借地権付きの家の売却方法|地主の承諾・承諾料・売り先の比較
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親から相続した家が、実は他人の土地を借りて建っていた。23区の古い住宅地では、そんなケースが少なくありません。土地を借りて、その上に自分の家を建てている状態を借地(しゃくち)といいます。
「借地権の売却なんてできるのか」「地主さんに何と言えばいいのか」。不安になるのは当然です。
安心してください。借地権も、家ごと売ることができます。ただし自分の土地を売るのとは違い、地主の承諾や承諾料が関わってきます。この記事では、売る前に確かめること、売り先ごとの向き不向き、地主が承諾してくれないときの手続きを順に説明します。
結論
借地権を第三者に売るには、原則として地主の承諾が必要で、承諾料を払うのが一般的です。
売り先は「地主」「第三者」「借地権の買取専門業者」「底地と一緒に第三者へ」の4通り。地主との関係や契約の中身によって、向き不向きが変わります。
借地権とは?売却前に確かめておきたい3つのこと
建物を持つために、他人の土地を借りる権利を借地権といいます。売る前に「契約書」「建物の名義」「地代と残りの期間」の3つを確かめておくと、地主との話も買い手への説明もスムーズです。
こと
借地権は、家を建てるために他人の土地を借りる権利。底地は、貸している側(地主)が持つ土地の権利のことです。1つの土地に、借りる人の権利と貸す人の権利が重なっているイメージです。多くの借地は「賃借権」という権利で、譲るときに地主の承諾が要ります。まれに「地上権」という権利のこともあり、その場合は承諾なしで譲れます。契約書にどちらと書かれているか、先に確かめておきましょう。
売る
- 借地の契約書(なければ、地代の領収書や地主とのやり取りの記録)
- 建物の登記名義が、借りている人(借地人)になっているか
- 地代の払い忘れがないか、契約期間があと何年残っているか
1. 契約書と借地権の種類
借地権は、いつ契約したかで種類が分かれます。1992年8月1日より前に始まったものは「旧法借地権」。それ以降に結んだ契約は、借地借家法による借地権です。
借地借家法の借地権には、期間が終われば土地を返す「定期借地権」もあります。更新できるのか、売るときにどう考えるのか。種類によってかなり変わってきます。
契約書が見つからないこともあるでしょう。その場合は、地代の領収書や過去のやり取りから確かめます。契約書がないまま長年続いている借地も、実は珍しくありません。
2. 建物の登記名義
土地の上の建物が、借りている人の名義で登記されているかを確かめます。登記事項証明書は、法務局の窓口で建物の所在地と家屋番号を伝えれば取れます。
相続した家なら、建物の相続登記が済んでいるかも重要です。手続きの流れは相続登記の義務化と売却の関係にまとめています。
3. 地代の支払い状況と契約期間
地代の滞納がないか、契約期間があと何年あるかも見ておきます。どちらも、買い手や地主との話し合いに響いてくる点です。
借地権の売り先は4通り|地主・第三者・買取専門業者・底地セット
売り先は主に4通りあります。どれを選んでも、地主の承諾か合意は欠かせません。まず全体を見比べてから、自分の借地に合いそうな道を絞り込んでいきましょう。
| 売り先 | 地主の承諾 | 特徴 |
|---|---|---|
| 地主に借地権を買い取ってもらう | 実質的に合意が必要 | 承諾料が要らないことが多い。価格は交渉次第 |
| 第三者(個人・仲介業者)に借地権のまま売る | 必要 | 買い手の住宅ローンが通りにくいことがある |
| 借地権の買取専門業者に売る | 業者側で地主と調整することが多い | 現金化が早い。価格は市場価格より下がりやすい |
| 地主と協力し、底地と借地権を一緒に第三者へ売る | 地主の合意が必要 | ふつうの所有権の土地として売れるので、買い手が広がる |
主な売り先の比較
地主に売る
- 承諾料が要らないことが多い
- 手続きが比較的シンプル
- 交渉相手が1人に限られる
第三者に売る
- 複数の買い手を比べられる
- 承諾料と地主の承諾が必要
- ローンに地主の承諾書が要ることが多い
買取専門業者に売る
- 現金化までが早い
- 価格は下がりやすい
- 地主との調整を任せられることがある
底地と一緒に売る
- ふつうの土地として売れる
- 買い手の層が広がる
- 代金の分け方を地主と決める
第三者に売る場合
いちばんオーソドックスなのが、借地権付きの家として第三者に売る方法です。ただ、借地権を人に譲るには、地主の承諾が要ります(民法の賃借権の譲渡の規定)。承諾なしに譲ると、契約を解除される理由になりかねません。
個人の買い手が住宅ローンを使う場合も、地主の協力が欠かせません。金融機関から、地主の承諾書(融資承諾書)を求められることが多いからです。
借地権の買取専門業者に売る場合
「地主との交渉が気まずい」「早く現金化したい」という場合は、借地権の買取を専門にする不動産会社という選択肢もあります。買取専門業者は、こうした権利関係が複雑な物件を買い慣れており、地主への交渉も自社で進めてくれることが多いのが特徴です。
ただし正直なところ、買取価格は、ふつうに仲介で第三者に売る場合より低めになりやすいのが実情です。「早さ・確実さ」と「価格」のどちらを優先するかで、選び方が変わってきます。
底地と一緒に売る場合
地主も底地を手放したいと考えているなら、借地権と底地をセットで第三者に売る道もあります。買い手から見れば、ふつうの所有権の土地です。買い手の層が広がるぶん、それぞれ単独で売るより条件がよくなる可能性があります。代金の分け方は、地主との話し合いで決めます。
地主の立場から底地だけを売る方法や、地代の改定・更新料といった地主側の実務は、地主が底地だけを売る方法と価格の見方で詳しく整理しています。
地主の承諾と承諾料の考え方
承諾をもらうときは、承諾料を払うのが一般的です。ただし金額は法律で決まっておらず、地主との交渉で決まります。
譲渡承諾料(名義書換料)
借地権を人に譲ることを認めてもらうお金を、譲渡承諾料といいます。名義書換料と呼ばれることもあります。
承諾料には、法律で決まった金額も、決まった計算式もありません。借地非訟(地主が承諾してくれないときに使う手続き。後で説明します)では、裁判所が事情を見て承諾料の額を判断します。ふだんの話し合いでは、地主との交渉で決まります。
何を基準に考えるかで、額は変わります。更地価格(借地権がない場合の土地の価格)を基準にする人もいれば、借地権価格を基準にする人もいます。ここがずれたまま話すと、金額の食い違いが大きくなります。地主によっても差が大きく、地域や契約の中身でも変わります。まず地主に、どの基準で考えているかを聞いてみてください。数字を決め打ちせず、不動産鑑定士や弁護士にも相談しながら、話し合いの出発点を決めましょう。
譲渡承諾料は誰が払うのか
承諾料を誰が払うかを決めた法律はありません。地主に承諾をもらう当事者は、借地権を持っている売主(借地人)です。ただ、承諾をもらう人と、その費用を負担する人は別の話です。誰が負担するかは、借地契約の内容と話し合いで決まります。
考えられる形は、次の3つです。どれになるかは、借地契約の内容と、地主・売主・買主の話し合いで決まります。
| 負担の形 | 中身 |
|---|---|
| 売主が払う | 売主が地主に払う形。売った手取りから差し引かれる |
| 買主が払う | 買主が地主に払う、または売主に承諾料分を渡す形。買主が納得すれば成り立つ |
| 売買代金で調整する | 承諾料を見込んで、借地権の売買代金を上下させる形。売主と買主で負担を分けることになる |
売主として大事なのは、買主と売買契約を結ぶ前に、承諾料を誰が・いくら負担するのかを決めておくことです。後から「承諾料は買主が払うと思っていた」とずれると、契約のやり直しになりかねません。地主への連絡の段階で承諾料の考えを聞き、買主候補にも早めに伝えておくと、話が進めやすくなります。
建て替え承諾料
買い手が建て替えるつもりなら、建て替えの承諾が別に要ることもあります。承諾料がかかるかどうかも、売る前に地主に聞いておきましょう。買い手への説明もしやすくなります。
借地権と底地、それぞれの価格の手がかり
手がかりの1つが、国税庁の路線価図に載っている借地権割合です。AからGの記号で、30%から90%まで示されています。底地の価格は、大まかには「100%からその割合を引いた分」が目安と言われることがあります。借地権割合が60%の地域なら、底地はおよそ40%という考え方です(仮の考え方であり、実際の売買価格を保証するものではありません)。
ただし、これはあくまで相続税などを計算するための割合です。実際に売れる値段とは一致しません。取引では、所有権の土地よりどちらも大きく下がることがあります。相場の調べ方は近所の取引価格の調べ方も参考にしてください。
買い
買い取る会社の担当者が、借地権付きの土地で最初に見るのは残りの契約期間と地代の金額です。期間が短い、地代が周辺相場より高い、地主とのやり取りがぎくしゃくしている。こうした条件が重なるほど、買取価格は下がりやすくなります。逆に地主との関係が良く、底地も一緒に手放せる話であれば、評価はぐっと上がります。
地主に話す前に、借地権をどう売り進めるか、どんな順番で準備すればよいかを整理したい方は、一緒に考えます。
地主が承諾してくれないとき|借地非訟という選択肢
話し合っても承諾が得られない場合、裁判所に「地主の承諾に代わる許可」を求めることができます(借地借家法)。地主の承諾が得られないときの手続きで、裁判所が相当と認めれば許可が出ます。これを借地非訟(しゃくちひしょう)と呼びます。
この手続きでは、裁判所が許可と引き換えに、借りている人に一定のお金の支払いを命じることがあります。ここで知っておきたいのが、地主の側にある「介入権」です。地主は、裁判所が決めた期間内に申し立てれば、借地権を建物ごと優先的に買い取ることができます。申立てがあると、原則として地主が、裁判所の定めた価格で建物と借地権を買い受けることになります。第三者に売るつもりで申し立てたのに、地主に買い取られる形になる場合がある、ということです。
地主の承諾をもらうまでの流れ
- 契約書・名義・地代を確かめる手元の書類をそろえ、今の状況を整理する
- 地主に売りたいと相談する地主に買ってもらう案も含めて話す
- 承諾と承諾料を決める建て替えの承諾が要るかも確認する
- まとまらなければ専門家へ弁護士に相談し、借地非訟の手続きも検討する
東京地方裁判所の説明によると、手続きはおおむね次の順に進みます。まず申立書を提出し、裁判所で審問があります。続いて、弁護士・不動産鑑定士・建築士などでつくる鑑定委員会が、承諾料や借地権価格を調べて意見を出します。最後にもう一度審問をしたうえで、裁判所が決定を出す流れです。
期間について、裁判所は「多くの事件は、特段の事情がなければ、概ね1年以内には終わっています」と説明しています。多くの事件は概ね1年以内ですが、事情によってはそれより長くなることもあります。短い期間で終わると決めつけず、売却の時期が決まっている場合は1年近くかかる前提で考えてください。
申し立てる先は、借地の所在地を管轄する地方裁判所です(借地借家法)。東京都内なら、23区と島しょ部の借地は東京地方裁判所の民事第22部、多摩地区の借地は東京地方裁判所立川支部の民事第4部が扱います。
申立てを代理人に頼む場合、代理人は弁護士に限られます(借地借家法)。司法書士や不動産会社に代理を頼むことはできません。
最初に動ける一歩は、書類集めです。申立てには、土地と建物それぞれの固定資産評価証明書が要ります。土地の分は、申立手数料を計算する資料になります。入手先は、東京地方裁判所民事第22部の案内では「借地の所在地を管轄する都税事務所」です。窓口は場所によって変わることがあるので、申し立てる裁判所の案内で確かめてください。
鑑定委員会にかかる費用は国が負担するため、申立人が別途負担するものではありません(出典:東京地方裁判所「借地非訟」)。手続きには時間がかかり、地主との関係にも影響します。まずは話し合いを試みてください。進まない場合は弁護士に相談しましょう。見通しは、個別の事情によって大きく変わります。
誰に相談すればよいか自体で迷う場合は、土地を売りたいときの相談先ガイドで、内容ごとの窓口を整理しています。
借地権を売るときに気をつけたいこと
相続そのものに地主の承諾は要りません。けれど、相続した借地権を「売る」段階では承諾が必要です。ここを混同しないようにしましょう。
相続した借地は、相続までは承諾不要
相続で借地権を引き継ぐことに、地主の承諾は要りません。承諾料も、原則として不要とされています。承諾が必要になるのは、引き継いだ借地権を人に売るときです。地主への連絡の仕方や、建物の相続登記など相続直後にやることは、借地権を相続したら|地主への連絡・名義変更と、その後の売却で詳しく整理しています。借地権を含めた相続全体の進め方は、相続した土地を売る流れも参考にしてください。
兄弟姉妹で共有している場合
親から相続した借地権を、兄弟姉妹など複数人で共有名義にしているケースもあります。この場合、借地権を売るには共有者全員の同意が必要になります。地主との交渉に加えて、共有者どうしの話し合いも必要になるので、早めに意向をすり合わせておきましょう。共有名義ならではの注意点は共有持分だけを売ることはできる?にまとめています。
建物が古い場合
建物が古く、買い手が建て替え前提で考えるケースもあります。その場合、建て替えの承諾がもらえそうかどうかが、売れる値段に響いてきます。
ここに
借地では、建物を解体するにも地主との調整が関わります。「古いから壊してしまおう」と自分だけで判断して解体しないでください。先に地主と話してから決めましょう。
古家付きのまま売るか解体するかの一般的な考え方は、古家付きのまま売るか、解体するかの判断で解説しています。
税金
借地権を売った場合も、自分の土地を売るのと同じく、譲渡所得税の対象です。買ったときの値段が分からない場合の扱いなどは、売るときの費用と税金の一覧を見てください。個別の判断は、税理士に確認しましょう。
なお、家を建てずに、駐車場として土地を貸している場合は、借地権とは別の話になります。そちらは駐車場として貸している土地の売り方で扱っています。
借地権付きの家は、ふつうの仲介では買い手が見つかりにくいことがあります。訳ありの不動産を専門に買い取る会社なら、地主との調整を含めて今の状態のまま買取価格を出してもらえることがあります。ただし買取価格は、仲介で第三者に売るより低くなりやすい点も踏まえて比べてみてください。
よくある質問
Q. 地主に黙って借地権を売ることはできますか?
おすすめできません。承諾なしに譲ると、借地契約を解除される理由になるおそれがあります。買い手の住宅ローンにも地主の承諾書が要ることが多いので、先に地主と話し合うのが前提です。
Q. 承諾料はいくら払えばよいですか?
法律で決まった金額はありません。地主との話し合いで決まります。更地価格と借地権価格のどちらを基準にするかでも額が変わるので、まず地主の考え方を聞いてください。地主によって差があるので、最終的には交渉次第です。金額が妥当か不安なら、不動産鑑定士や弁護士に相談してください。
Q. 譲渡承諾料は誰が払うのですか?
承諾料を誰が払うかを決めた法律はありません。地主に承諾をもらう当事者は売る側(借地人)ですが、その費用を誰が負担するかは別の話です。売主が払う形・買主が負担する形・売買代金で調整する形があり、契約と話し合いで決まります。買主と契約する前に、誰がいくら負担するのかを決めておきましょう。
Q. 地主に買い取ってもらうのと第三者に売るのは、どちらが有利ですか?
一概には言えません。地主に売るなら承諾料が要らず、手続きも簡単です。ただし交渉相手が1人に限られます。第三者に売れば複数の買い手を比べられますが、承諾料と承諾の手間がかかります。両方の条件を並べて決めてください。
Q. 借地権の買取専門業者に売ると、地主との交渉も任せられますか?
業者によって対応は異なります。地主への交渉を含めて進めてくれる業者もありますが、価格は仲介で第三者に売るより低めになりやすい傾向があります。複数の業者に話を聞き、対応の範囲と価格をあわせて比べるとよいでしょう。
Q. 定期借地権の家も売れますか?
売ること自体はできます。ただし残りの期間が短いほど、買い手にとっての価値は下がります。期間が終われば原則として更地にして返すので、契約の中身を確かめてから検討してください。
まとめ
- 借地権を第三者に売るには、原則として地主の承諾が必要。
- 承諾料は交渉で決まり、法律で決まった金額はない。何を基準にするかで額が変わるので、まず地主の考えを聞く。
- 売り先は「地主」「第三者」「買取専門業者」「底地と一緒に売る」の4通りを比べる。
- 地主が承諾しないときは借地非訟の手続きがある。多くの事件は概ね1年以内に終わるが、地主が介入権を使うと、地主に買い取られる形になることもある。まずは話し合い、必要なら弁護士へ。
- 契約書・建物の登記・地代の支払い状況を、売る前に確かめておく。
借地権付きの家を、地主に売るか、第三者に売るか、底地とセットで売るか。決めかねているなら、それぞれの進め方を並べて比べるお手伝いをします。



