で、解体して売るかそのまま売るかを整理しています。境界が定まっていない土地の売り方は境界が決まっていない土地は売れる?隣が協力しないときの進め方で扱っています。「売れないと思っていた土地」でも、専門の買取会社に相談すると道が開けることがある点は、覚えておいて損はありません。



土地の買取業者の選び方|見積もりで確認すべき5つの点と業者の種類

再建築不可や境界不明、古家付きなど、ふつうの仲介では買い手が見つかりにくい土地もあります。訳あり物件を専門に買い取る会社なら、今の状態のまま買取価格を出してもらえることがあります。国に返す前に、一度査定を確かめてみる価値はあります。

申し込みのときは、物件の種類を選ぶ欄があります。選択肢は、共有持分・再建築不可・事故物件・借地・底地・空き家・その他です。いちばん近いものを選び、合うものがなければ「その他」を選んでください。状況は、画面の案内に従って伝えます。

よくある質問

Q. 農地や山林も、相続土地国庫帰属制度の対象になりますか?

はい、宅地だけでなく農地や森林も対象です。ただし農地法など、別の法律による制限がかかる土地は、追加の手続きが必要になることがあります。詳しくは法務局や、農地であれば農業委員会にも確認してください。

Q. 遠くに住んでいても申請できますか?

申請先は土地の所在地を管轄する法務局です。書類のやり取りや相談の方法は法務局ごとに案内が異なることがあるので、事前相談の段階で確認しておくと安心です。

Q. 審査にはどのくらい時間がかかりますか?

標準的な処理期間の目安は8か月とされています。実地調査の状況などにより、半年から1年ほどかかることもあります。

Q. 却下・不承認になった場合、審査手数料は戻ってきますか?

戻りません。審査手数料は審査そのものにかかる費用のため、却下・不承認・取り下げのいずれでも返還されません。申請前に、要件に当てはまりそうか事前相談で確かめておくことをおすすめします。

Q. まず何から始めればいいですか?

建物の有無や境界の状況など、却下・不承認の要件に当てはまらないかをこの記事のチェックリストで確認してみてください。そのうえで、売却の可能性があるなら、国に返す前に査定を取って比べてみるのが現実的です。

まとめ

  • 相続土地国庫帰属制度は、2023年4月27日に始まった、相続した土地を国に引き取ってもらえる制度。
  • 建物がある土地、担保が付いている土地、境界が分からない土地などは、申請の時点で却下される。
  • 崖地、地上・地下に処分すべきものがある土地なども、実地調査で不承認になることがある。
  • 費用は、申請時の審査手数料(1筆14,000円)と、承認後の負担金の2段階。負担金は、宅地(市街化区域など)なら面積で計算され20万円を超える(50㎡で約41万円、仮の例)。宅地以外の土地は20万円が基本で、農地・森林は面積で計算される。額は政令で決まっており、変わることがある(出典:相続土地国庫帰属法施行令)。
  • 要件が厳しく費用もかかるため、買い手が見つかる見込みがあるなら、売ったほうが手元に残る場合がある。

国に返すべきか、それとも売れる可能性が残っているのか。土地の状況を整理するところから、一緒にお手伝いします。

この記事の監修者:十坪とつぼさん(宅地建物取引士)
東京23区で土地の仕入れ営業を担当する宅地建物取引士。狭小地・旗竿地・古家付き土地など、小さくて売りにくい土地を日々見ている。

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